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太陽にほえろ! 1973・第72話「海を撃て!!ジーパン」

この原稿は、事件の核心、物語の展開について詳述しております。ネタバレ部分もありますのでご注意ください。

第72話「海を撃て!!ジーパン」(1973.11.30 脚本・鎌田敏夫 監督・竹林進)

永井久美(青木英美)
加納修(山西道広)
ジョン・スミス(トニー・セトラ)
スナックのママ(夏川圭)
築地博
今井和雄
女子高生(三戸悦子)
女子高生(高橋美知子)
女子高生(金子美智代)
金森先生(石山克己)
和田文夫

予告篇のナレーション。
「ジーパン。一発の弾丸に込めるお前の心はなんだ? 今まで銃を持たなかったお前の過去は何だったんだ?その引き金にかかる指は何を求めているのだ?その眼は何を見つめているのだ?次回「海を撃て!!ジーパン」にご期待ください」

 今回はジーパン・柴田純(松田優作)の「拳銃嫌い」を克服する物語。第53話「ジーパン刑事登場!」で描かれた、拳銃不携帯を身上としたために射殺されてしまった警察官の父親への思い。それゆえ「人殺しの道具」を持ちたくないと素手で勝負してきたジーパン。大切な人を守るために、拳銃と向き合うジーパンの心の成長を、見守るボス・藤堂俊介(石原裕次郎)。鎌田敏夫脚本による「ジーパン成長篇」。

 射撃練習場。普段、拳銃を携帯しないジーパンが、ボスの立ち合いで射撃練習をしている。2発、3発と、全く的に当たらないジーパンに、ボスも呆れ顔。「拳銃にだって心はあるんだぞ、ジーパン」とボス。「お前が拳銃を嫌っていれば、拳銃の方だって、お前を嫌うよ」。ジーパンは別に嫌っているわけではないが「こんなちっぽけな道具が、あっけなく人の命を奪ってしまうかと思うと、やりきれなくなるだけですよ」。

「その人間の何十年という人生を、あっという間に奪い取ってしまうんですからね」
「拳銃嫌いの親父さんが、拳銃で殺されたから、拳銃を持ちたくないというお前の気持ちもわかるが、いいか、ジーパン、こいつだけは覚えておけ。俺たちはな、ただのアクセサリーで拳銃をぶら下げているわけじゃないんだ」

 ボスは「ちょうどお前ぐらいの年頃、射撃が下手くそだった」と拳銃を構えて撃つ。弾は真ん中を貫いている。「教官のよく怒鳴られたが、俺はタカを括っていた。こんなものをぶっ放す事件なんてものは、そう滅多にあるもんじゃない。たとえあったとしても脅かしの一発ぐらいだろうってな」。再び銃を構えるボス。またしても真ん中に命中。

「ある時、犯人を追い詰めた。奴は銃をぶっ放してきて、こっちも撃ち返さなきゃ、撃たれてしまうんだ。俺はそいつを狙った。そいつの肩を撃って、銃を落とすつもりだった。しかし、俺が撃った弾は、そいつの胸部を貫いて、殺してしまったんだ」。

ボス、さらに撃つ。三発目も真ん中を貫く。

「そいつは凶悪な殺人犯なので、誰にも非難されなかった。しかし、あの時、もし俺の腕が正確だったら、俺はひとりの人間の命を奪わずに済んだんだ」。

ボス、四発目も同じ場所を撃ち抜く。ボスの言葉に、思わず俯くジーパン。

「俺が死に物狂いで、拳銃の練習をし始めたのも、その時からだ」

ボス、五発目も命中。つまり百発百中だ!

