ビジネスマンに勧める資産形成(株式投資)③~キャリア戦略に資産形成が有効な理由~

今回は「資産形成の本質」について考えてみます。

(↑は当日のPPTスライド)

資産形成とは何か?それは一言で言えば自己防衛の「手段」であるというのが自分の考えです。つまり、手段であって「目的」ではありませんので、大きく勝つ必要がありません。大きく勝つ必要があるのは、投資を生業とするVCの社員やファンドマネージャー、或いは専業の個人投資家などです。こういう人たちは比較的短い期間で成果を出す必要がありますから、どうしても市場をアウトパフォームすることを目指し、大きく勝とうとするインセンティブが働きます。

しかし、一般の個人投資家は資産形成以外に本業を持っています。まずは本業ありきで、資産形成は二の次であるべきというのが自分の考え方です。ウォーレン・バフェットも主張しているように、最高の投資は自己投資だと思います。まずは本業の腕を磨き込み、どこに出ても通用する職業能力を高めることを優先すべきだと思います。

要するに、一般のビジネスマンにとっては、資産形成は本業を補完する位置付けですから、資産形成の目的は大勝(おおがち)というよりも、本業に不測の事態が起こった時のバッファーやセーフティネットだと考えるべきです。ですから、焦らず、時間をかけて、ゆっくり増やしていくことが正しい方向性です。

また、資産形成に取組むからといって、勤めている会社(またはその仕事)を無理に辞める必要はありません。その会社なり仕事が好きで続けたいなら、無理に転職する必要はないわけですが、現実には、転職したいのに止む無く(他に拾ってくれるところがないので)残っている人が多い印象があります。資産形成は特にこういうタイプの人に有効であり、日本ではキャリア戦略において最も見落とされている視点だと思います。

日本にはいま、個人の金融資産が2,042兆円存在します。このうち、現預金が1,106兆円と半分強を占めています。現預金に占める引退後のシニア層の割合は高いと思いますが、そのシニア層も多くはビジネスマンでした。

例えば、自分の前職の大手総合商社では証券口座すら開いていない同僚が大勢いました。日本における資本主義の牙城とも言える総合商社のエリートですら、この状況です。況や、その他多くのサラリーマンは投資など考えたこともないでしょう。この様に、日本のサラリーマンが「自己防衛」について殆ど何も考えてこなかった結果が、今の膨大な現預金の積み上げとして表れており、また労働市場における低流動性につながっていると言えます。

次回は「株式投資から得られるその他の効用」について考えてみます。

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