都知事選公開討論会/コロナ禍の対応が焦点に/山本氏 15兆円都債で経済対策/小池氏 東京版のCDCを創設/宇都宮氏 経済効率性より暮らし/小野氏 分散型多極型の東京を/立花氏 実態に見合った保障に【無料公開】

【都政新報2020年7月3日号】

 東京青年会議所(JC)は6月28日、都知事選の主要候補者による公開討論会をネット配信で開催した。参加したのは、山本太郎、小池百合子、宇都宮健児、小野泰輔、服部修、立花孝志、斎藤健一郎の7候補。新型コロナウイルスの感染拡大がなかなか終息しない中、ウイルスの感染防止策や、落ち込みが著しい経済対策などに焦点が絞られた。小池氏が現職としての実績や長年の行政経験を強調したのに対して、新人候補は独自の政策を打ち出し、現職との対立軸の明確化に苦心していた。

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 新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される中、候補者のアピールする政策も感染防止対策や「ウィズコロナ」の経済政策などで主張の違いが鮮明となった。
 4年後の東京のビジョンを聞かれた山本氏は、コロナ禍で苦しむ生活困窮者への対応を強調。「都民の多くが生きるのに疲れている。大都会で孤独で消えてしまいたいという人たちがいると思う。住まいは権利。どんな人にも部屋を確保できる状況にする」と語り、都営住宅など低廉な家賃の住まいの確保を行う考えを示した。
 また、「死にたくなる東京から生きたくなる東京にするためには、今の生活を底上げする必要がある」と述べ、コロナ禍の経済対策として「都独自で総額15兆円の都債を発行し、最初に10万円を給付する」と語った。
 小池氏は、コロナ対策や自然災害への対応で現職としての強みを見せた。「喫緊の課題はコロナ対策。コロナの感染防止によって健全な経済をつくっていく」と語り、米国疾病センター(CDC)の東京版をつくる考えを明らかにした。また、「私は長寿という言葉を国際語にしたい。これこそ東京が誇るべき目標だ」と述べた。
 加えて、「大前提は災害対策」とし、首都直下地震対策や水害対策など命を守る予算を組む考えを表明。「東京は遅れた高齢化が超高速でやってくる」と指摘し、見守りや一人暮らしの高齢者を守る考えを示した。都の財政に関しては「健全性を大前提とする」と語った。
 宇都宮氏はコロナ禍による被害の原因について、「社会保障と労働政策の貧困。その大元は政治の貧困」と主張。「経済効率性よりも国民の命や暮らし、人権を重視する。自己責任より社会的連帯を重視する社会をつくる必要がある」と語った。
 また、「コロナ禍で傷ついた人に対してしっかりと保障する。都財政は厳しいが、3兆円規模の基金を捻出したい」とし、その財源は特定目的基金の活用や不要不急の道路計画の見直しなどで確保する考えを提案。貧困問題では主張が重なる山本氏とは、財源問題で違いを打ち出した。
 熊本県副知事としての実績を持つ小野氏は、地方からの視点を取り入れた政策を提案した。「コロナ禍によってこれまでの都市の在り方が大きく変わってきた」と指摘。「分散型・多極型の東京をつくる。地元で働けて、保育・介護ができる新しい東京をつくる」と述べた上で、都心ではアートで世界を引っ張る産業をつくる考えを示した。
 具体的には、「都市計画を見直して、各都市の用途を見直すなど、様々な柔軟な対策を行い、皆さんが住む街が豊かになるように投資をしやすくする」と主張。ソフト面ではテレワークやサテライトで働けるような改革や、オンライン教育の充実なども政策に挙げた。
 立花氏は終始、コロナ禍の行き過ぎた対応に苦言。「営業自粛で飲食業やイベント業など娯楽産業がダメージを受けている。事業規模に応じた実態に見合った保障を行う。第2波では合理的根拠に基づく自粛を要請していく」と述べた。また、「ホリエモンのような頭の良い人が合理的な政治をする。NHKの悪質な集金人にみんなが説教するような東京。30歳にならないと選挙に出られない、若者を迫害する東京をなくす」と話した。

財源問題が議論に

 コロナ禍から再生する積極的な財政投入を主張した山本氏には、他の候補者から財源確保の方策について質問が相次いだ。
 宇都宮氏は、山本氏の15兆円の都債発行に関して、「地方債は道路や橋などの目的に制限されている」と指摘。コロナ禍を災害として指定すればソフト施策にも地方債が発行できるとする主張に対しても、「国会でも政府は災害には当たらないと答えている」と疑問を呈した。
 これに対して、山本氏は「国が災害として指定しないなら都としてやるしかない。都は国に許可を求めなくても地方債を発行できる。独自に資金を調達して都として災害に指定する」と答えた。
 小野氏も都民1人10万円の給付について、「東京の財源は法人税で、働いている人たちは神奈川県や埼玉県から通っている。都知事ではなくて、全体を見る必要がある」と指摘した。
 山本氏は「基本は都民だが、東京だけで全国はいらないという話ではない」とし、都以外の自治体が地方債を発行する際、日銀が地方債を買い取るよう都が国に対して突き上げる考えを示した。
 立花氏は小池氏に対して、「世界の情勢を見れ
ば、医療崩壊する可能性は極めて高い。医療崩壊したとき、小池知事はどうするか」と質問。小池氏は「医療崩壊をさせないために準備している。レベルに応じて、病床を確保するめどをつけている。様々な専門的な施設の確保の検討も進めている」と不安を打ち消した。
 各候補が感染防止対策を強調したのに対し、立花氏は「コロナが大流行したときには心の病を増やさない施策を行いたい」と述べた。
 服部氏は、新型コロナウイルスの死亡者数について、「たかがしれた数字。交通事故で亡くなった人はもっとたくさんいる」と過剰な自粛に反対。斎藤氏は「コロナ禍をチャンスに切り替えるべき」と、明るく乗り切る展望を示した。

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 東京JCは今回の討論会で、「国会に議席がある政党の公認、または推薦、支援を受けている候補者」「都道府県知事経験者」「衆議院議員・参議院議員経験者」に該当する候補者に参加を要請した。参加できなかった候補者は別のネット配信でアピールを行った。