「デカの拳銃に狂いは許されない。もし、この腕に狂いが来た時は、俺は拳銃を捨てるよ」

ボス、六発目も見事に仕留める。

 捜査第一係。ボスとジーパン、帰ってくる。久々のシンコ「ボス、お客様です」。九州の女子校の金森先生(石山克己)である。清心女子校の修学旅行の引率で東京に来ている金森先生は、生徒の一人が昨夜から宿に帰っておらず、七曲署に相談に来たのだ。生徒たちは今夜、九州に帰ることになっているのに、なんの連絡も手がかりもなく、金森先生は途方にくれていた。昨夜は、最後の自由時間で、生徒たちはそれぞれ都内見物へ。写真の宮野ゆかりだけが、帰って来ていなかった。「今のところ、宮野さんに該当するような事件は起こっていません」とボス。ホッとする金森先生。ボスは事件としてではなく、調べてみましょうと約束する。

 修学旅行の旅館。ジーパンとシンコが、同級生からゆかりの話を聞く。最後に別れたのが銀座の一光デパートだった。ゆかりが「疲れたから先に帰る」といって友達(三戸悦子、高橋美和子、金子美智代)と別れたのが2時ごろ。ゆかりはデパートから電話をしていた。自分のことはあまり人に言わない宮野ゆかりなので、誰にかけていたのかはわからない。そこへボスからジーパンに電話で、宮野ゆかりが死体で発見されたと連絡があった。

 多摩川沿いの発見現場。金森先生が遺体を確認した。ボスによれば死因は絞殺。首の皮下出血の後から、犯人は片手で喉を締め付けるように殺したらしい。例え相手が女性でも片手で窒息させるには相当な力がいる。皮下出血の後を見ると、手の相当大きな男であることがわかった。ゴリさんが水門のところで見つかった宮野ゆかりの赤いボストンバッグを持ってくる。中身は学生証とゆかり宛の手紙。手紙の差出人は「立川市三輪町 加納修」。

 勤め先の工場へ、加納修(山西道広)を訪ねるジーパンと殿下。「これは君が宮野ゆかり君に出したものだね」と手紙を見せる殿下。加納はすぐに七曲署へ任意同行。

 山西道広さんは、第65話「マカロニを殺したやつ」でドラマ・デビュー。文学座では松田優作さんの同期で、盟友として数々のドラマ、映画で共演していくこととなる。今回は、女子高生殺人の容疑者として、その微妙な心理、鬱屈した若者のやり場のない怒りを好演している。

 一係。ボスが修に「君は、宮野ゆかり君とペンフレンドらしいね」。今までには一度も逢ったことがない。山さん「なぜ、すぐに逢いに行かなかったんだ?」。ペンフレンドが上京して、逢いたいと連絡があったのに、なぜすぐに逢いにいかなかかった?と詰問する山さん。「俺の手紙、見たなら分かるだろう?」。修は手紙に、嘘を書き連ねていた。高校行っているだとか、良家の息子だとか・・・。中卒で修理工場で働いていると言ったら、手紙をくれないと思ったから偽ったと修。「一度、出鱈目書いたら、それを押し通すしかないじゃないか!」。クラスメイトの話では、ゆかりは修を逢うのをすごく楽しみにしていたとボス。「一緒に買い物行っても、落ち着かなかったそうだ」。

「彼女は君の出鱈目を信じて、死んでいった・・・」

 「違うよ」と修。最後の電話の時、修は本当のことをゆかりに話した。「それでも良かったら逢おう」。修は多摩公園でゆかりを待っていた。しかしゆかりは来なかった。「やっぱり修理工の俺には会いたくなかったんだ」「来てたじゃないか、彼女は」と山さん。来てたからこそ、多摩公園の近くで殺されたのである。修は「逢わなかったんだよ!」と叫ぶ。公園で待っていたのに、結局は来なかった。

 「手紙に出鱈目を書き並べるだけあって、お前、嘘がうまいな」と山さん。もう修を犯人と決めつけているの?山さん、それはよくないよ。「彼女に全てを話したというのも嘘だ。彼女に逢わなかったというのも嘘だ」。それを否定する修。しかし山さんは「お前は彼女に逢った。そして本当のことを話た。彼女は明らかにがっかりした顔をした。それを見てお前は、カーッとなった」「違うよ!」

