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2009年に書いた「出版不況の原因について」という記事を2018年に読む

2009年10月に、こんな記事を書いておりました。
「第22回 出版不況の原因について」
http://www.pot.co.jp/shuppaneigyouh/20091027_150114493914829.html

今となってみると「ああ、そこはちょっとアレかもなあ」と思う箇所もあります。皆さん、もう覚えていないかもしれませんが、Kindle日本上陸って2012年なんですよね。2009年って、だから、それよりだいぶ前なんですが、その当時、既に何度目かの「電子書籍元年」みたいな話があってですね。そのあたりは「文字モノの書籍」中心で、コミックはどちらかという「ケータイ小説」に近い、通常の出版とはちょっと違うWebメディア的な扱いでしたよね。

前置きはそれまでにして、2009年に自分が書いた「出版不況の原因について」という記事を、2018年の今、改めて読んでみます。そのうえで、セルフでツッコミを入れてみたいと思います。

1.「出版不況=新刊書店における書籍や雑誌の売上減」
2009年でも既に「出版不況」というのは、だいぶくたびれた感じの表現で、自分としては「まあ、なんちゅうか、もうそういう話はいいんじゃねえの」という気持ちがありましたね、かなり。あれからさらに売上減りましたね。そして点数はそれほど減ってない。恐ろしい……。

2.「出版不況の三つの原因」
「供給過剰」「本との出会い方の多様化」「本の選び方の変化」を、三つの原因としたうえで話を進めています。当時は「ネットに蓄積されるネガティブな評価」に対しての大いに懸念を感じていました。まあ、そのあたりは今でも割りと変わっておりません。

3.「供給過剰」
このあたりも変わってないなあ。「出版社を始める」ためのハードルは、さらに下がったんじゃなかろうか。小零細のブラック化も変わんねえなあ。この時点で「団塊の世代の引退」について触れてますが、事業承継の問題までは踏み込んでないな。ちょっと甘いか。あと、ケータイ小説とは違う流れでなろうとかエブリスタとかカクヨムとか、そういうところからの供給がじゃぶじゃぶ増えたのは、やっぱりなあ、という思いと同時に、ケータイ小説が出版とやや別のカルチャーだったのに対して、読者投稿サイトが出版のエコシステムに組み込まれつつあるという変化を感じますね。ちなみに、まったく求められていない情報ですが、自分もWeb小説、そのあたりのサイトで書いております。まったく読まれていませんが。

4.「本との出会い方の多様化」
「違法アップロードサイト」は当時もあったと思いますが、現在のように公式と見分けがつかないうえに下手するとよっぽど便利とか、そういうのは無かったような気がするなあ。そういえば、コミックはあまり図書館で貸出をしていませんが、もし文庫本並みに貸出をしていたとしたら、昨今の「(違法サイトで)無料で漫画を読むのは漫画文化を破壊する行為だ!」的な主張をされる方々はどうリアクションするのか、とても興味があります。自分は「図書館は時代の変化に合わせて変わってもよいのでは。貸出回数に応じた著者への分配などは積極的に考えてみる価値あるのではないだろうか」と思っています。違法サイトに関してはどうしたらいいんでしょうね。もっと便利なサービスをって言うけど、無料でかつDRMのこと気にしないで使える利便性みたいなのに対抗できる「公式」って、すごく難しくないですか?

5.「本の選び方の変化」
アルファブロガーはそれほど聞かなくなりましたが、最近はTwitterのフォロワー数とかなんですかね。というか「書評サイト」は増えましたよね。プロが書くのもアマチュアが書くのも。同時に、クチコミの寿命がさらに短くなったように思います。なんだろう、ネットを流れる情報量が爆発してるんだろうなあ。すごい時代だなあ。あと、自分としては「ロングセラーが大事なんだけど書店の店頭からロングセラーが消えつつあるんだよね」ということを言いたかったんですが、最近はどうでしょうか。

6.「蔵書空間」
「本は買いたいけど置き場所無いよね」というのは相変わらずだと思うんですが、コミックは長い巻数物が増えたというのもあるんでしょうね。改めて考えてみると、普通の個人が置ききれないほどの本を買えるというのは、本が贅沢品ではなくなったからなんでしょうが、それっていつ頃からなのかなあ。百科事典が売れていた頃は、本はまだ贅沢品だったような気がします。今は消耗品ですかね。松本伊代が「♫読み捨てられる雑誌のように」と歌っていましたが、貧乏人だった自分は「雑誌を読み捨て、なんて贅沢な」と思っていました。

2009年に自分で書いた記事を2018年に読んで、そんなことを考えました。なんだろうなあ、進歩してないな、自分は。

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