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タクさんとの1日。

令和4年1月20日ゼロ円ハウス115日目。

朝起きて、ゴミ捨てに行く。ご飯を作って食べて買い物に行ったりしながら午前を過ごす。午後から、タクさんがゼロ円ハウスに来られる。いつも自分の日記を読んでくれていて、感想も定期的にメッセージでくださる。自分の日記を読んでくれている人と会うのはなんか不思議な感じだ。

午前の用事を済ませてタクさんを待つ。

そしてバイクに乗ってタクさんが姿を現した。初対面なのでFacebookの写真しか、勿論見たことが無い。その写真からなるイメージとは結構違った。まず背が想像よりも大きい。恐らく自分より大きい(自分は178cm)そして体格も良かった。もっと線が細いイメージだったから真逆だった。ハキハキとした話し方とレスポンスの早さ。会話ってキャッチボールだよねと感じさせるテンポの良さ。話上手で聞き上手を体現しているような人に感じた。因みにタクさんから見ての自分はこれまたイメージとは違ったらしい笑 自分と似たことを言っていた気がする。思ったよりも背が大きく、そして声が想像よりも低かったらしい笑 タクさんの中では少年に近いようなイメージだったようだ。なので最初、声をかけた時には自分だと思わなかったらしい。まぁ写真なんてそんなもんだよなって思った。

中に招いてソファーに座って長いこと話し込んだ。

タクさんの事をそう言えば全く知らないなと当たり前の事を思った。まぁタクさんから見た自分もそうだと思うけど。自分は自分でめちゃくちゃタクさんに話しました。それは割愛します。

タクさんは保育園の年中は不登校だったようで年長から行き出した。だけど保育園が好きではなくて、年長から行き始めてもやっぱり嫌いだなと自覚だけする日々が続いていた。ある時、将来の夢を絵で描いてみようという、いつも以上にタクさんの気持ちが上がらない日があった。夢についてこと、絵を描くことが嫌いなタクさんはダブルパンチを受けていた。周りのみんなは将来の夢を楽しそうに書いている。お花に囲まれてる自身を描いて、お花屋さん。ボールを蹴っている姿を描いて、サッカー選手。みたいに、自分自身を描いてその周りを夢に関連する何かを描くのが主流なようだ。タクさんは自身でカメレオンだと言っていた。やりたいこととか特に無かったから周りに合わせて、ここではこれが求められてるらしいとかその形に染まる傾向があったようだ。なので自身で選択したと言う感覚は割りと希薄だったのだと思う。そんなタクさんは夢を絵で描いてみましょうの地獄の時間をどう切り抜けたのだろうか。

まずは丸を描いてみたらしい。そしてそれを茶色で描いた。丸と呼ぶにはイビツな程にボコボコになった。どうするかと思っていると、1人の子が「コロッケ?」って言ってきた。タクさんは、そうそう!コロッケ!って同調した。しかし夢を描けと言われてる時間であり、コロッケを描く時間では無い事に我に返って、再度描き直す。次になんとなしに描いた物が「ドロボー?」って言われため、そうそう!ドロボー!って事にして、単純な色で描けるパトカーを思い付き、それを警察官が夢と言う1つの形を作り上げた。そしてそれがタクさんにとって意外な結果をもたらす。褒められたのだ。素晴らしいと。良い職業じゃないかと。タクさんはそれが褒められる事であることを知った。

そして時は進み、高校生。進路を決める時期に差し掛かる。タクさんはもう、学校と言う物が続くことが耐えられないと思っていたので進学は考えていなかった。授業中はじっとしていなきゃダメらしいなどの、そうでなきゃダメらしいと言う環境に我慢を重ねていた。そこで先生から勧められる物は...就職だった。何で二者択一なんだよという思いを抱きつつ、何にも興味が無いタクさんはとりあえず求人の中の1番お金が貰える求人を選んで応募した。そこで高校卒業後に働くことになる。そこは自動車工場だった。自分は知らなかったのだが車は物凄いペースで作られているらしい。タクさんが働いていた当時は1分に1台作られていた。それに合わせて各々のパーツもとんでもないペースで作られる。タクさんはすぐに辞めようとしたが会社がアレコレ言い訳して有耶無耶し続けて、結果的に3年勤務した。タクさんの後に入ってきた後輩がメンタルを壊したりとかタクさんの同期もどんどんメンタルを壊していく。そんな中でタクさんは3年を勤めあげた。