「彼女を殺したのは、普通の人間じゃないんだ。手のデカイやつじゃないと、あんな風に締め殺せないんだ」

山さんは修の手を取って「お前のような奴だ!」

 ボスも修がクロだと踏んでいるようだ。「ゆかり君と逢う場所は、君が指定したんだね?」とボス。修は3時過ぎに指定の場所に着いた。「彼女が殺されたのは2時から5時までの間だ」と山さん。ボスも「君が着いたとき、その公園に誰かいたかい?」と追い討ちをかける。「いいえ」修は少し考えて「外人が一人いました。僕が来ると同時にクルマで去っていったんです。身体の大きな外人で歳は40ぐらい・・・」。自分より10センチも背が高かった。しかし山さんは「お前が頭がいい奴だな」と、手のデカイ奴だといったから、外国人をでっち上げたなと、厳しいね。でも山さん、思い込みが激しすぎ。

「どうしてそんなに俺を犯人扱いしたがるんだ?」
山さんの胸ぐらを掴む修。このシーンは小学生のとき、きつかった。「冤罪が作られる瞬間」だからね。「俺じゃない、俺じゃないんだ!」。山さん、手のひらを口に当て、ボスはキリリと修を見つめる。「ひょっとして・・・」の瞬間の表情。

 一係。ボスに聞かれた山さん。「私の考えではシロですね」。修はどんなことを言っても怯まずに反論してくる。間違いなくシロだろう。ボスはジーパンに、もしもペンフレンドがいて、自分のことを嘘ついていて、会ったときにそれを詰られたら、カッとなって相手を殺すか? ジーパンは「成り行きでそういう風になることも、考えられますが」と答える。長さん驚いて「ただそれだけのことで?」

「おそらく加納に取って、宮野ゆかりさんは、生活の中で一番大切なものだったんじゃないでしょうか?」

 しかし長さんは「顔も見たことのないペンフレンドなんだぞ」と信じられない様子。世代間の違いだろうけど、ジーパンも素直だね。殿下がゆかりの衣服に付着していた体毛の顕微鏡写真を、鑑識から持ってくる。争った後に付着したものだと推察される。鑑識では「日本人のものではない」と判断している。

「外人か・・・加納が見たと言っているのは・・・」と山さん。
「本当かもしれんな」とボス。

 加納修は証拠不十分のため釈放される。ジーパンは「加納が犯人に違いない」とボスに抗議するが、ボスはあくまでもルールに則って捜査を進めていくくと、自分のポリシーを伝える。

 ゴリさんと長さん、釈放された加納修の尾行を続ける。アパートの前で張り込むゴリさんに、電話で「寒いだろうが頑張ってくれ」と優しく声をかけるボス。

 翌朝、アパートを出て勤務先の「宮寺モータース」に出勤する加納を、クルマで尾行するジーパンと殿下。仕事中、時計を気にする加納。ジーパンがまずいラーメンを食べて戻ってきたタイミングで加納が外出する。米軍基地の脇を歩く加納をジーパンと殿下がつける。米兵相手のスナック街。加納はあたりを気にしながら「くらぶシャングリーラ」に入る。殿下は入口、ジーパンは裏口へ。店内から「誰か来て!」と女性の悲鳴。殿下が慌てて中へ入る。加納は店のママ(夏川圭)に銃を突きつけている。「来るな!この女を撃つ」「弾が入っているのよ!」。

 さあ、どうする殿下、ジーパン。「デカなら手錠ぐらい持ってるんだろ?」。殿下が手錠を出すと、加納は「自分の手にかけろ。カウンターの棒に通すんだ」と指示をする。もう片方の手錠をジーパンの「手にかけろ」と加納。これで身動きができなくなった。裏口を開けて加納が出て行こうとする寸前に殿下が拳銃で狙うが、ママが放り出された隙に、加納は逃げてしまう。

 取調室。ボスがママから事情聴取。加納は拳銃を取りに店に来たこと。「どうして拳銃なんて持っていたんだ?」と長さん。女の子は、店の客の半分は基地の兵隊で、飲み代が足りなくなると、そのカタに置いていくのがいる。加納は店の客で「本物の拳銃を見たことがない」と言ったことがあるので、以前に見せたことがあると、ママ、しれっと話す。

 一係。ゴリさんとジーパンが修理工場の聞き込みから帰ってくる。加納は朝から考え事をしていて、突然、仕事を放り出して出ていった。今更拳銃を奪って何をしようというのか? やけっぱちの行動にしては「念が入り過ぎているよ」と山さん。

