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『裸の拍車』(1953年・MGM・アンソニー・マン)

6月12日(日)娯楽映画研究所シアターは、アンソニー・マン監督&ジェームズ・スチュワーとのコンビ第3作となる西部劇『裸の拍車』(1953年・MGM)をアマプラからスクリーン投影。

これまでの二人のコンビ作では、ジェームズ・スチュワートは善良な男、というこれまでのスクリーンイメージだったが、本作ではエゴイストの賞金稼ぎという、ややダーティなヒーローにシフト。登場人物全員が「脛に傷持つ」「悪人」という設定で、ネイティブ・アメリカンとの闘いを除いては、五人の登場人物の物語になっている。

これまではユニバーサルの製作だったが、本作はMGMスタジオで予算も潤沢にかけている。ヒロインで悪党の娘・リナ・パッチにジャネット・リー。護送される賞金首のヒール・ベン・ヴァンダーゴートにロバート・ライアン。ジェームズ・スチュワートの賞金稼ぎハワード・ケンプに加担する、北軍を追放された兵隊くずれ・ロイ・アンダーソンにラルフ・ミーカー、一攫千金を夢見る一癖も二癖もある老人・ジェシー・テイトにミラード・ミッチェル。

それぞれのクセのある芝居が楽しめる。ニューロティックな心理描写に重点を置いて、欲望渦巻く男たちの出し抜き合いが、(この時代にしては)重苦しい雰囲気で展開されていく。

オリジナルポスター

1868年、コロラドのロッキー山脈。ハワード・ケンプ(ジェームズ・スチュワート)は、5,000ドルの賞金首の保安官殺しの悪党・ベン・ヴァンダーゴート(ロバート・ライアン)を山中まで追いかけていた。途中で出会った金鉱探しの老人・ジェシー・テイト(ミラード・ミッチェル)を20ドルで雇い、ベンを追い詰めたところに、元騎兵隊中尉でネイティブの娘と問題を起こして騎兵隊をクビになったロイ・アンダーソン(ラルフ・ミーカー)も、ベンが賞金首と知って、加担することに。

三人のワルが保安官殺しを追い詰める。しかしベンには、親分の娘・リナ・パッチ(ジャネット・リー)が同行していて、彼女はかなりの鉄火娘。ベンに惚れ込んでいるので、三人に抵抗する。というわけでベンの首にかかった懸賞金5000ドルを、三人で山分けすることになり、ベン、リナと五人の道行きが始まる。

ロバート・ライアンの悪党ぶりが太々しくて、なかなかいい。三人で山分けすることない、ひとり減れば二分の一になると、仲間割れを唆したり、欲望の塊のようなジェシーには「金鉱の場所を教えるから、山分けしよう」などと悪魔の囁きを連発する。

ギシギシしていく人間関係。途中、かつてロイが手を出したネイティブ・アメリカンの娘の部族が、襲撃してくる。ハワードは話し合いに持ち込もうとするも、ロイが発砲して壮絶な殺し合いとなる。そこでハワードが足を負傷。一行の足手まといとなるが…

ジェームズ・スチュワートはなぜ、金色夜叉のように金に取り憑かれているのか? 瀕死の時に悪夢にうなされている時に、それが明らかになる。

ここからの裏切りに次ぐ裏切り、仲間割れ、激流のアクションなどの見せ場が続いていく。サスペンス映画としてもよくできていて、最後の最後まで二転三転、最後の1分で鮮やかなオチとなる。これぞ娯楽映画!

アンソニー・マン監督とジェームズ・スチュワートのコンビは、続いてユニバーサルで、テクニカラー大作『雷鳴の湾』(1953年)を手がけることになる。

日本公開は1953年10月24日


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