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第4期絵本探求講座(ミッキー絵本ゼミ) 第1回ふりかえり

2023.9.10 PM13:00~オンライン受講


第4期の絵本探求講座がはじまりました。

通称ミッキー絵本ゼミ!
第1期より始まって絵本についていろいろな側面から学んでいます。
今回のテーマは1・絵本の絵を読み解く
       2・翻訳
絵本は絵とテキストでできている。
絵はお話しを語っている。
時にお話しがより面白くなるような伏線が描かれていたりして
じっくり見れば見るほど面白い。
この面白さには理由があった!理由を知ることができたのは
 第1期の講座で紹介された『絵本の絵を読む』だった。
ジェーン・ドゥーナン 玉置友子・灰島かり・川端有子/訳
玉川大学出版部 2013.3

第4期のテーマは絵本の絵を読み解く!そして翻訳!
第4期の講座を受けることで、絵本の魅力を取り残すことなく読むことができるようになるだろうと思う。
そして、誰かに絵本を手わすときに、お話しだけを読むだけでないこの絵本の魅力、推し部分を伝えることができるようになっていれば・・・と願う。

自己紹介の翻訳本

ミッキー絵本ゼミの初回、皆さんへ自己紹介を兼ねての1冊を用意してきた。
今期、所属するのはチーム6
紹介された絵本とその理由を伺うことで、垣間見られる為人。
いつも絵本はすごいと感じる。

チーム6紹介本

  • FA ていあいさん『星の使者』 
          ピーター・シス/絵・文 原田勝/訳 徳間書店  1997.05
    *3期のグループ発表で探求したピーター・シスに魅入られて購入した絵本

  • めめさん『こすずめのぼうけん』
    ルース・エインズワース/作 石井桃子/訳 堀内誠一/絵 福音館書店 1977.04
    *心の中に心地よく響いている語りの言葉が残っている絵本

  • あっけちゃん 『わたしとなかよし』
    ナンシー・カールソン/作・絵 なかがわちひろ/訳 瑞雲舎 2007.03
    *自身をそっと支えてくれる、いつも側に置いている大切な絵本

  • かのんさん 『わすれられない おくりもの』
    スーバン・バーレイ/作・絵 小川仁央/訳 評論社 1980.10

  • じゅんじゅん 『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』
    バージニア・リー・バートン/文・絵 むらおかはなこ/訳 福音館書店 1961.08
    *次男さんが図書館で何度も借りて読み、そして初めて欲しいと言った絵本

  • あきこさん 『

『こねこのぴっち』

私の1冊『こねこのぴっち』

ハンス・フィシャー/文・絵 いしいももこ/訳 岩波書店 1987.11


海外の絵本で私が紹介したいのは『こねこのピッチ』である。
小学校の図書室で出会い何度も繰り返し読んだ1冊だ。当時は岩波の子どもの本シリーズで小型版だった。大型絵本として新たに出会った時のピッチの可愛いらしさは忘れられない。家の飼い猫にそっくりだったこともあり一目ぼれした絵本だった。

りぜっとおばさんの家で産まれた5ひきのこねこ。いちばんちいさくておとなしこねこがぴっちでした。ぴっちは他のきょうだいたちと同じようないたずらはしませんでした。おんどりのようにやぎのようにあひるのようになりたかったのです。いろいろな動物に憧れ共に過ごしてみるうちにぴっちは自分は自分のままがいいと感じたのでした。

『こねこのぴっち』

絵本を購入したのは高校生の頃だったと思う。当時、保育科の学生で絵本の読み聞かせを学んだのである。はじめのての保育実習で無謀にも『こねこのぴっち』を読もうと計画したのだが、保育実習生が初めて子どもの前で読むには難しいのではないか?と計画の段階で教科の先生に却下されたのだが、声に出して読んでみると、意外に読みやすかった記憶がある。当時は翻訳者のことなど考えてもいなかったのだが、改めて書誌情報を確認すると翻訳者は石井桃子であった。
絵本探求ゼミの講師、竹内美紀先生の著書に『石井桃子の翻訳はなぜ子どもをひきつけるのか 「声」を訳す文体のひみつ』がある。タイトルの
ー「声」を訳す文体のひみつーの文言に『こねこのぴっち』の読みやすさのひみつに触れたような気がする。
著書の中に石井桃子の翻訳にを研究する意味としてこのように語られている。

わかりやすいことばで、目にみえるように生き生きと綴られる訳文は、つねに子どもと共に読む事を意識した結果であろう。声に出して読みやすく、耳で聴いて美しいその訳文は、そのころから次第に全国に広がった家庭文庫や公共図書館で読み聞かせをする現場の人々から大きな信頼と支持を得る
『図説 子どもの本・翻訳の歩み事典』(福本 2002:91)

『石井桃子の翻訳ななぜ子どもをひきつけるのか 「声を訳す」文体のひみつ』p2

石井桃子の訳はこどもと共に声に出して読み楽しむことを前提として訳されているから読みやすく、耳ざわりがとてもよいのだ。これは石井桃子自身が素話(ストーリテリング)を行っていることにも関係してくるのであろうか。『こねこのぴっち』は絵本であるが、お話しを耳で聴くだけでも、短いセンテンスで情景を語っているので場面を思い描くことができる。まるで素話を聞いているようだ。

