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太陽にほえろ! 1974・第85話「おやじに負けるな」

この原稿は、事件の核心、物語の展開について詳述しております。ネタバレ部分もありますのでご注意ください。

第85話「おやじに負けるな」(1974.3.1 脚本・田波靖男 監督・竹林進)

永井久美(青木英美)
柴田たき(菅井きん)
山本吉三(有島一郎)
田中社長(森塚敏)
中川(外山高士)
芹川洋
黒田清子
渡辺ふさ子
山本三郎
中光貿易社員(加藤寿)
中光貿易社員(大宮幸悦)
新井一夫
浅井哲男

予告篇の松田優作さんのナレーション
「俺もデカ、オヤジもデカだった。俺とオヤジを繋ぐ一人の泥棒の名人、のらくらのまるで透明人間のようなやつ。そう、そうなのだ!あの憎めないやつ!」
小林恭治さんのナレーションに変わって
「コミカルな、そしてコミカルなタッチで送る、次回「おやじに負けるな」どうぞご期待ください」
ジーパン「ごめんください!」

 今回は、田波靖男さんの脚本で「若大将シリーズ」の父・久太郎でお馴染みのベテラン、有島一郎さんがゲスト出演。ジーパンと老盗の奇妙でユーモラスな物語が展開される。戦前、新宿ムーラン・ルージュで活躍、有島一郎一座を結成したのは1940年。その後、戦時中は、水の江滝子さんの「劇団たんぽぽ」に参加。堺駿二さんと劇団空気座を結成するなどキャリアは長い。戦後はコメディアンとして、特に「東宝ミュージカルス」での三木のり平さんとのコンビで大人気に。同時に東宝のコメディ映画に連続出演。『大学の若大将』(1961年)で演じた”大正生まれ”の久太郎のキャラクターで、シリーズの笑いを誘った。そのベテラン・有島一郎さんと松田優作のコンビネーションがたっぷり楽しめるコメディタッチのエピソード。

 捜査第一係。久美が手製の弁当を、嬉しそうに食べようとしている。そこへジーパンが入ってきて「久美ちゃん、トイレの紙、切れてんんだよ」。おいおい女の子が食事中だぞ! この久美のデスクからのカメラアングルは久しぶり。「庶務課行ってさ、もらってきてくんないか?」「もうないの? 誰かごっそり持ち出してるんじゃないかしら?」「バカいえ、ここは警察だぞ!」「この頃、庶務課もケチでさ、請求しても、なかなか物を出して紅おにょ」と久美。ジーパン、お茶を入れながら「でもな、出るものは待っちゃくれないからな」。寅さんみたいなことを言う。ちょうど、この頃、空前の「男はつらいよ」ブームの最中、こうした会話にも影響が伺える。

「でも何かい? 手帳でも破いて使え、って言うのかい?」
「汚いわね、よしてよ、私これからお弁当食べるのよ!」
「この弁当だって、結局食えば・・・」

 そこでゴリさんが、ジーパンの口をふさぐ。これはもう、完全に「寅さん」の世界。松田優作さんの悪ノリが楽しい。

「おい、皆まで言うなよ」
「わかってんすか?」
「この弁当だって、結局は・・・」

 ジーパン、ゴリさんがそれ以上言わないように、お茶を飲ませる。ここで視聴者が「それを言っちゃおしまいよ」というフレーズを連想する(笑)怒った久美が「お弁当食べられなくなるじゃない!」と抗議をすると、ゴリさん「結構ですね、じゃ、僕が代わりに食べましょう」。ゴリさんまで寅さん化している。

 そこへ山さんが入ってくる。「ボス!」。なんだ、ボス、この下ネタ、ずっとデスクから見ていたのか。それを考えるとまたおかしい。山さんは続ける「アジアルートの覚醒剤が大量に出回っているようですね」。麻薬が下火になったかと思うと、今度は覚醒剤・・・。ゴリさん、山さん、ジーパンは、仕入れ先を調べるため、密売人の捜査に向かう。ここで例によって電話がかかってくる。ボスが電話を切ると、ジーパンを呼び止める。坂下町の光スーパーの倉庫が盗難にあって、トイレットペーパーと砂糖が大量に盗まれたので、その捜査をするように命じる。

