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『警視庁物語 全国縦断捜査』(1963年・東映・飯塚増一)

6月9日(木)「警視庁物語」シリーズ第21作『警視庁物語 全国縦断捜査』(1963年・東映・飯塚増一)を2年ぶりにスクリーン投影。回を重ねてきたこのシリーズ。ついに沖縄→秋田→三重と、文字通りの全国縦断ロケを敢行。スケールが一気に大きくなっている。

東京都下、奥多摩で黒焦げの死体が発見された。犯人はベルトで絞殺、石油に火をつけて焼殺。現場に残されていた吸殻は沖縄たばこ「うるま」と判明。やはり現場には「ブッポウソウ(ハイビスカス)」をあしらったベルトのバックルが落ちていた。被害者もしくは犯人が沖縄と関係があるかも、と長田部長刑事(堀雄二)は那覇へ。

そこでアメリカ占領下の沖縄が抱えていた様々な問題が、提示されていく。清水元さんが地元の刑事を演じていて、長田刑事は、沖縄戦の激戦地や、基地の街を案内する。長谷川公之脚本は、本筋に「沖縄の問題」「日米安保」などの現実を絡めて描いていく。

「富士電機ジューサー」「フマキラーベープ」のあからさまなタイアップシーンがあるが、これはロケーション費の捻出のためだろう。アメリカ資本による日本経済への支配、といったテーマを描きながら、ちゃんと企業タイアップをしている。これもプログラムピクチャーならでは。

犯行に使われた石油を売ったガソリンスタンドを探していく前半や、犯人が勤めていたとされる三重県の石油プラントへの捜査場面で「アメリカ資本による日本経済への侵略」が匂わされる。といったように、今回はビビッドに当時の「日本が抱えていた問題」が見え隠れする。

同時に、いくつかの母子のドラマも描かれている。沖縄戦で亡くなった息子の生還を信じている老母・岸輝子さん。秋田に住む容疑者の養母(実は祖母)の怒り。容疑者の妻・岩崎加根子さんが幼い息子がカエルを虐待している姿を見て「犯罪者の血が流れている」と叫ぶ場面。そしてラスト近く登場する、真犯人の妻・中原ひとみさんは出産したばかりで、夫が犯人だと知らされ半狂乱となる。

舞台は奥多摩→都内の工事現場(港区)→鮫洲→沖縄→秋田→四日市→上野。クライマックス、犯人逮捕のシークエンスは、上野駅でのロケーション。これがドキュメンタリータッチで、なかなかの迫力。


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