翻訳本を考える

『ぼちぼちぼちぼちいこか』

仕事柄、外国文学を購入する時に気になるのは翻訳された文章である。
生徒たちが読み理解しやすく共感できるのはどの文体だろうか?と読み比べをしてから購入するようにしている。
では、絵本で翻訳を意識したことはあったのだろうかと考えてみた。
贈る言葉として励ます言葉としてはじまりの言葉として小学校でも中学校でも人気の絵本。
関西弁が楽しく衝撃的だったのが、『ぼちぼちいこか』 マイク・セイラー/文 ロバート・グロスマン/絵 今江祥智/訳 偕成社 1980.06である。
ぼく〇〇になれるやろか? の問いかけと なれへんかったわ・・の答えが繰り返されるお話しである。
原作本の言葉のやりとりはとてもシンプルだった。
なってみたい職業を声にする。そしてNOの繰り返しである。
しかし、絵をみれば、NO.に続く色々な言葉を想像することができそうだ。
今回の講義で、子どもの絵の見かたは大人と違うことを学んだ。物語の本質とは関係ないと思われる細部もみるということだった。絵を見ることでNOのことばがそれぞれ違い面白い発見もありそうだ。
翻訳された『ぼちぼちいこか』は今江祥智さんが訳をされていて、関西弁のかばが描き出す世界観を作っている。NOのバリエーションも豊かで楽しいが、ことばのインパクトが強いことで自分でNOを考える楽しさは減ってしまったのではないだろうか?『英語でよめる ぼちぼちいこか』が出版され、手軽に原作(英語版)を読むことができるので、ぜひ読んでNOを考えて楽しんでほしいと思う。

 『WHAT CAN A HIPPOPOTAMUS BE?』 『ぼちぼちいこか』
A ballet dancer?      No.   → バレリーナはなのよう・・・
A  piano player?     No.   →はなしにも なれへんかったわ

『英語でもよめる ぼちぼちいこか』p10.11.12.13

『ブレーメンのおんがくたい』

読み聞かせを行うときに同じタイトルの本で迷うのが昔ばなしだ。
日本の昔ばなしでは再話として、外国の昔話は翻訳された方で言葉が違っているからである。ここで、
訳者は誰なのだろう?
この訳者の特徴はあるのだろうか?
原文はどうなっていたのだろうか?と考えて選んだことは一度もなかったと記憶している。

・読む年齢に理解しやすい言葉で表現されているか?
・お話しに忠実であるか? 
・絵はお話しを表現できているか?
・声に出して読みやすいか?

講義で「声」の3つの側面を学んだ
1・音読の声
2・声の文化
3・作品の声を聞く

テクストの文章の響きに耳を澄ませれば、訳文のあり方というのは自然に決まってくる。(村上)
講義で紹介された参考文献は『翻訳夜話』 村上春樹・柴田元幸/著 文藝春秋 2000.10
絵本を選ぶとき気にかけていたのは「作品の声を聞く」ことだったのだと腑に落ちた。
保育士時代に年齢によって読み分けていた絵本に『ブレーメンのおんがくたい』がある。

年老いて弱った4匹の動物たちが力を合わせてどろぼうをやっつけ、新しくおんがくたいとして仲良く暮らす。4匹の動物は、にわとり・ろば・いぬ・ねこ・身近な動物が多く泥棒と対決するドキドキ感も子どもたちがわくわくするお話しだ。

ハンス・フイッシャーが描く福音館書店の世界傑作シリーズの1冊『ブレーメンのおんがくたい』はどろぼうたちをやっつける場面が印象的だ。
暗い夜の森で4匹が重なり大きな化け物に変身している様子を絵だけで表現しているページがあり、子どもたちが息をのみドキドキする場面であった。
この絵本は瀬田貞二さんは翻訳をされている。
どんな動物であるか、今どのような状況であるのか、飼い主の気持ちは…が丁寧に訳されていて悲しさと飼い主への憤りも感じる。
しかし、小さな子どもには難しい表現もあり4歳以上で読むことが多かった。

ハンス・フィシャー/絵 せたていじ/訳 福音館書店 1964.04


ところが偕成社から出ている『ブレーメンのおんがくたい』はシンプルである。シンプルであるが、なぜにわとりたちがブレーメンを目指すようになったのかは伝わってくる。文章のセンテンスも短く、読みやすく聞きやすいように感じていた。絵も、クレパスの柔らかいく明るい色合いが3,4歳児にも楽しめるのではと村岡花子訳の『ブレーメンのおんがくたい』を読むことが多かった。しかし奥付けには村岡花子/文と記されているのが気になる。瀬田貞二訳と比べてみると省略されている部分も多くあるので、訳ではなく文なのであろうか?

グリム/作 村岡花子/文 中谷千代子/絵 偕成社 1967年11月初版 2006年10月改定1刷

入手できず確認できていないのだが、2007年10月に発行された『ブレーメンの音楽隊』グリム/原作 リスベート・ツヴェルガー/絵 池田香代子/訳 2007.05 はとても綺麗な絵で大人のための絵本と定評がある。
2015年10月にBL出版発行された『ブレーメンのおんがくたい グリムどうわより』ゲルダ・ミューラー/作 ふじみみさを/絵 BL出版
こちらも絵がとても綺麗なのが特徴であるが、現在は流通してないのが残念である。

まとめ

3冊の『ブレーメンのおんがくたい』は、竹内先生が言われていた翻訳本を選ぶときに大切なこと。
・本の世界にあっているか
・読み手にあっているか
・聴き手にあっているか を考えながら読み比べるようにした。
ハンス・フィシャーの『ブレーメンのおんがくたい』が好きなのだが、村岡花子訳の『ブレーメンのおんがくたい』を読む機会が多かったのは、村岡花子訳が私という読み手にあっていたのだと感じた。




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