娯楽映画研究所ダイアリー 2022年2月14日(月)〜2月20日(日)
月曜更新! 今回は「番匠義彰 映画大全」を出した理由、プロセス、そして2月20日からのラピュタ阿佐ヶ谷での特集上映について語ります!
【佐藤利明の娯楽映画研究所】番匠義彰を語る、観る、楽しむ
2月14日(月)「天才俳優・渥美清の寅さん前夜」準備
明日、日本映画大学で「天才俳優・渥美清の寅さん前夜」をテーマに三時間の長講をすることになり、準備をしております。例によって、緻密に素材編集をしております。昭和3年から44年にかけての笑芸史でもあり、プログラムピクチャー史でもあり、庶民史でもあります。
2月15日(火)日本映画大学「渥美清の寅さん前夜」講義
本日、日本映画大学、細野辰興監督の「日本映画のヒーロー論」で、ワタクシが「渥美清の寅さん前夜」講義をします。かなり濃密な教材ができました。いずれ、どこかでリマスターして、ご披露したいほどであります。渥美清さんが、寅さんになるまでの足跡を三時間かけて辿ります。
日本映画大学、細野辰興監督の「日本映画のヒーロー論」最終講義「天才俳優・渥美清の寅さん前夜」三時間十五分にわたる長講。無事、相勤めました! 一年生の皆さんから、活発なご質問も頂き、嬉しかったです。
2月16日(水) 番匠、記事になる
2月16日の山梨日日新聞に掲載された、ラピュタ阿佐ヶ谷「番匠義彰 松竹娯楽映画のマエストロ」と拙著「番匠義彰映画大全 娯楽映画のマエストロ」記事です! なんと下野新聞、沖縄タイムスにも掲載されているとのこと!
タブレット純さんと、亀戸サイゼリヤで綿密な打合せをしました(呑みながらですが・笑)。構成、固まりました! さいたまんぞうさんをゲストに迎えて、夢のステージを展開します!
2月17日(木)『果てしなき蒼空』(1952年・R K O・ハワード・ホークス)・『手討』(1963年・大映京都・田中徳三)
今年も劇場版「名探偵コナン」パンフ取材、執筆の季節が到来しました。なんと25作目!つまり四半世紀を超えたということです。ぼくも20世紀から関わってきているので、30代の青年が50代後半になりにけりです。人に歴史あり、であります^_^
今宵は、ハワード・ホークス&カーク・ダグラスの西部劇『果てしなき蒼空』(1952年・R K O)と、田中徳三&市川雷蔵『手討』(1963年・大映京都)の二本立。いずれも良作。後者は岡本綺堂「お菊と播磨」の見事な映画化。つまり、怪談ではない「番町皿屋敷」。藤由紀子さんのお菊の美しさ!その切ない恋心。雷蔵さんの播磨の実直さ!ラストは涙ナミダ…
2月18日(金)『暴力行為』(1948・MGM・フレッド・ジンネマン)
番匠義彰監督特集、ニュースになりました!
いよいよ明後日から!番匠義彰祭り! ラピュタ阿佐ヶ谷「番匠義彰 松竹娯楽映画のマエストロ」、佐藤利明著「番匠義彰映画大全 娯楽映画のマエストロ」宜しくお頼ん申します!
完璧な映画は、滅多にないが、今宵の娯楽映画研究所シアターで投影したフレッド・ジンネマン『暴力行為』(1948・MGM)は、全てにおいてパーフェクト。
82分に凝縮された「罪と罰」。カリフォルニアで美しい妻・イディス(ジャネット・リー)と2歳の息子に恵まれて、不動産業で成功しているフランク(バン・ヘフリン)は、第二次大戦の勇士。ナチス捕虜収容所で辛い経験をしてきた。
ある日、ニューヨークから彼の生命を奪いに、足が不自由な男、ジョー(ロバート・ライアン)が現れる。怯えるフランクには、妻にも隠している秘密があった。
捕虜収容所では、フランクの部下10名が無残にも死んでいたが、フランクは生き延びた。死んだと思われていたジョーは、命から柄生還。戦友とその未亡人のために、ジョーは恋人アン(フィリス・サクスター)の静止も聞かずに復讐にやってきたのだった…
戦争がもたらした傷。極限状況における人間の心理。当事者にしかわからない苦しみを抱えたフランクとジョニーの過去… フレッド・ジンネマン作品としては、『真昼の決闘』よりもこちらの方が傑作!
