読書メモ~日経サイエンス 究極の黒~
どれだけ「濃い黒」を作れるか?これは一つのチャレンジになっている。例えば光の測定をするときには散乱を防いだり、迷光を防ぐために黒く塗装しておく必要がある。熱の測定でも同様であるため、「黒」は工学的にも重要テーマとなっている。ところで炭は黒色の代表格であるが、究極の黒を達成するためにもやはり「炭素」は欠かせない。
カーボンナノチューブとは??
今まで究極の黒を達成している素材は「カーボンナノチューブ」である。カーボンナノチューブは日本のNECの飯島澄男が1991年に発見した素材である。そして2008年にはライス大学のチームがカーボンナノチューブを基板に垂直に並べる事で究極の黒色素材になる事を発見した。
なぜ、カーボンナノチューブを並べると黒に近づくのか?
これはカーボンナノチューブが「疎」に並んでいる事がキーポイントであると言われている。
疎であるため、空気とカーボンナノチューブの間の境界が曖昧になっている。即ち「屈折率の変化」がなだらかであり鏡面反射が起こらない。
加えて光が基板の奥の方に入っていくときにカーボンナノチューブの間を反射しながら進んでいくことで実質的な光路長が長くなり吸収され易くなる。
この2点の事からカーボンナノチューブを基板に並べた素材が強い吸収を持つ素材となる。
吸収率の推移
2008年 ライス大学のチームがカーボンナノチューブを並べて黒色を実現
2014年 99.96% イギリスのサリーナノシステムズ
2019年 99.995% アメリカのMIT