 今回、トイレットペーパーネタが続くのは、この頃、中東戦争の影響で石油ショックとなり、なぜかトイレットペーパーが市場から姿を消してしまうという騒動があったから。

 ひかりスーパー。「砂糖売切」「トイレットペーパー本日売切」「トイレットペーパー売切」と張り紙がしてある。ジーパンを店のスタッフが倉庫を案内。目玉商品はみんな盗まれたと嘆く。犯人はクルマを乗りつけて運んだらしい。鍵をこじ開けた様子もなく、今朝、店員が出勤してきたらちゃんと鍵がかかっていたという。「ということは出るときにまた鍵をかけて行ったわけか。随分、行儀のいい泥棒だな」とジーパン。深夜営業もしているので、倉庫で多少の物音がしても誰も気づかない。しかも倉庫の前は来客用の駐車場だった。ジーパンは破れた段ボール箱からマッチを取り出す。4月が開店3周年なのでサービスと宣伝をかねて作ったもの。まだ配布していない。

 一係。ジーパンがボスに報告。もしかしたらスーパー盗難事件は狂言かもしれない。泥棒が入ったと思えないほどきちんとしている。さらに立ち去るときも鍵をかけている。買い占めた品物を隠すためじゃないか?「あのスーパー、かなり悪どいことをやっているようですからね」。ボスは「狂言だとしたら、わざと倉庫の中を荒らしたり、鍵を壊したりするはずだからな」と反論する。ボスは長さんを呼ぶ。

「こんな手口覚えていないか? 鍵を開けて泥棒に入っても、そのあとは元通りにしておく。家の中に土足で入ったり、散らかしたりしない。だから、入られた方も、しばらくの間、何を盗まれたか気が付かない・・・」
「山吉だ、山吉の親父の手口ですな」

 その昔「留守番小僧の山吉」と呼ばれた泥棒の名人である。空き巣に入っても、その後、留守番がいたみたいにきちんと出ていく。「おい、ジーパン、君の親父さんも何度か捕まえたことがあるはずだぞ」と長さん。

 ジーパン、路地にある「山本吉三」の家を訪ねる。山本吉三(有島一郎)は、いきなり「人にものを訊く時は、まずてめえの名前を名乗ってから用件を言うもんだい。それから、押し売りだったら、おかど違げえだよ」。思わず吹き出すジーパン、警察手帳を見せる。「ふうん、世の中、変わりゃ、変わるもんだねぇ」。ジーパンの苗字が柴田と聞いて、山吉の表情が変わる。「親父、ご存知でしょう?」「あの柴田の旦那の?」「息子の純です」。急に打ち解けて「お母さんお元気ですか?」と物腰が柔らかくなる。相当、ジーパンの父には世話になったようだ。「こんな小さなガキが随分大きくなって」。こういう一言が軽演劇の味、有島一郎さんの世界である。

 ジーパンは、ひかりスーパーの倉庫が荒らされた時間の山吉のアリバイを訊ねる。一人暮らしの老人なので、それを証明するものはいない。「その倉庫荒らしをあっしがしたとでもいうんですかい?」「いや、そういうわけじゃないんですよ」「あっしは18年前、あんたの親父さんに捕まったのを最後に、すっぱり足を洗ったんです」とキッパリ。ジーパンは、手口が昔の山吉のものにそっくりだと正直に話す。

「いくら足を洗ったって、前科もんだ。何かあると疑われるのは仕方ないやね。ま、お好きなようにお調べください」

 そう言われて、恐縮してしまうジーパン。完全に山吉のペースになっている。山吉に促されるまま家宅捜索を始めるジーパン。落語やアチャラカ喜劇のノリで、有島一郎さんのコミカルなリアクションが楽しい。松田優作さんも熱烈な若大将ファンだったので、きっと楽しかったに違いない。負けじと鴨居に頭をぶつけたりの小芝居をしたり。便所を覗くと、トイレットペーパーではなく、昔ながらの新聞紙を切ったものが置いてあった。そっと便所の扉を閉めるジーパン。ここで山吉をシロだと判断したのだ。

「なんかありましたか?」
「いや、クサイだけですよ」

 ここでも下ネタが続く。「粗茶ですが」と差し出された湯呑みを飲んだジーパン、思わず咳き込む。「これ、酒じゃないですか!」「柴田の旦那ともよくこうやって飲んだもんですよ」「結構ですよ、勤務中ですから」「親父さんは、いくら酒を飲んでも、捜査の目に狂いはなかったね」。山吉が足を洗う前、ジーパンの親父と酒を飲んでいるときに、ふと漏らした一言で咎めれ、犯行を白状させられたことがある、としみじみ。結局ジーパンも酒を飲んでしまう(笑)

