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読書メモ~日経サイエンス2021年1月 ビッグバンを遂げた宇宙像より~

今回は日経サイエンス2021年1月から宇宙の歴史についてです。2021年1月号はScientific Americanの175周年記念ということで、科学観の変遷を取り扱っています。今回はその中で太陽の理解がどのように変わってきたのか、どんな観測理論がそれを後押ししたのかを見ていきたいと思います。

星や太陽はなぜ光るのか??

1800年代後半頃から「恒星はどのように光っているのか」に対する研究が進むようになりました。1860年にキルヒホッフは分光学の方法を用いて太陽の構成元素を調べ、彼はNa、Fe、Mg、Caが含まれている事を突き止めました。当時は月より遠い天体は地球上とは異なった物質で構成されているいうアリストテレスの考え方が支配的でした。キルヒホッフは太陽が地球上と同じ元素から成り立っているという事を実験的手法から明らかにしました。

さて太陽の構成元素が分かった次は「恒星はどんなエネルギーを使っているのか」について調べたのがケルビンです。

1908年ケルビンは理論の手法によってこの問題に挑みました。ケルビンは恒星のエネルギーとして重力エネルギーに注目しました。太陽が発光する度に少しずつ小さくなると言う理論ですが、この計算で得られる太陽の寿命は2000万年程度です。地質学の研究からは地球の年齢が40億年という事がすでに分かっていたので、太陽の年齢が2000万年というのは余りにも短い時間です。

ケルビンは最後に「天地創造の倉庫に何か他のエネルギー源がしまい込まれているのでない限り」自分の推定値を貫くと書き残しています。ケルビン自体は太陽がどんなエネルギーを使っているかに対する謎を解けませんでしたが、「新しい物理学が必要」という事を示しました。

1925年にペイン=ガポーシュキンは太陽を含む恒星の光スペクトルを分析し、主に水素とヘリウムからから成り立っていることを発見しました。キルヒホッフの実験では「含まれる元素」が分かっただけでしたが、彼女の研究で「恒星の構成元素比率」が明らかになりました。

1935年にベーテは標準的な恒星のエネルギーが水素原子核からヘリウム原子への核融合である事を理論的に示しました。ケルビンの研究からおよそ30年、ついに恒星の発光エネルギーが核融合であることが明らかになりました。

このように見ていくとギリシャ時代の「地上とは異なる何か」から始まり、実験的な手法を通して元素を明らかにして、最後に理論で理屈を考えるというプロセスで発展してきた事が分かります。科学で良く見られる「まずは実験結果が先行し、理論が後から追い付いてくる」というパターンです。


↓日経サイエンス以外で参考にした文献です。

http://www.wattandedison.com/Tanimura-ocu1.pdf



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