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正式名称の長い長い商品名と救急車

先日、不覚にも腹痛で救急車を呼んでしまいました。人生初の救急車。通勤途中の激痛でした。結局、諸々検査の結果、どこも悪くないということで解放されたわけですが、その最中に、ちょっと自分でもおかしいなということがありました。

腹痛なので、当然、食中毒を疑われます。なので、声をかけてくれた駅員、救急隊員、看護師、医師などの皆さん全員から、「なまものとか食べましたか」と聞かれるわけです。こういう時は少しでも何かを伝えるためにも包み隠さず話すことが必要です。思い当たる範囲で刺し身や生肉などは食べていません。しかし、刺激物という意味では、その日の朝、それほど長くないけどちょっと長いそんなに辛くないとある食品(メーカーさんにご迷惑がかかるといけないので名前を伏せております)を食べていました。なので、正直に、聞かれるたびにその商品名を、ちょっと長めの正式名称のまま何度もお伝えしました。

今になると「今朝、ちょっと辛めのものを少し食べました」程度の報告でもよかったのかな、と思っています。わざわざ毎回正式名称で伝える必要もない。先方は笑いをこらえていたかもしれません。いや、先方はプロですし、こちらの身を真剣に気遣ってくれているので、そんなことはないかもしれませんが。

なんで毎回正式名称を唱えることになってしまったのかと考えました。どうやら、仕事で「正式名称を伝える・確認する」が癖になっているのが、つい出てしまったようです。

弊社が出している本は似たようなタイトルのものが非常に多くあります。また、色々事情があって長いタイトルも多い。必然的に、書店や読者からの注文の際には確認を繰り返します。なにしろ、長い長いタイトルの最後が少し違うだけで別の本とか、そういうのがあるので。

もちろん、長いタイトルは面倒なので、社内で作業したり伝えたりする際には略称や、社内だけで通用する通称なども使います。「○○先生の本」とか、「××の赤い表紙」とか。通じればいいので、極端な話、「△△のアレ」とかでもかまいません。

ですが、それでは会社の外には通じません。お客さんや取引先とのやりとりでは、どれだけ長くてもきちんと正式名称を伝え、確認します。例えばFAXなどで入った注文でも、タイトルが途中までしか書かれておらず、それだけでは商品が判別できない場合は、当然、確認します。そのあたり、もう完全に習慣になっています。

自分が入る前のことですが、長いタイトルを全部書くと字が小さくなるという理由で、社内の通称をそのまま外に出す注文書に載せていたということがありました。一覧の注文書などだとスペースの問題もあって省略したくなるのはわかります。ですが、社内の通称はあくまで社内でしか通じないと考えるべきです。なので、外には通じないので正式名称を書こう、ということを話し、実際に長いタイトルを載せた注文書を用意しました。

そういう下地があってこその今回の出来事なのではないか、と考えています(実際には、単に痛みで頭が回らなくて、覚えていた商品名を繰り返していただけの気もしますが)。

ところで、そうやっていちいち確認しないといけない長い商品名ですが、取引先とのやり取りにおいては、絶対に間違いの無い確実なやり取りの方法があります。商品名ではなく、ISBNコードを伝える・確認するというやり方です。これだと、長すぎたり読みにくかったりするタイトルでも、手短に正確にやり取りできます。手書きの短冊では一文字違いで別の本を出荷してしまったとか、商品名が判別できず問い合わせのやりとりを繰り返してしまったなどの失敗が多々ありました。ISBNコードのように標準化されたコードを用いることでそういう間違いは大きく減りました。

導入の頃は反対意見もあったISBNコードですが、すっかり出版業界のインフラとして定着しました。バーコードなども含め、非常に便利に活用されています。社内での在庫管理などもISBNコードを使っている社がほとんどになりました。電子書籍に使うには問題もありますが、ISBNコードの時代はしばらく続きそうです。

ISBNコードとは別に、出版業界では、様々な情報の標準化と共有が進み始めています。個々の書店を識別するための共有書店コードは、ISBNコードほど普及はしていませんが、実際に使ってみると色々使い勝手もよくなかなか優れものです。書店はそれで良いとして、出版社はどうでしょうか。出版社に対して一意に割り振られるコードというのは、ISBNコードの「出版社記号」や取次との「取引コード」では解決できない課題があり、残念ながらいまだに体系化されていません。そのあたりは、出版業界の次の課題になってきそうです。

※自分の腹痛の原因ですが、特定の商品とはまったく関係ありません。念のため。

※「共有書店マスタ」については、以前、版元ドットコムの版元日誌で、こんな話を書いています。よろしければ、ご笑覧ください。

版元日誌 » 『共有書店マスタ』をご存知ですか?
http://www.hanmoto.com/260-2


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