 一係。酒臭いのを隠しながらボスに報告するジーパン。「どうも、山吉の親父、本ボシじゃなさそうですね。生活に困ってるようでもないし、どうも違うように思うんですよ」。息がボスにかからないように、挙動不審のジーパン。「おい、お前、横向いてボソボソしゃべらずに、こっち向いてしゃべれ」。はい、と言いながら一歩下がるジーパン。ボス「こっち来い」。完全に軽演劇のノリである。「お前、酒飲んでるな?」。

「馬鹿者!被疑者の家行って酒飲まされて帰ってくる奴があるか!」
「親父もそうしたって言われたもんで、つい」
「親父さんが? おい長さん、ジーパンの親父さんが仕事中に酒を飲んだ話、聞いたことあるか?」
「いえ、親父さんは酒どころか、水一杯飲んだこともありませんでした」

 山さんも「捜査に行った先で番茶を勧められても、一切、口をつけなかったな」と証言する。湯呑みにお茶に見せかけて酒を出す奴がいるから気をつけろと、よく注意してくれた。「やましい気持ちの奴に限って、そういうことするもんだ」と長さん。ジーパンはまんまとはめられたのだ。これも喜劇の作り方である。

 そこへ殿下とゴリさんが、覚醒剤の密売人を逮捕してきた。「落としの山さん」が取調室へ。ゴリさん、猿楽町のドヤで密売人を逮捕した話をジーパンにする。顔を近づけて「おい、いい匂いするな、どうしたんだ?」ジーパンの息を嗅いで「おおいい酒だ。こっちは泊まり込みが続いて、寝酒にも事欠いているんだ」と迫る。ジーパン、ゴリさんの今日の泊まりに寝酒にスコッチを陣中見舞いすると約束。今回は、こうした脱線の連続が楽しい。

 山吉。ジーパンの父の墓参りをしている。「旦那、随分ご無沙汰しちまったね。でも、昨日は息子さんにお目にかかりましたよ。もうすっかり大きくなっちゃって。でもね、刑事としてはまだまだ物足りねえな。旦那もそう思うでしょう? でも、大丈夫ですよ。御命日の前の日に訪ねてくるなんて、旦那のお引き合わせだ。あっしも及ばすながら・・・でも、泥棒だからな・・・」

 ちょうどその時、ジーパンが母・たき(菅井きん)を連れて墓参りにやってくる。気がつかれないように、慌てて立ち去る山吉。墓前の供花に「どなたがお供えしてくださったのかしら?」とたき。「きっと、お父さんが昔お世話した方が、思い出してきてくださったのよ」。物陰からそっと見ている山吉。手を合わせていたたき、突然立ち上がり「お勝手の湯沸かし器の口火、つけっぱなしできちゃったの!」「ドジだなぁ」。いつものように揉め始める母子。気が気じゃないたきは、墓参りもそこそこに、家に帰ろうと走り出す。

 柴田家。「よかった!燃えてなかった」。玄関の鍵を開けて中に入るたき。しかし湯沸かし器の口火は消えている。「あれ?おかしいわね」「無事で良かったじゃない」とジーパン。去年の年末に、たきが福引で当てたスコッチを、ゴリさんの差し入れにしようと、戸棚を開けると「ないよ」「そんなはずあるもんか」。いくら探してもスコッチはない。今朝まであったのに・・・。「変だなぁ」「そうね、玄関にはちゃんと鍵がかかってたし」。たきの一言でジーパン、ピンと来る。「吉三か・・・」。

 山吉の家に乗り込むジーパン。「とぼけんなよな、俺の家に泥棒が入ったんだ!」「不用心だな、ちゃんと鍵をかけておかないから、泥棒に入られるんだよ」。鍵は一つではいけない、無駄なようでも二つはつけとかなきゃいけない、と防犯の心得を説く山吉。家を空けるときはお隣に声をかけて、火の元にも充分気をつけて、と山吉の防犯心得が続く。「火事になったら、てえへんだ。泥棒の被害どころじゃねえからね」。カッカするジーパンに、山吉は「今日はいい酒があるんだい」と戸棚から、例のスコッチを出して「どうだ、いっぱいやらねえか」。

