ピンチは突然やってくるVOL-8

入社して、最初の夏、ドライブインでの販売をせーちゃんに手伝ってもらった。たしかお盆の間で超忙しい時だったと思う。そんなある日の1日の出来事をお話ししてみたいと思う。
その日は、確か8月のお盆とても忙しい日、朝早く起きて、お店で売る商品をトラックに積んで、場所の違う工場に向かう途中、せーちゃんに新聞の大切さを説明した。特に日本経済新聞。

私「毎日、新聞を読め!世の中のエグゼクティブはそうやって情報を得るんだ。毎日の積み重ねが大切なんだよ」
なんて、わかったようなことを言っていた。もちろん日経新聞を片手にね。せーちゃん「わかったよ!お兄ちゃん!俺日経新聞みてみるよ」
みたいな感じ。まるでバカ兄弟だね。

向かっている工場はとても小さな工場で、玉前というところにあった。そこは実は創業の地。鍵でシャッターを開け、荷物を積んで、シャッターの鍵を閉めた。そして緊急事態は唐突にやってくる。お腹が痛い・・・トイレは建物の外にあった。開けようとしたら、鍵がかかっている。持っていたたくさんの鍵で開けようとするけど、どれも鍵穴に合わない。手が震える・・・鍵穴が合わない。せーちゃんにお腹が痛い旨を伝える。そして、営業車にのり、一度車を走らせる。「コンビニあったっけ?」「しらなーい」みたいな会話がなされ、営業車はバックし、元の位置に戻る。「和田さんの家にいってみたら」和田さんの家は、目の前で、小さな頃からお世話になった。時計を見た。朝の7:00。お盆の朝、7:00はさすが迷惑だ。しかも、お盆できっとご先祖様が家に戻ってきている日にトイレ貸してくれなんて失礼だ。
絶対に、「あれ!としくん?大きくなったね〜どうしたの?多くなっても同じね〜あれ?せーちゃんもいるじゃない!」という会話がなされるのは予想できるし、そんな時間ないのだよ。工場の周りは死角がない。しかも、工場の脇のアパートでは、おばあさんが掃き掃除をしている。営業車を50センチ開けて工場の壁につけた。死角を作ったのだよ。天才だね。機転がきくね。そして・・・大地に向かって、ごめんなさいをした。
せーちゃんは、ゲラゲラ笑っている。私の片手にあるはずの日経新聞は半分の厚さになっていたよ。新聞にはいろいろな用途がある。読んだり、包んだり、燃やしたり、隠したり、拭いたり。そして、ことなき?を得て、営業車に乗り、
せーちゃんが強烈な一言を放つ
「おにいちゃん・・・これってエグゼクティブの仕業だね^^ ^^ ^^ 」

そして、無事にお店に着いた。その日はとても忙しく、朝からたくさんのお客様。夕方少し落ち着いてくると、せーちゃんにその後伝説となる、なだれ陳列を教えた。なだれ陳列とは、なだれのように視覚に訴えるような陳列。房の駅の陳列方法の一つになっていくのだけど、この話はやめておこう。せーちゃんは、発泡スチロールで、イカを作った。焼きイカという商品のディスプレイになった。おそらくせーちゃんが人生で初めて作った販促品だ。そのイカが7年間売場にあったよ。

そして、無事に閉店し、家路に着くことになる。よせばいいのに、せーちゃんに「運転してみるか?」「免許取り立てだし、自信なない〜」「そういうのも、経験だよ」なんて会話がなされ、私は助手席に座る。順調な滑り出し。当時はまだ営業車はマニュアルだった。一速から二速とギアチェンジを教えて、まーまースムーズに。そして、パーキンングエリアが近づいてきた。腹も減ったのでちょっと寄ろうということになる。
せーちゃん「これエンジンブレーキかけるの?ギアひとつづつ落としていくの?」
私「まーいろいろだけど、五速から四速に落としてみな」
せーちゃん「わかったよ。おにいちゃん!」
そして、パーキングエリアに侵入し、ギアチェンジ!その時だ!異変が起きた。ギギ!ガガガガガーーーーガックンなんと五速から二速にギアがはいってしまったのだ。普通はいる?なんかタイミングが合っちゃったんだろうな。私は完全に前のめりになり、状態を起こせない状態が数秒続く、せーちゃんもハンドルに頭がついている。人生の中で、こんなにGがかかったのは最初で最後だ。エンジンが聞いたことのない唸りをあげている。私は叫ぶ「クラッチ!クラッチ!」「うおーーークラッチってなーーーーに?」その瞬間、前のめりの状態から背もたれの方に上体が叩きつけられる。そして、エンスト。外はなんとなく焦げ臭い。後ろに車がいなくてよかったよ。いたら追突されてるよ。こんな時も、2人は大笑いだ。笑いすぎて息ができない。「伝説の急ブレーキ」の話しが出来上がった。

せーちゃんと諏訪商店で合流するまであと5年

そして、ここでの教訓はこうだ!
「ピンチは突然やってくる!ピンチを楽しめ!ピンチは神様からのギフトだよ」

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