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地上波の情報番組のコメンテーターを一年やってみて。

どうもリディラバの安部です。

この一年間、TBS系の「グッとラック!」という番組でコメンテーターをやらせてもらっていたのですが、番組リニューアルに伴いコメンテーターを降板ということになりました。これまでもTV番組はちょくちょく出てきましたが、さすがにワイドショー的な主婦向けの時間帯の番組でレギュラーとなるとまた違った世界があるなぁと、学びになったのでちょっと備忘録がわりにメモを残しておこうかと。ちなみに今日が最後の出演日だったのですが、 #グッとラック#安部ロス というタグでtwitte上で視聴者の皆さんからたくさんのコメントいただけて、本当に感謝でいっぱいです。自分でメディア運営もしながら、演者としてマスメディアに関わるという人から見た「テレビの情報番組」が語られることは少ないと思うので、半分内側、半分外側からの意見として、参考程度に見てもらえれば。

ちなみに先週の出演時の発言に対して以下のような記事とか出てますが、「クビ」も「卒業」も降板という言葉を言い換えただけですから差はないですし、番組側に対しては出演していた番組を勝たせられなかった、という申し訳なさはあれど、それ以外は感謝の気持ちしかありません。ご一緒させてもらった皆様、ありがとうございました。またどこかで仕事しましょう。


さて、私はリディラバという社会問題を全般的に扱う組織を運営しており、リディラバジャーナルというウェブメディアや、リディ部というオンラインコミュニティの運営もしています。なのでそこらへんで発信するのもあるなと思ったのですが、一方でこれは非常に私的な話なんで久々にnoteでも書いてみようかなと思い筆をとっています。リディラバや私を応援してやってもいいぞ、と思う方はぜひこういうところで課金してやってください。励みになります。



<そもそもなぜグッとラック!に出演することになったのか>

これはもうなんだかよくわからないですが、番組のプロデューサーの正木さんという方が私を見つけて来てくれて、会社の問い合わせに連絡して訪問してくれ、好きにやっていいから出て欲しいと言ってくれたから、という言葉につきます。普通は芸能事務所とかが間に入って営業的なことをしたりするんでしょうから、その意味では偶然転がって来た機会、という感じです。共演者とかでも事務所に入っていない人はあまりいなかった気がするので、その意味では向こうが見つけてくれた、というのが大きいです。

正木さんは、コミュニケーションが気持ちのいい人で、リスクを取ることを厭わない、昔の面白いテレビを作っていた人なんだろうなぁという感じでした。「私がいる間は好きにやってもらって構いません。私がやめた後はわかりませんが」と言ってオファーをもらいました。そして出演自体は私が人生を通してやりたいことに資するものではあったのでお引き受けした次第です(実際は好き勝手やって何度か怒られましたし、結局先に私が辞めることになってしまった。笑)

私は普段、⒈社会問題を見つけ出しては調査し、⒉世の中に共有し議論してもらい、⒊政策や事業などを通して解決していく、という3種類の仕事をリディラバでしています。その中での2の「世の中に共有し議論してもらう」機会としてテレビ番組は大きな可能性を感じるメディアでした。

ですので 一つの曜日の一コメンテーターという立場ではありますが、せっかくだから多くの人に楽しんでもらいながら社会の色々な課題を知って考えてもらえる情報番組を作れたらなと思って参加しました。

<番組でできたこと>

グッとラック!は少なくとも私が出ていた月曜日に関しては大変おおらかなスタンスでして、発言する内容に関しては基本的に自己責任の上で自由。たまにスポンサーの名前に触れるとかは勘弁してくれ、とかありましたがそれも個別各論として私の中で納得できる論拠のものでした。

ゲストで来てくれていた教育経済学の中室先生が「とにかく難しいことは言わないでくれ」と番組側から言われ、極力わかりやすい言葉で伝えようとしてる横でいきなり私が難しい論点をぶち込む、みたいなこともありましたがそれも何もお咎めなし。番組としては私に対して思うところがある点もあったと思いますが、そういうときも対話をして双方納得の上で決めるというコミュニケーションができていて、とてもやりやすかったです。