「あら? このウイスキー」
「どうしたい?」
「俺の家から盗んだ奴だな」

 山吉、開き直って「なんか証拠があるのか?」「いや、証拠ったって・・・」「証拠もなしに人を泥棒呼ばわりしちゃいけないよ」。完全に山吉のペースにハマるジーパン。仕方なしに帰ろうとすると「バカにあっさりしてるんだな。あんたの親父さんだったら、ここでしつこく食い下がるところだぜ」。たとえば、これがジーパンの家から持ってきたものなら、ジーパンかたきの指紋がついているはず。と言いながら、スコッチを布巾で吹いてしまい証拠隠滅を図る山吉。ジーパン、力なく笑う。

 一係。新聞の見出し。「養老院に盗品寄附される スーパー泥棒の仕業か・・・!?」。ジーパン、してやられたり。ゴリさんに「鼠小僧ってとこだな」と揶揄われる。「鼠小僧じゃなくて、スーパー小僧だな」と長さんまで。ゴリさん「ちぃ〜とはメドが立ったかい?」「メドが付いたら、とっくに捕まえてますよ」とジーパン。長さんにも揶揄われて、立つ瀬がないジーパン。ゴリさんは「スコッチどうした?」としつこい。「あ、あれね、ちょっと具合が悪いんですよ」笑って誤魔化すジーパン。

 山さんが、覚醒剤の売人が輸入元について自白したとボスに報告。ということは今のやり取りもボス見ていたのか(笑)まだはっきりしないが「中光貿易」がどうもクサイ。そこで全員が中光貿易に当たることに、もちろんジーパンも一緒に。「じゃあ、もうスーパーの方はいいんすか?」。嬉しそうなジーパン。

 中光貿易。ビルの前でジーパンと殿下が張り込んでいる。タクシーから怪しい外国人が降りてきて、小さな包みを持ってビルの中へ。

 一係。久美がジーパン宛の電話を受ける。仕事で外出していると告げると一方的に切られてしまう。電話の主は山吉だった。山吉、ひかりスーパーの近くの電話ボックスから出てくる。「柴田の若旦那、どうしているだろう・・・」と山吉の心の声。

 中光貿易。先程の外国人が出てくる。ジーパン、尾行を開始する。外国人は通りでタクシーを捕まえる。ジーパンもタクシーで尾行する。外国人は埠頭でクルマを降り、停泊している貨物船に乗り込む。

 中光貿易の前では、ゴリさんと長さんが覆面パトカーの中から張り込みをしている。やがて中光貿易・田中社長(森塚敏)が出てきて、クルマで出発する。田中社長は、池尻大橋にあった「大橋タイシンホテル」にクルマを横付けする。キャメラは向かいの東邦大学大橋病院側から撮影している。田中社長はロビーで、スカーフェイスの中川(外山高士)と接触。長さんとゴリさん、ホテルのフロント側からその様子を見ている。フロントのカウンターには、回転式の絵葉書ホルダーがある。どこのホテルにもあった光景。中川を演じた外山高士さんは、声優として「サスケ」(TBS・1968〜1969年)
の大猿大助を演じていた。

 一係。「中光貿易はやっぱり怪しいですね」とジーパンが報告。外国船の船員が持ち込む覚醒剤を買い取っているのではないかと殿下。中光貿易は戸川組と関係があるようだとゴリさん。田中社長は、戸川組幹部・中川と接触していることをボスに報告する長さん。密輸入しているのが中光貿易、それを捌いているのが戸川組という構図である。

 柴田家。ジーパンが帰ってくると、山吉が来ている。「あれからぷっつりみえなくなったので、どうしているかと」と山吉。ジーパンは憮然としている。「あんたが追っかけている、あのスーパー荒らしの、なかなか味なことやるじゃねぇか」。買い占めや値段の吊り上げをする連中にはいいクスリだ。「こんな泥棒なら、お天道さまも許して下さるんじゃないかな」「泥棒は泥棒さ」とジーパン。「またやるつもりなのか?」「あっしに聞かれてもなんともわからねえな」「隠したってわかってんだよ」。ならば自分の後をつけてみろよと山吉。いつ盗むかわからないと、うそぶく。しかしジーパンはもっと重大な事件があるから、山吉と泥棒ごっこしている暇はないとにべもない。少し寂しそうな山吉。

 たきが支度をして茶の間へ。なんと山吉が持ってきたのは例のスコッチ「J&B」だった!「昔ね、親父さんとよく飲んだのを思い出しましてね。今、勤務中じゃないんでしょ?」とジーパンに勧める。開き直ったジーパン「今日はもう、勝負だよ」と飲み比べが始まる。

