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ビジネス現場におけるLEGO® SERIOUS PLAY®(レゴ シリアス プレイ)メソッドと教材を活用したワークショップの有用性や魅力について解説します

約1年前、LEGO® SERIOUS PLAY®(レゴ シリアス プレイ)というメソッドのファシリテータ資格(正式名称:LEGO®︎ SERIOUS PLAY®︎メソッドと教材活用トレーニング修了認定ファシリテータ)を取得しました。

LEGOとは皆さんご存知の “あの” レゴブロックです。これまでもレゴブロックを使ったワークを提供していたことはあったのですが、ビジネスパートナーが当該資格を持っていたこともあり、私自身も本家をしっかりと理解しておいた方がファシリテーションの連携も取りやすいと考えたのがきっかけです。

まだまだLEGO® SERIOUS PLAY®の認知度はそこまで高くないのではないかと思い、その有用性や魅力をできる限りお伝えできればとnoteを書くことにしました。

【本noteの目的】
人事担当(組織開発担当)や現場マネジメント層に向けて
①そもそもLEGO®︎ SERIOUS PLAY®︎がどんなものなのかを知ってもらうこと
②他の手法と何が違うのかを理解してもらうこと
③自組織の問題解決や願望実現に使えそうだと感じてもらうこと

時間の無い方は目次の1.2.を読んでいただければ、要点は押さえられるかと思います。


1.LEGO®︎ SERIOUS PLAY®︎とは何か?

LEGO®︎ SERIOUS PLAY®︎(以降、LSP)とは、組織、チーム、個人のための思考、コミュニケーション、問題解決のためのファシリテーションテクニックです。学習や心理学などの領域における広範な研究成果と「手による知識(hand knowledge)」の概念に基づいて開発されたものです。

リーダーが常に答えを持っている訳ではない中で、成功(目的達成)の鍵となるのは、その場にある全ての声をできる限り聴くことであること。そして、人にはもともと貢献欲求があって、より大きなものの一部になってオーナーシップを持ちたいと考えているという信念に基づいています。

だからこそ、レゴブロックを使い、形作られる作品と対話を通じて、メンバーの内に秘めた声や言葉にならない想いを引き出すことで、全員が100%関わる場を創っていくことを目指します。私たちが生きる世界は複雑ですが、このアプローチであれば適応可能になると考えられています。

LSPメソッドの基礎は、コアプロセスと7つのアプリケーションテクニックで成り立っていますが、ここではコアプロセスをご紹介します。コアプロセスはメソッドの中核で、コンピュータープログラムでいえばソースコードにあたります。コアプロセスには4つのステップがあります。

ステップ1:問いを立てる

分かりきった答えや正解のないチャレンジを参加者に提示する。チャレンジの内容は明快で、参加者にとってすぐに理解されるものでなければならない。

ステップ2:つくる(組み立てる)

参加者は自分の知っていること、想像できることの意味をレゴ部品を使った作品で表現する。そして作品の意味を伝えるためのストーリーを作る。このプロセスを通じて参加者は自分の心に新しい知識を形作ることになる。

ファシリテータ講座で私がが作った作品の一部

ステップ3:共有する(語る)

参加者の間でストーリーを共有する。

ステップ4:振り返る(学ぶ)

ストーリーをしっかりと腹落ちさせるため、参加者は自分が聞いたストーリーやレゴ作品について振り返ることを奨励される。

ワークショップを成功させるには、これらのコアプロセスに従うことが必須とされています。

2.LEGO®︎ SERIOUS PLAY®︎の必要性(なぜLSPを使うのか?)と有効性(なぜLSPを使うとうまくいくのか?)

私たちは自分で自覚している以上に、ものごとについて知っているということと、その全てを言葉にして表現することは簡単ではないということ、そして、私たちは知っていることや想像できることをはっきりと述べることによってのみ、その価値観に沿って行動を起こすことができるということ、こうした考えが「なぜLSPを使うのか?」という問いに対する回答の中核になります。

その上で「なぜLSPを使うと上手くいくのか」については、以下の3点で説明されています。

①「手の知識(hand knowledge)」のパワー

私たちの両手は脳細胞の70~80%に接続されており、その両手全ての神経網の助けにより、ワーキングメモリと呼ばれる部分が一度に処理できる以上のことを「知る」ことができると言われています。

LSPメソッドは人間の創造力に触れ、現状について説明したり、意味を見つけたり、変化や改善を導いたり、さらには全く新しい何かを生み出すことができます。これは「指を使って考える」ユニークなプロセスにより、内観やインスピレーション、イマジネーションを解き放っているからだと言えます。

②会議の場を平等にする

LSPは、人は皆何かユニークなもの、議論や決定、結果に対して貢献できる価値あるものを持っているという信念に基づいています。また仕事において、問題解決に貢献できる可能性を持っているのはその組織のメンバーだけであり、メンバーは組織にとって重要なことに影響を与えたいという自然な欲求を持っています。

その上で旧来の会議のやり方は、必ずしも毎回、それぞれのメンバーに重要な内観を表明する機会が与えられるわけではありません。口頭のみでのディスカッションに依存することで会議の中で「勝者と敗者」が生まれるのを避けることもできませんでした。

LSPでは会議の場を平等にします。100%の他者への注意と、100%の各自の参加を得ることができ、全てのメンバーのユニークな知見や想像力を会議の中で浮かび上がらせることが可能になります。