「もし加納が外人を見たというのが本当なら、加納はその外人を見つけたのかもしれんな」とボス。

 何らかの方法で加納は外国人の名前を知り、自らの手で復讐をしようと考えたのではないか? 「一度も会ったことのないペンフレンドのために、ですか?」と懐疑的な長さん。「そういうもんだよ、若い時はな」とボス。どうして外国人の名前を突き止めたのか? 前夜、加納は一度も部屋を出なかった。「何かの手がかりを掴んだとすれば、部屋の中だ」とボス。もう一度、加納のアパートを家宅捜索することに。

 一係。多摩川のボート小屋で、加納を見たらしいとの情報提供の電話が入るが、相手は名乗らずに電話を切ってしまった。ジーパンが現場へ行くことに。

「ジーパン、拳銃を持っていくんだ」
「え?」
「もし加納だとすれば、相手は拳銃を持っているぞ」
「大丈夫ですよ。拳銃を持たなきゃ、何にもできない奴くらい、この手でつかまえてみせます」

 シンコは「ボス、私も行きます」と申し出るが、ボスに「シンコはいい」。しかし「女だからと差別しないでください。それに、ちゃんと拳銃だって持ってます」と出ていく。

 多摩川土手。ジーパンとシンコが到着。「貸しボート 泉屋」が見える。土手を降りるときに、ジーパンがシンコの手を持ってあげる。先程のセリフを受けての細やかな描写。二人が恋愛関係になっていくことを予感させる仕草である。小屋の前、ジーパンが「危ないからここにいろよ」「危ないのはどっちよ?」とシンコ、前に進んでいく。シンコ、ジーパンに拳銃を渡そうとするが、その手を二度も振り払い「いらないんだよ。俺は」とジーパン。

「意地っぱり」
「意地っぱりはどっちだよ」

「見物するためにここへ来たんじゃないわよ」。シンコは、ジーパンと二手に分かれ、横から回ることに。小屋に近づくジーパン。中から加納が拳銃をシンコに向けて構えている。それに気づいたジーパン、走り出して「シンコ、伏せろ!」。しかし、シンコ、脇腹を撃たれてしまう。なおも二人を狙う、加納の拳銃。発砲が続く。「大丈夫か?」「大丈夫」しかし、シンコの脇腹から出血。「シンコ・・・」。ジーパン、ものすごい形相で小屋に突進する。「柴田くん!」

ジーパンが小屋に入ると、加納が額から血を流して絶命している。

 シンコの元に戻るジーパン。「死ぬなよ。お前、死ぬなよ」。そこへゴリさんと長さんが駆けつける。「シンコが加納に撃たれたんです」「で、加納は?」とゴリさん。「小屋で自殺していました・・・」

 警察病院。ストレッチャーで運ばれるシンコ。心配そうに付き添うジーパン。手術室の前で立ち尽くすジーパン。シンコが撃たれる瞬間がフラッシュバックする。強く拳を握るジーパン。

 射撃練習場。ジーパンが一心不乱に練習を続けている。少しずつだが、的に当たり始めている。最初は片手で撃っていたが、そのうち『ダーティ・ハリー』のように両手で構えたり、さまざまな撃ち方をする。そこへボスが静かにやってくる。「ジーパン」。

「俺たちの拳銃はアクセサリーじゃないって、ボスは言った。もし、あんとき、俺が拳銃を持っていたら、加納の拳銃を見つけたとき、すぐに撃ち返すことができていたら、シンコは撃たれずに済んだかもしれません。もし、俺が拳銃を持っていたら・・・」

 拳銃を構えるジーパン。命中率が次第に上がってきた。ボス、ゆっくり近づいてきて「まだ事件は終わったわけじゃないぞ、ジーパン」。ボスは胸ポケットから銃を取り出して構える。連続して的の真ん中を射抜く。音楽盛り上がって。ジーパンも構える。二人で同時に、次々と撃つ。ジーパン、ついに真ん中を射抜く。そこでトランペットが最高潮に!