番組での私のコメントに関しては「個人的な責任を追及するのではなく社会的な議論に寄せる」「問題を構造的に伝える」「二元論的な押し付けの番組設計にはNOという」「出演番組とはいえ違和感がある場合には言及する」「複雑なものを単純化せずにしかし極力面白いトーンで扱う」「煽ったラベリングに注意する」「具体的かつ建設的なポジションで話を進める」というようなことを意識しました。これは一年間を通して大体できたと思います。

またTwitterでのハッシュタグでのリアルタイムのコミュニケーションを心がけました。番組開始後半年くらいの経った時、正木さんたちから番組が結構苦戦している話を聞いたので、自分のできることとしてtwitterでのハッシュタグの盛り上がりとトレンド入りを一つのゴールと勝手に設定しました。自分の中では「一人グロースハック」と呼んでいました。結果として、今日もトレンド入りはしてましたし、少しずつハッシュタグが育ってきた感じはします。その意味で少しは貢献できたかな。月曜の朝に「イイネ」の雨を降らせるのが私のルーチンとなってました。笑

<番組でできなかったこと>

今回のリニューアルおよび降板に関してはプロデューサーの正木さんも3年くらいのスパンで考えてた番組作りだったわけですが、コロナもありTBSの広告出稿もかなり厳しい中で早期での短期の数字が必要という中での決定のようでした。数字も少しずつ伸びてはいたのですが、目標に届かなかった、と。そういう意味では、個人的な悔しさとして番組の数字を共有してもらい一緒に考えながら仮説検証を回すことができなかった。これをもっと前のめりにしてみてもよかったようには思います。まぁ出過ぎた真似なのかもしれませんが。笑

また同時に、テレビの広告営業の実態を踏まえての番組営業の実態を理解したうえでの番組の伸ばし方みたいな目線があってもよかったなと思っています。広告営業も含めて番組を一つの事業としてみるのであれば、やはりそこへの理解は必要だし、数字のプレッシャーが大きくなれば番組は「声の大きさや煽ったラベリング」あるいは「わかりやすい有名人や家庭向けコンテンツ」に引き寄せられてしまう。私は「社会の問題を、正しく面白く前向きに」伝えたいという想いで番組に出ていたので、そういった数字の重力に負けないためにはもう少し戦略があってもよかったかもしれません。自分が演者として出る以上、その番組チームを勝たせることは当たり前かつ必須の要素。そこができなかったのは痛恨の極みですし、製作陣に対しては申し訳なさでいっぱいです。

<コメンテーターの役割>

「コメンテーター」って怪しいですよね。何を根拠にコメントしているかわからなかったり、感情的になったり、あるいは明らかに偏った発言をする人もいる。一方で自分のポジションをとらず当たり障りのないことだけ言っている人もいます。あるいは言いたいことはあるけど、色々な力関係の中で曖昧にボヤかさざる得ない人もいます。まぁどれにしたって、外から見れば信頼ならない奴らかもしれません。そして、私もそうした「コメンテーター」の一人と数えられているのかも。

だけど見方を変えると、多くの雑誌系の言論メディアがバタバタ倒れていく中で、テレビでのコメントの機会は数少なく残された「開かれた言論空間」でもあります。失われた言論空間に対する信頼をもう一度取り戻そうと思ったら、それはやはり言葉の力で取り戻すしかない。しかも、それは正確性を期した上で、コンテンツとしての面白さとも共存する必要があります。

一方で、ぶっちゃけ昨今のテレビは制作のためのお金があんまりありません。そういう意味ではコメンテーターっていうのはこれまでは普通にコメントしてるだけでよかったのかもしれませんが、もう少し責任ある役割を果たしてもいいのではないか、とも思っています。