 このノリ、東宝で1960年代に連作された『天才詐欺師物語 狸の花道』(1964年・山本嘉次郎)などの「詐欺師もの」を思い出させてくれる。田波靖男さんも、『馬鹿と鋏』(1965年・谷口千吉)、『3匹の狸』(1966年・鈴木英夫)の脚本を手がけている。

 翌日、中光貿易。張り込むジーパンを、そっと影から見ている山吉。田中社長が出てきたので尾行するジーパン。山吉は中光貿易のビル入り口を丹念に調べる。ジーパンは田中の尾行をゴリさんとバトンタッチ。ボスに無線で報告する。「現在、事務所には誰もいません」「よし、お前、しばらくそこで様子を見ていろ」「留守の間に事務所を捜索できたら良いんですがね」「令状がなければどうにもならんよ。警察は泥棒じゃないんだぞ」。

 その泥棒・山吉が、無人の中光貿易の事務所に潜入。堂々と家探しを始める。慣れた手つきで鍵を開け、応接室のタバコを失敬。あっという間に隠し金庫を見つけて、鮮やかな手捌きで扉を開け、覚醒剤を発見する。

 深夜、柴田家。ジーパンが寝ていると物音がする。「母さん?」しかしたきではない。ジーパンが家を見回るとたきが起きてくる。人の歩き回る気配がしたとジーパン。そのとき、山吉がそっとジーパンの部屋に入って、手紙を置いて言ったのだ。新聞の切り抜き文字で封筒に「3月1日3時 中央公園で取引あり」とある。封筒には覚醒剤が入っていた。

 翌日、山吉が電話ボックスで田中社長に電話をかけている。「俺、オタクの金庫にあった覚醒剤、袋ごと預かっているんだがね・・・」「お前誰だ?何者だ?」「ただの泥棒ですよ」。しかし覚醒剤は引き取り手がいないので、買い戻して欲しいと、取引を持ちかける。「10グラムで200万円するそうじゃねえか」「半値の2000万円にサービスしておくよ」。

 一係。殿下がボスに報告。封筒の覚醒剤は、今出回っているものと同じもの。「誰がこんなものをジーパンの枕元に届けたんだい?」と山さん。覚醒剤の密輸で一係が田中をマークしていることは極秘なのに「誰かに喋ったか?」とボス。ジーパンは「とんでもないですよ」と否定。「うちに忍び込んだ手口の鮮やかさは、山吉に似ていますが、しかし、あのじいさんが覚醒剤に関係あるとは思えんし」。ボスは「とにかく張り込んでみよう」。

 中央公園。バッグを持った田中社長がやってくる。ふとみるとおでん屋の屋台がある。暖簾をくぐると「あ、いらっしゃい」山吉である。田中社長「おでんをくれ」。バッグからラジオを取り出し、競馬中継をつけるが「また外れやがった」とイラついている。「誰かと待ち合わせですか?」「誰も来なかったかい?」「どんな人です」。実はラジオは無線機で、ベンチの中光貿易社員(加藤寿、大宮幸悦)が二人の会話を聞いていた。「まだ来ねえらしいや」「何ぐずぐずしてるんだ」貿易会社の社員には思えない”やくざしぐさ”(笑)

 田中社長があたりを見渡すと、ジーパンがゆっくりと歩いてくる。屋台の山吉を見つけるジーパン。田中の姿も見つけるが、一度はその場を立ち去る。「あの人じゃなかったんですか?」と山吉、田中社長に。ジーパンは覆面車のゴリさんと殿下に「やっぱり山吉の親分が仕組んだんです」と報告。「今、田中が来てるんです。山吉と話しているんですが、一体どうなってるんですか?」とジーパン。「もう少し、様子を見てみよう」とゴリさん、殿下、ジーパンが公園へ。

 「お連れさん来ませんね」と山吉。田中社長、バッグを持って動こうとする。「あんた田中さんかい?」さっき来た人に、持って来たものを預かるように言われたと山吉。「どんな奴だ?」。ジーパンが近くを彷徨いている。「あんまり見ないでくださいよ。ずうっと見張っているから、妙なことするな、って脅かされているんです」「あのひょろ長い奴(ジーパン)か?」。田中は無線で部下たちに、ジーパンに注意しろと伝える。社員とヤクザらしき男計四人が、ジーパンを取り囲んでボコボコにする。「何すんだ!」ジーパンの怒りが炸裂、いつもの空手アクションとなる。それに気づいたゴリさん、殿下が現場に向かう。

 「ぐずぐずするな!早くカタをつけろ!」と田中社長。そのどさくさで山吉は、田中のバッグを盗み出す。ゴリさん、殿下も参戦して男たちを捕まえる。「デカだったのか?」と田中が気づいて逃げようとする、後ろからジーパンが飛びかかり歯がいじめ。田中を逮捕する。しかし、山吉はどこかへドロンしていた。現金と覚醒剤は、一体どこへ?