 ボート小屋。長さんが鑑識とともに現場検証。そこへジーパンがやってくる。「お前がここに飛び込んできたとき、加納はどこに倒れていた?」と長さん。加納が拳銃を撃っていた窓と、最後に死んでいた場所が離れ過ぎている。「おかしいとは思はないか?」「お前、確か、続け様に撃ってきた、と言ったな」「ええ」「よく考えろ。最後の一発だけ間があったか?だ」と長さん。少し考えてジーパン「ありません」。

「いいか、最後の銃声がしてから、お前がここに飛び込むまでは、ほんの二、三秒だ。よろめいて、あそこまで行って、崩れるように倒れたとすれば、お前がここに飛び込んだとき、加納はまだ息があった筈だ」
「じゃ、誰かもう一人いたってことですか?」
「そういうことになるな」

 長さんの推理、素晴らしいね。一係に戻った二人。ボスに報告する。現場検証で採取した足型の写真を検討するボス。死んだ加納以外に、もう一つの足跡が現場に残されていた。「どうやら、長さんの推理が当たったようだな」とボス。

「拳銃を撃ってきたのは加納ではありません。加納はそのとき、すでに殺されていたのです」と長さん。

 ジーパン、ボスに「すいませんでした」と謝る。「俺、シンコが撃たれたので、カーッとなって。現場を冷静に見る余裕がなかったんです」。ジーパンの成長の瞬間。長さんが無言でジーパンの肩を叩く。こういう細やかさが「太陽にほえろ!」の世界を作り上げている。ワンシーンで、登場人物の心の動きが視聴者に伝わり、それがキャラクターのイメージを膨らましていく。

 そこへゴリさんたちが帰ってくる。山さんは、加納はテレビもラジオも持っていない。情報を得るとすれば「週刊誌しかありません」。それも近所の飯屋から持ってきたような古いもの。その中の「週刊読売」から、山さんは外国人の記事を見つけた。「ジョン・スミス氏来日 『ビッグ・バイヤー旋風』」の見出しが踊るグラビアには、ジョン・スミス(トニー・セトラ)の姿。190センチの大男で、日本に買い付けにきているバイヤーだとゴリさん。

ジョン・スミスを演じたトニー・セトラさんは、トニー・セテラの名前で『怪談 異人幽霊』(1963年・大蔵映画)や『ノストラダムスの大予言』(1974年・東宝)、『エスパイ』(同)などに出演しているアメリカ出身のバイプレイヤー。「秘密戦隊ゴレンジャー」(1975年)や「宇宙鉄人キョーダイン」(1976年)などの特撮番組にもよく出演していた。

 山さんが外事課に問い合わせたところ、トラブルを起こしてばかりの不良外人で、香港でも女のことでトラブルを起こしていた。女好きの不良外国人が、美しい女子高生を見かけたらいい寄りかねないとゴリさん。「そして抵抗され、殺したんですよ」とジーパン。

ジーパン「もし、スミスが拳銃を撃っていたら、硝煙反応が残っている筈です」
ボス「週刊誌のグラビアに載っていただけで、逮捕するわけにはいかんよ」

 ボート小屋。再びジーパンは現場へ。音楽はスローバラードのテーマ。ゆっくりと、小屋の周りを調べるジーパン。ギターの泣き。近所の主婦への聞き込み。刑事としての自覚が目覚めたジーパンの成長を、視聴者に感じさせるサイレントシーン。子供たちにジョン・スミスの写真を見せて情報を集めるジーパン。

 一係。ジーパンが戻ってくる。シンコが撃たれた日、川の上流で魚釣りをしていた子供によると「川の中から大きな外人が、いきなり上がってきた」という。子供が驚いて立ち尽くしていると、その外国人がその子を殴り倒して、立ち去っていた。スミスの写真を見せたが、そのとき外国人は全身ずぶ濡れになっていて、よくわからなかった。ボート小屋から川に飛び込んで逃げたらしい。しかし、子供は、外国人の黄色いカマロのことを覚えていた。ゴリさん「そうか、そいつはスミスが乗っているのと同じクルマです」

 ジョン・スミス、あたりをキョロキョロ見渡しながらエスカレーターに乗っている。赤坂東急ホテルの喫茶ルームへのエスカレーターである。ここは裕次郎さんが毎日通っていたバーのあるホテル。ボスとゴリさんが、スミスを待ち構えている。”Excuse Me. Are you Mr.Smith?”さすがボス、流暢な英語でスミスに話しかける。

 一係。ボスが帰ってくる。「スミスにはアリバイがあった」。犯行時刻には会議に出席していた。宮野ゆかりが殺された日のアリバイも会った。一緒にいた「光貿易」の営業部長が証言したという。複数の部課長が同じ証言をしている。そこへゴリさん。「やっぱりあの貿易会社とスミスの間には、大量の買付契約が結ばれています。それもここ1日、2日の間に」。アリバイを作る代わりに商談を成立させたのではないか?