例えばそれは取材や企画の伴走であったり、内容面に関する当日の生での最後のチェック機能、トラウマインフォムドケアの視点も含めた「伝え方」での工夫などです。私は素人ではありますが、それなりの数の芸能人の方と仕事をしてきて、人前に出る仕事をしている人はこうした企画や伝え方の工夫などは得意な人も多い。もっと多くの価値を付加する可能性を感じました。

私はアベマプライムという番組のレギュラーもしていますが、こちらでは企画や取材を一緒にすることもあります。番組のもっと中の方にコメンテーターが入り込んで、製作陣と議論しながら番組を作っていくことができればまだまだ可能性が広がることもあるでしょう。

<テレビのポテンシャル>

なんだかんだ言ってやっぱりテレビを見ている人は多い。特に地方の方、高齢の方はよく見ていらっしゃいます。地方の出張で歩いていてお声がけいただく機会も格段に増えました。こういう方々に今の社会の課題を「誰が悪い」ではなく「どうして悪い状態が改善されないのか」という目線で伝えていくのは世の中全般の役割として必要だなと再確認しました。

一方で若い世代に対してもう一歩踏み込んだ価値提供があると思っていて、それはリアルタイムでのコンテンツに対するフィードバックを促していったり、コンテンツのwebとのメディア連動をもっと進めていくようなことでしょう。例えば番組の裏話をその日そのままyoutubeで聞けるようにする、とか。工夫次第でできることはまだ相当ある気がします。

<情報番組の課題>

一方で課題としては、情報番組や報道番組であっても統計リテラシーの弱さが気になります。ミスリードの危険性が高いし、その影響は甚大です。外部の指摘を受ける前に自分たちで気づけるようにならないといけない。また街頭アンケートなども質問の設計に恣意性を感じることが少なくありません。ちゃんとしたリサーチチームを番組の中で持てるといいのでしょうが予算的にもマンパワー的にも少し難しそう。私としては、リディラバでこういうところにもサポートに入れたらなと思いました。

<今後やりたいこと>

今回は番組を勝たせられなかった悔しさがあるので、改めてどこかでテレビやラジオの番組でしっかり「社会の問題を、正しく面白く前向きに」伝える機会を持ちたいと思いました。私個人としてもグッとラック!で少し浮いた時間もあるし、リディラバ全体でバックアップして盛り上げることもできるので、何にしても「新しい情報番組や報道番組の形」を模索したいなぁ。例えば自治体や国や企業と議論して社会問題を解決していくその過程自体をコンテンツにしていく、とかもあると思う。問題提起だけじゃ評論家っぽくなってしまうし、みんなで社会を良い方向に持っていくための機運が作れるような番組ってのもあるんじゃないだろうか。なんにしても、同様の問題意識を持つ方がいらっしゃったら、ぜひ議論させてください。

また、メディアで編集や企画を生業にする人たちと一緒に、「社会の問題を、正しく面白く前向きに」伝えるための研究会みたいなのを開くのもいいなと思いました。リディラバジャーナルやリディ部という我々の資産も大いに活用してもらっていいですし。

<さいごに>

グッとラック製作陣のみなさまや、共演させていただいた全ての方に、改めて御礼を申し上げたと思っています。そして何より見てくれていた視聴者の皆さん、どうもありがとうございました。短い時間ではありますが、最後にこういう発言をする時間をもらえたのもとてもありがたかったです。(tweetもありがとうございます・・・!!)


大きな責任と影響力を持つテレビというメディアの中で、たくさん批判を受けながら(もちろんそれはしかるべきこと)、それでも日々良いコンテンツを作ろうとしている皆さんに最大限の敬意を表し、その上でより良いメディアや社会を作っていけるように私は私の持ち場で引き続き頑張っていければと思います!!!!あらためてありがとうございましたっ!!!!!!

9/21 リディラバ 安部敏樹


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そんなわけで、私なりの試行錯誤と実験は引き続き進めていければと思っておりまして、来週末にはオンラインでこういう社会問題を語るフェスみたいなのもやっています!!!興味ある方は是非申し込んで見てください〜〜!!!




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