 バッグを抱えてご満悦の山吉。「現金は手に入ったし、一石二鳥だ」。しかし、目の前になんと中川(外山高士)と子分が立ちはだかる。中川にバッグを奪われ、山吉はクルマに拉致される。ジーパンが駆けつけた時には、クルマは発進していた。ナンバーも読み取ることができなかったが、山吉の機転で、クルマのキーについていたキーホルダーが引きちぎられて落ちていた。

 とある一室、山吉が拉致されてくる。中川は「覚醒剤をどこへやった?」と責め立てる。惚ける山吉。「あの刑事たちはお前が呼んだのか?」「違うよ」「本当だな」。なぜ、中光貿易が覚醒剤の取引をしていることを知ったのかと詰問される。「惚けるのも良い加減にしろ!」「いじめるもの良い加減にしろ」。ああ言えばこう言うのがおかしい。しまいにゃ卓上のタバコを取り出し「火を貸して」。ヤクザたちも怒り心頭。山吉をボコボコに・・・

 殿下のクルマでジーパン、先程のキーホルダーのプレートの持ち主の豪邸へ。塀を乗り越え潜入する。部屋の中では山吉がヤクザに取り囲まれてやられている。そこへジーパン、窓から「やめろ!」と飛び込んでくる。空手アクション、本日2ラウンド目。部屋のドアがぶち抜かれ、セットは大破。後ろからビールびんで殴られても、なんのダメージも受けないジーパン。『ドラゴン怒りの鉄拳』よろしく、放り投げられたヤクザはガラス戸を壊して外へ飛ばされる。殿下も参戦して大乱闘が続くなか、中川が外へ逃げ出す。追いかけるジーパン。庭では先に外に出ていた山吉が、中川に竹竿を投げつけ転倒させる。そこへジーパンが飛びついて逮捕。見事な連携プレー。「やった、出来した坊ちゃん!」しかし、じいさん、いつの間に外へ?

「覚醒剤のありかはこいつに聞いたってわかりません。物はちゃんと田中の事務所にあります。金庫から出して、田中の引き出しに隠しておいたんですよ。奴らの手元から出て来ねえと証拠にならんでしょ?」 

 一係。山吉が来ている。長さん「うまく奴らを引っ掛けてくれたね」「とんでもない、柴田の若旦那が飛び込んでくれなければ、私の苦労は水の泡ですよ」。山さん「さっきから聞いてりゃ、ジーパンのことばかり立ててるじゃないか。最初からジーパンに手柄を立てさせるために仕組んだな」。惚ける山吉。ゴリさんと殿下が疑問に思っているのは「持っていった二千万、どうするつもりだったんだ?」。

 ボス「一石二鳥を狙ったな、じいさん」。後で交番に届けるつもりだったと言い訳する山吉。それでも事件は解決したのでよかったということで落ち着く。ジーパン、タバコに火をつけようとしたらライターがない。探していると、山吉がポケットからマッチを取り出して火を付ける。なんと「ひかりスーパー」のノヴェルティのマッチ! ピンと来たジーパン、山吉の腕をつかみ「このマッチはどこで手に入れたんですか?」。買い物に行った時にもらったと惚ける山吉。「これは来月の開店記念の時に配るマッチだ」「このマッチを持っているということは、あの倉庫に入ったという証拠だ」。

「恐れ入りやした。実はあの倉庫荒らしは、あっしがやったんで」
「やっぱりそうか」とボス
「あのスーパー、やたらと悪どい儲け方を始めやがったんで、つい腹が立って、やっちまったんです。18年ぶりに盗みに入りやした。申し訳ございません」

 ジーパンに両手を差し出す山吉。躊躇するジーパン。ボスに促され、山吉に手錠をかける。「さすがは柴田の若旦那だ。親父さんに似て良いデカになったね」と感心する山吉。ジーパンに連れられ別室へ。「おっさん、風邪引くなよ」と長さんが声をかける。

「あれで良いんだよ。山吉はジーパンを試したんだ。ジーパン、あのマッチに気づかなかったら、じいさんがっかりしたろう。そういう奴なんだ」とボス。

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