ジーパン「しかし、スミスは人殺しなんですよ。なんの罪もない女子高生を殺したんですよ。なぜ庇わなければいけないんですか?」
ゴリさん「要するにエコノミックアニマルだよ」

そこで山さん「会議に出席した部課長で一番気の弱そうなのは誰だい?」 

 見るからに気の小さい管理職・野田の家。いきなり殿下「あなたを犯人隠匿罪で逮捕します」。山さん「ジョン・スミスを会議に出席したことにして、アリバイを作ったのは、あなたの発案らしいですなぁ」。山さんは続ける。「ジョン・スミスは殺人犯です。それを知りながら、アリバイを作ったとなると、罪は重いですよ、野田さん」。野田は声を荒げて「スミスが会議に出席しようと言い出したのは沢本部長だ。部長がみんなを説き伏せたんだ」。はい、これでアリバイは崩れた!

 赤坂東急ホテルの前。覆面パトカーのジーパンとゴリさん、長さん、ボスからの連絡を待っている。そこに無線で「スミスのアリバイが崩れた。人の命令に簡単に従う奴ほど、裏切るのも早い、って山さんが言ってた。逮捕状届くまで、しっかり見張ってろよ」とボス。スミスがカマロでホテルを出発。それを追う覆面パトカー。走る、走る、走る。やがて海岸線へ。「行先は港じゃないですか?」とジーパン。スミスは沖にいる外国船で逃亡を企てているらしい。カーチェイス! スミスのクルマに出し抜かれる覆面パトカー。神奈川県三崎港からモーターボートで逃走するスミス。「モーターボートを探すんだ」と長さん。ゴリさんも走る。

 しかしジーパン「長さん、貸してください」「え?」「銃」。長さんの拳銃を握りしめ、港の突端まで走るジーパン。トランペットのテーマが高鳴る。堤防を走るジーパン。目の前にスミスのモーターボート。ジーパン、拳銃を構えて、一発、二発、三発、四発とスミスに向かって撃つ。観念したスミス”Stop don’t shoot ,I give up”と叫ぶ。その声がリフレインされる。ジーパン、ゆっくりと銃を降ろす。ピアノソロで「太陽にほえろ!」のテーマが静かに流れる。長さんとゴリさんがモーターボートで、スミスを逮捕する。

 弘生警察病院。シンコの病室。ボスが満面の笑みで「ジーパンがシンコの仇取ったぞ」「ほんとですか?」嬉しそうなシンコ。「で、ジーパンこなかったか?」「ええ」「シンコに真っ先に知らせたいって、部屋を真っ先に飛び出したんだがな」。ノックの音。大きなバラの花束を持ってジーパンが現れるが、ボスの顔を見てギョッとなる。「どうしたの?それ?」「女の子、見舞いに行くんだから。花ぐらい買って行けって島さんに言われちゃって」と照れる。シンコ「いくらした?」「負けてくれてさ、一万円」大テレのジーパン。「バラって高いな」「バカねこんなたくさん」

「でも嬉しい、私、こんなにたくさんのバラの花束貰ったの初めて。ありがとう」とシンコ。

 ボスと一緒に出てきたジーパン。「お願いがあるですが」「なんだ?」「五百円貸してください」「五百円」「花、全部使っちゃって、飯食う金ないんすよ」。ボス、ポケットから一万円を出して「月末払いだぞ!」。

 こうしてジーパンのトラウマが克服され、シンコとの恋愛が緩やかにスタートする。小学四年生の僕は、こんなに面白いテレビ映画があるなんて!と毎週金曜日、夜8時、テレビの前に釘付けとなった。


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