見出し画像

【読書メモ】『人事こそ最強の経営戦略─日本型・グローバル人事の教科書』(南和気, 2018)

こちらの本を読了しました。

タイトルは『人事こそ最強の経営戦略』とありますが、人事と経営戦略の接続を扱った書籍と言うより、副題にある通りグローバル人事についての書籍となります。

グローバル人事の本書における定義は以下です。

「グローバル人事」とは、事業のグローバル化に伴う「人材の多様化」「人材需給のグローバル化」「人材の流動化」という人材の変化に対応すること

『人事こそ最強の経営戦略─日本型・グローバル人事の教科書』(南和気, 2018)

実務でグローバル人事を扱ったことはないですが、今後扱う可能性もあるため、備忘録的にまとめます。


3つのグローバル人事のモデル

海外で事業展開している企業には、組織形態や事業の状況や特性、グローバル展開の方向性などにより、大きく分けて「セントラル人事」「マルチナショナル人事」「インターナショナル人事」という三つのグローバル人事の段階があります。

『人事こそ最強の経営戦略─日本型・グローバル人事の教科書』(南和気, 2018)

セントラル人事は、本国、本社の人材を海外でも活躍できるよう育成して海外の支社や現地法人に派遣し、主に現地企業との合併や協業によってマーケットに食い込み、現地のニーズに応えた製品、サービスを提供していく、といったモデルです。

『人事こそ最強の経営戦略─日本型・グローバル人事の教科書』(南和気, 2018)

マルチナショナル人事は、今、多くの日本企業が目指しているグローバル人事のモデルです。現地のマーケットに対して最適な製品やサービスを提供するため、現地法人の社員はもちろん、トップにも現地で採用、育成した人材を登用し、必要な権限も委譲し、経営のほとんどを現地に任せる形です。

『人事こそ最強の経営戦略─日本型・グローバル人事の教科書』(南和気, 2018)

インターナショナル人事は、一部のグローバル企業だけが実現しているグローバル人事のモデルです。GEやP&G、武田薬品工業などがこのモデルを採用しています。(中略)国や地域を越え、グローバルに人事施策を行う必要がある場合はインターナショナル人事となります。

『人事こそ最強の経営戦略─日本型・グローバル人事の教科書』(南和気, 2018)

ちなみに本書の解説を早稲田大学ビジネススクールの入山先生が巻末に書かれていますが、上記3つのグローバル人事のモデルは経営学における「IRフレームワーク」と親和性が高いとのことでした。

日本の人事が変えるべき3つのポイント

筆者によると日本企業がグローバル人事に挑戦する際には、変えるべきポイントとして
①結果人事→計画人事
②主観人事→客観人事
③密室人事→透明人事
が挙げられています。

・結果人事→計画人事
日本企業の人材育成システムは、基本的に年次管理で、同期が横並びで上がっていき、長い時間をかけ、一定の年齢になったときに結果的にリーダーらしい人が育つのを待つ、というシステムです。
しかし、そうしたやり方では、事業戦略に合わせてその戦略実行に必要な若手リーダー人材を選抜して育成する、といったことができません。
グローバル人事では、目指すべき人材の配置計画に基づいて、必要な価値に合った人材の育成を計画的に行う必要があります。特にグローバルで活躍できるリーダーを育てるには、若いころから様々な経験を意図的にさせて、育成や人材配置を行わなくてはなりません。

『人事こそ最強の経営戦略─日本型・グローバル人事の教科書』(南和気, 2018)

・主観人事→客観人事
日本企業では、上司や組織の主観による人材評価が重んじられている傾向がまだまだ強く、上司との相性や上司の見方によって評価の違いが出やすいところがあります。
しかし、グローバル人事の場合は、様々な国や地域の多種多様な人材を評価するため、客観的な共通指標に基づいた評価を行う必要があります。

『人事こそ最強の経営戦略─日本型・グローバル人事の教科書』(南和気, 2018)

・密室人事→透明人事
日本企業では、多くの場合、人事異動は密室で決められます。(中略)
しかしグローバル人事においては、人事異動を密室で決め、決定についての説明もなく辞令を出すなどということはありえません。

『人事こそ最強の経営戦略─日本型・グローバル人事の教科書』(南和気, 2018)

グローバル人事とはなにをすることなのか

実際にグローバル人事を始めるためには、いったいなにをするべきなのでしょうか。課題は大きく3つあります。
①人材の需給をグローバルで把握すること・・・・・・経営と人事の一体化
②計画的に人材を育成すること・・・・・・事業戦略のブレを人材戦力で埋める
③グローバルで人材を組織として機能させること・・・・・・組織開発・組織活性化

『人事こそ最強の経営戦略─日本型・グローバル人事の教科書』(南和気, 2018)

①人材の需給をグローバルで把握すること・・・・・・経営と人事の一体化
グローバル人事を進めていくうえで最初にやるべきことが、人材の需給をグローバルに見ていくことです。

『人事こそ最強の経営戦略─日本型・グローバル人事の教科書』(南和気, 2018)

②計画的に人材を育成すること・・・・・・事業戦略のブレを人材戦力で埋める
事業計画を推進するための人材ニーズをグローバルに把握したら、次は今どんな人材がどこにいるのかを把握し、ニーズに合わせて人材を供給できるよう、将来に向けて計画的に採用、育成、配置をしていきます。数年後のあるべき姿を目指して、どのように人を配置していきたいのか、どういった人員構成にしたいのか、どういう人を育てるべきなのか、といったことを定義し、それに向けて候補者たちに計画的に経験を積ませ、能力を高められるように育成していくのです。

『人事こそ最強の経営戦略─日本型・グローバル人事の教科書』(南和気, 2018)

③グローバルで人材を組織として機能させること・・・・・・組織開発・組織活性化
(中略)最終的には、たった一人のリーダーに依存するのではなく、価値観や理念がしっかりと全社員に共有されていて、ルールで縛る必要もなく、またはリーダーが全部監視する必要もなく、それぞれが組織内で役割を持ち、リーダーシップをもって働いていける─そういったエンゲージメントの強い組織こそが、組織として一番成熟している状態、つまり第三段階の組織といえます。

『人事こそ最強の経営戦略─日本型・グローバル人事の教科書』(南和気, 2018)

最後に

今更ここで書くことでもないですが、少子高齢化問題を抱える日本市場の長期的な見通しは芳しくなく、多くの日本企業がグローバルに活路を見いだしています。人事はどう対応すべきなのか、本書からは多くの学びがありました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?