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単年度財政均衡主義は時代遅れだ!

入るを量りて出ずるを制す」とは中国古典の礼記にある、国の予算を決めるための心得である。

 現在でも、国家の予算編成では、収入を正確に計算してからそれに応じた支出計画を立てる。

 しかし、日本の政府予算を見れば、すでにそのような単年度財政均衡主義が破綻していることが明確である。

 国の予算では、税金収入以上に支出が大きい状態が、当たり前に続いている。

 現在の日本では、予算ベースで見ると、税金で賄える支出は60%程度である。なお、日本独特の国債の60年償還ルールを考えなければ、税金で賄える支出は70%程度となる。

 令和4年度の予算における歳入と歳出の規模は107.6兆円である。

 歳入予算では、公債金(国債)による収入が36,9兆円(34.3%)、税金による収入が65.2兆円(60.6%)、その他の収入が5.4兆円(5.1%)となっている。

 公債金では、建設公債が6.2兆円(5.8%)であり、特例公債(赤字国債)が30.7(28.5%)兆円となる。赤字国債が収入不足部分を補っている。

 歳出予算では、国債の償還や利払いを含む国債費が24.3兆円(22.6%)、社会保障関係が36.3兆円(33.7%)、地方交付税を含むその他の支出が47兆円(43.7%)となっている。

 国債費では、償還額が16.1兆円であり、利払いが8.2兆円となる。

 2022年11月の第2次補正予算案では、3.1兆円の税収増加を見込み、新規国債発行額を22.9兆円に減額修正している。

 すなわち、税金収入の増加が見込めたので、赤字国債を20.4兆円、また、建設国債を2.5兆円に修正したのである。

 なお、2023年7月の日経では、税収の実績は71兆円であり、予算より6兆円ほど大きく上回ったことが報道された。

 第2次補正予算ベースでは、赤字国債20.4兆円が国債残高を増加させ、公債費の内、国債償還額部分が、国債残高を減少させる。

 国債償還が第1次予算における予算通りに行われたとすると、2022年度には国債債残高が4.3兆円(20.4-16.1)増加している。

 国際的な標準ルールでは国債償還は随時になされるのであり、日本のように60年で償還するというようなルールはない。

 60年償還ルールを廃止すれば、2022年度予算ベースで、国債償還額16.1兆円分の新規国債発行が抑えられる。

 そのため、歳出は91.5兆円(107.6-16.1)となり、歳入における国債発行額は20.8兆円(36,9-16.1)で済むことになる。

 単年度財政収支均衡は理想ではあるが、近代国家では、国家を防衛し、また、文明的な国民生活を維持させるために、年度単位では税金だけで歳出全額をカバーすることはできない。

  すなわち、国家維持のための様々なシステムが必要となり、また、国家を維持するためのコストも上がっている。

 また、国家維持のためのシステム構築には年度を超えて数年度以上の期間が必要となり、また、いったんシステムが完成すれば、長期間にわたって利用や活用が可能となる。

 もはや、国家は、年度で収支均衡を考えるような時代ではなくなっている。

 この現実を直視すべきである。

 近代国家経営は、単式簿記の大福帳によるのではなく、複式簿記による、国民国家の、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の、財務三表を用いた経営が必要なのである。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA030WU0T00C23A7000000/

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