メンバー全員のステークホルダーをランドスケープ的に表現

③効率的な意思決定

LSPのプロセスを使うことはとても効率が上がる方法です。内観が突然に、仕事と行動の選択に影響を与えはじめ、決定事項の実行は自然に始まり、責任所在を示す複雑なガントチャートも不要になります。

LSPプロセスは意思決定の感情的な要素を浮かび上がらせます。最近の研究によると個人の意思決定において常に感情が重要な役割を果たすことがわかっています。

3.私が思うLSPの特徴

ここまでは自分が認定ファシリテータになるための講座の中で説明を受けた内容となりますが、ここからは個人的な印象や感想もまとめておこうと思います。

①確立されたメソッド

LSPのすべてのワークでは、既に説明したコアプロセスに加えて、7つのアプリケーションテクニックの1つまたは複数を使用することになっています。この一つ一つの説明は割愛しますが、このベースがあるからこそ、過度に属人的にならず、また複雑な問題も扱えるようになるのだと実感しました。

またマニュアルがかなり充実していて、プロセスのファシリテーションについてもヒントや気を付けるべきポイントなどが詳細に記載されていました。基本的に場は生き物で絶対解があるものではないので、あくまでガイドライン的な位置づけではありますが、立ち返る拠り所のような存在があるのは心強く感じました。

②汎用性の高さ

正直なところ、思っていた以上に汎用性が高いものだと知りました。ビジョン策定やチームビルディングに使うイメージは当初より持っていましたが、それに加えて問題解決や戦略策定(一般的にイメージする戦略とは違いますが)、またヒアリングのツールとしても使えます(ヒアリングした内容をレゴブロックを使って可視化していく)。

これを為し得るのは、一つは開発元および提供者がレゴの特性を知り尽くしているという点だと思います。レゴブロック自体は本当に色々なブロックや部品があるので、表現しようと思えばいくらでも表現できそうだと思いつつ、いざ参加者としてブロックを組み立てていくと「こういう表現したいんだけど、うまくできない」という場面にも出くわします。

その時にもファシリテータが「この部品はこんな風にも使えるから、これ使うと表現できるのでは?」みたいなサポートに入ってくれました。この辺りは自分がファシリテータをする時には圧倒的に経験値が足りないので、研鑽していく必要性を感じました。

加えて、ストーリーメイキングおよびメタファーを効果的に活用していることも大きいのではないかと感じます。自分で創り上げた作品を、メタファーを使ってストーリーで伝えていくことで、より能動的に、柔軟に、適切に、自分たちの考えや感情を表出させることができるのだと思います。

チームとしての指針を表現

③参加者を選ばない(誰でも楽しみながらやれる)

これもレゴブロックならではだと感じたことです。シリアスプレイという名のとおり、真剣な遊びというか、遊びと学びの融合が自然発生的に生まれるので、世代や属性、上下関係を超えて、のめり込んで参加できるのが他のワークショップとの大きな違いだなと感じます。

事実、LSPのプロセスは、フローモデルが説明するような深い達成感を味わいつつ、実際の変化と長期学習が起こるように意図的に設計されているようです。

私自身もワークショップに参加する中で、最初はレゴブロックを久しぶりに触ったことやそもそも「モノを作る」ことに苦手意識もあって、難しい/難しそうという印象を持ちながら参加していたものの、徐々に難易度が上がる(これは作るものの難易度を上げるというよりかは、扱う問題が複雑になっていくので、その分表現するのが難しくなるイメージ)ので、いい感じでストレッチが効いて、気がつけば制作時間は夢中で取り組んでいたような気がします。

何より、私が参加した場はファシリテータになるための講座だったので、LSPに興味があるという共通点はありながらも、同じ組織メンバーなどでは全くないので、それこそ性別、年齢、所属、職業(学生もいました)など属性はバラバラでしたが、自分たちの価値観を共有しながら、一つの作品にしていく中で数日で相互理解も深まっていったように思います。

「信頼」についての共通認識

4.締め

このようにLEGO® SERIOUS PLAY®には他のワークショップにはない効果や魅力があります。この手法が絶対とは思いませんが、組織運営において有効な手段の一つになることは間違いないと確信しています。

最後に、私がLSP認定ファシリテータになった時に抱いた感想がFacebookに残っていましたので、その内容を記載して本noteの締めにしたいと思います。

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自分が思っていた以上に、
LEGOの特徴をうまく活かしたメソッドとして磨き込まれていました。

うまい・へたは関係なくて、
自分の思ったことを形にしてみる。
全く思いつかなくともまずは手を動かしてみる。

そこで形作られる作品を大事に、
作品に立ち返り、対話することで深まっていく。

誰しも全てを言語化できない中で、
潜在的なものを引き出す有効な手段だと感じました。

意図を持って作ったものを語るだけではなく、
何となく手に取って、
何となく繋げただけのものを見返して、

なぜその色?
なぜその部品?
なぜそこに付けた?
みたいなことを後付けでも語ってみると、
意外な意味が見えてきたりするのが面白かったです。

100%の人(全員)が100%関わる場を作る。
共通項の抽出ではなく、あくまで共有することで
全員がコミットできる状態を実現する。

そんなふうに組織をNext Levelへ導く強力なツールを得たように思います。


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