辞めたら音楽やるぞと意気込んでいたので仕事を辞めて夢の音楽ライフに突入する。新たなバンドを作ったりとか自転車で近所を走り回ったりとかの解放感に満ちた日々を過ごした。

ある時、お姉さんに1つの動画を観せられた。それは珍しい組み合わせのバンドの動画だった。ベース、ドラム、和太鼓、笛。(うろ覚え)その動画を何気なく観たタクさんはそのかっこ良さに牽かれた。後日、近所の和太鼓サークルみたいな所へ体験に行く。タクさんは音楽に精通してるのでリズムを刻むのは難なく出来た。太鼓を叩いてもリズムを刻めたので褒められて、試しに笛もと言われてやったら音が出た。笛の音を出すのが難しいようで、1発で出したタクさんをサークルのおばちゃんは気に入って笛を貸した。

そこから自転車を乗り回して、川沿いで笛の練習の日々。そんな日々を送っていると、やはりニートということなのかは分からないが近所でも噂になっていると親から指摘を受けた。

そしてタクさんはある映画の影響でスポーツジムで働くことになる。その映画の主人公がスポーツジムで勤めているのだが会員に混じって楽しそうにトレーニングする描写があって、それに感化されて応募した。結果的にそんな映画みたいな事はなく、基本的には会員さんを見守る時間が続く。だけど自動車工場に比べたら、見守るだけでお金を貰える事の天国さを感じていた。

そんな日々を過ごすなかでタクさんに1本の電話が入る。笛のヤマダさんですか?と。まぁハイ。ぐらいの感じだったのだがそれはタクさんが影響を受けた動画の集団の人達に繋がる物だった。どうやらその人達の中の笛の人の都合がつかないらしく、一緒に活動しないかと言うことだった。憧れの人達と活動出来る日々を過ごすことになる。生活拠点もそのグループでの練習や活動をしやすい場所に引っ越しをする。

そんな楽しい日々が数年程続いた時に、もう良いかなって思う瞬間が訪れた。技術的にも気持ち的にも底が見えたような。そうして夢の日々は終わりをつげた。

そして、タクさんは古民家に住んでいたが相続の関係等で住むことが出来なくなり、現在は弓削島に彼女さんと共に引っ越しした。

自分の書き方的に最後は駆け足になってしまったが、タクさんが最後に言っていたのは「承認欲求だった」と言うことだった。

夢の日々で承認欲求は満たされて終わりをつげたようだ。タクさんは、熱中できる物を探していたのかもしれないと言っていた。やりたいことも特に無く、それに比例するように人から認めてもらえる機会が多くは無かったけど熱中出来る物にやっと出会えたと思ったしこれが自身を変えれると信じて疑わなかった。と言うかそう思っていたかった想いがそこにはあった。しかし日々を過ごす中でそれらが満たされて満足してしまった。タクさんはそんな風な事を言っていた。

話を聞いて、タクさんのやりたいことが特に無かったり、興味が無いと思う所。高校での進路を決める際の二者択一の疑問等、自分が勝手に重ねた部分はあった。だけど、動画を観て感動して牽かれてすぐに和太鼓の門を叩いたり、映画のワンシーンを観てスポーツジムに応募したり、夢の日々に飛び込んで生活の中心を躊躇無く変える所だったり。話を聞いていると熱さと冷静さをバランス良く持ち合わせている気がした。カメレオンの日々を過ごしても、タクさんの中の何かは失われずにいたように思う。

タクさんの濃い人生の話を聞いた後、外に出てご飯をごちそうになった。(カレー)正直、カレー屋さんでも自分が話しまくった。それは割愛。

タクさんはラジオをやりたいと少し前から言っていて自分もラジオをやりたいとは思っていたので一緒にやりたいなとも思ったのだが、自分はお喋りな割りにはレスポンスが無いと話せないのでゲストや他人を潰してしまう傾向にあるので難しいところではある。1人語りが出来ない。そして単純にWi-Fiが無いという環境問題もある。まぁそれはそれで仕方無いかなって思う。

今度は自分が弓削に行く約束をして、タクさんとはお別れ。

原付きを走らせてゼロ円ハウスに帰る。帰って寝る準備をして布団に入る。布団の中で日記を書きながら1日を終える。

ゼロ円ハウス115日目終了。

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