アン・バクスターの酔いどれ女も見事で、己が罪と向き合うバン・ヘフリンは、ベストアクト。エンディングのサントラでの音楽指揮のアンドレ・プレヴィンのピアノが心に沁みる。未見の人、アマプラに入っているから、是非!
2月19日(土)『影なき殺人』(1947年・FOX・エリア・カザン)・『次郎長富士』(1959年6月2日・大映京都・森一生)
さいたまんぞうさんと綿密な打ち合わせも出来ました。明日の素材も整理しました。あとは本番!もちろんタブレット純さんとマルベル堂で撮り下ろしプロマイドも撮影しますよ〜 2月20日は「復活!そんな事よりタブレット純」浅草ヨーロー堂でお会いしましょう!
香港在住のシネマディクトnobuさんが「番匠義彰映画大全」のレビューと娯楽映画研究家についてYouTubeで語ってくれました!ありがとうございます香港からラピュタの告知を!
番匠義彰映画大全〜娯楽映画のマエストロ〜 佐藤利明著の紹介です【CINEMA TALK】
娯楽映画研究所シアターで、1940年代犯罪映画研究の一環として、エリア・カザン監督『影なき殺人』(1947年・FOX)を40年ぶりぐらいに拝見。アマプラは本当に深夜のシネマテークとしてありがたい!
第二次世界大戦後、ハリウッドもイギリス映画も、ドキュメンタリータッチの犯罪映画、社会派サスペンスが多く作られた。わが黒沢明監督の『野良犬』もまたしかり。
舞台演出家として頭角をあらわし、1944年『ブルックリン横丁』で映画にも進出したエリア・カザンは、1940年代の天才だった。それまでのハリウッドのスタイルからリアルな写実主義、そして人間の内面を掘り下げたドラマは、1950年代の映画の流れを変えてゆく。
傑作『紳士協定』(1947年)に続いて手がけた『影なき殺人』は、1924年にコネチカット州ブリッジポートで起きた「神父殺人事件」をもとに「冤罪の恐怖」と、その無実を証明した州検事の葛藤を、圧倒的な腕力で描いて、これまた傑作となった。
ある晩、ブリッジポートで神父が公衆の面前で銃殺さる殺人事件が発生。容疑者は、退役軍人の流れ者ジョン・ウォルドロン(アーサー・ケネディ)。彼が所持していた軍用の拳銃による犯行と、警察は断定。ハロルド・F・ロビンソン署長(リー・J・コッブ)は、容疑者の人権を無視して、自白の強要をはかる。
容疑者には不利な条件が重なり、一切眠らさずに執拗な取調べで自白調書にサインをさせてしまうシーンは、昔テレビで観た時に、本当に不快というか、嫌でたまらなかった。改めて観ると、さすがリー・J・コッブ。憎々しげで、これが実に素晴らしい。
知事の再選時期でもあり、ヘンリー・L・ハーヴェイ州検事(ダナ・アンドリュース)も、ウォルドロンを起訴せざるを得ない立場だった。しかも目撃者全員が、ウォルドロンを犯人と証言。しかし公判前にハーヴェイ知事は、ウォルドロンをクロにするには曖昧な点が多いと感じ、彼を起訴するために、独自の再調査を始めるが・・・
ダナ・アンドリュースの検事が、清廉潔白ではなく、政治家になろうと少し色気を出している野心家、という設定がいい。誰もが脛に傷があ利、明らかに無実のバート・ケネディのウォルドロンを犯人にしてしまって良いのか?と苦悩する。「勧善懲悪」ではないけど「法の下の正義」を信じるギリギリの感じが、エリア・カザンだなぁと。
とにかく演出に腕力があり、些細な芝居まで味わい深い。これを昭和22年に初めて見たら映画青年が「映画の表現が変わりつつある」と驚嘆したことだろうなぁと想像してしまった。ノンクレジットだけど、ホワイト警部補役でカール・マルデンが出演している。若いけど、あの鼻を見たらすぐにわかる(笑)それから容疑者の一人に、これもノンクレジットでアーサー・ミラーが出演している!
娯楽映画研究所シアター第二部でスクリーン投影。アマプラで長谷川一夫さんはじめ大映オールスター総出演の大作『次郎長富士』(1959年6月2日・大映京都・森一生)を久々に。
次郎長映画数あれど、この長谷川一夫版は、よりぬき「次郎長映画」という感じの美味しいところが次々と登場するダイジェスト版。勝新太郎さんが森の石松、市川雷蔵さんが吉良仁吉、黒川弥太郎さんが大政。お馴染みの大映バイプレイヤーたちが二十八人衆に扮して、山本富士子さんがスリのお新、京マチ子さんが鉄火芸者・おかつ、若尾文子さんが仁吉の女房・おきく、中村玉緒さんが宿屋の女中・お松と、ヒロイン女優の均等配分。
エピソードは
1 ども安(香川良介)、黒駒勝蔵(滝沢修)との対峙→次郎長の旅
2 石松(勝新)とお蝶(近藤美恵子)の旅。スリのお新に、石松が身ぐるみ剥がされる。
3 次郎長一家のども安退治。
4 石松金毘羅代参道中。寿司食いねえの江戸っ子に船越英二さん。
5 吉良仁吉と義兄・安濃徳(小堀明男!)の対決つまり次郎長VS次郎長!→「荒神山」
6 黒駒勝蔵一家VS次郎長一家。石松も旅先から戻り、参戦(あれ死なないの?)
これを104分で見せてしまうから「次郎長版・帝都物語」みたいな出来事の羅列。でも各シーンが面白く、楽しい。黒川弥太郎さんの大政が、頼もしいアニキというだけでなく、次郎長親分に叱られるのがコワイ、みたいなキャラで、それがおかしい。
圧倒的なのは、滝沢修さんの黒駒の勝蔵。世界中の悪を一手に担ってダースベイダーのように悪いのなんの^_^ 映画的にどうってことはないけど、観ているだけで楽しい娯楽大作!
2月20日(日)「復活!そんな事よりタブレット純」@浅草ヨーロー堂
本日初日! ラピュタ阿佐ヶ谷「番匠義彰 松竹娯楽映画のマエストロ」 みどころたっぷり!
『抱かれた花嫁』(1957年)では、川上景司による松竹グランドスコープ初の大特撮! 日守新一の浅草オペラ!
『オンボロ人生』(1958年)では、宮城まり子&小坂一也の歌もたっぷり!
『花嫁の抵抗』(1958年)には、ゴジラ滑り台が登場!
「復活!そんな事よりタブレット純」マルベル堂でプロマイド撮影。浅草ヨーロー堂「復活!そんな事よりタブレット純」魅惑の2ステージ無事終了。ご来場の皆様ありがとうございました。
ゲストのさいたまんぞうさんの弾けっぷりに、純さんもビックリ!楽しいひとときでした。恒例、マルベル堂プロマイドも!
マルベル堂で著者近影(笑)ラピュタ阿佐ヶ谷「番匠義彰:松竹娯楽映画のマエストロ」開催中!Amazon KDP「番匠義彰映画大全」はこちらから!¥
よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。