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ゼロ・グラフィティ

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東京、ゼロ年代。二度と会えない人と、記憶で出会う旅へ。 ※一冊の本にするため有料ノート化。各原稿は全文タダで今読めます。
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記事一覧

7.天気予報の恋人

グレられる人が羨ましかった。
コンビニでたむろしたり、暴走族に入るような、
「仲間」がいるってことだから。

高校に退学届を出したからといって、
すぐにそんなグレ仲間ができるわけもなく、
ネットして、本を読んで、CDを聴いて、テレビを見て、
基本的には一人で過ごしていた。

この時期に吸収したものが、今の私を作っていると思う。

辞めた直後の春先、一番ハマっていたのが、ドラマ。
中でもお気に入りは

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6.千と千尋の神隠し

男友達に誘われて、『千と千尋の神隠し』を観に行った。
ちょうど今くらいの時期、2001年8月27日だったと思う。

映画を観る場所といえば、新宿コマ劇場。

小さい頃から、『タスマニア物語』とか『おもひでぽろぽろ』とか、
家族で映画を観に行こうとなれば必ずここだったから、
それ以外の選択肢はなかった。
バルト9もなかったし、ピカデリーはあんなに綺麗じゃなかった。

映画を劇場で観るのは久しぶりだっ

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5.5 街×記憶

書きたいことは山のようにあって下書きも大量に貯まってますが、
センチメンタルなことばかりなので、元気がある時はのらない。

今日は一人ブレスト。
街とともに眠る記憶を呼び起こしてみる。

まずは吉祥寺。
地元の三鷹から一番近い繁華街で、小学生の頃からの遊び場。

そうだ、2003年にサンロードとサブナードが改装することになって、
一度屋根が全部取っ払われたっけ。
当時、ずっと片思いしている人のレス

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5.はれた日は学校をやすんで

5.はれた日は学校をやすんで

高校1年生の冬休み明けから、全く学校に行かなくなった。
いじめられていたわけでもないし、勉強が特別苦手だったわけでもない。

理由があるとすれば、他人の視線や言葉に敏感になりすぎる、
思春期特有の自意識過剰さが、人一倍強かったからだろう。

あの子が私を無視したかもしれない、影で笑っているかもしれない、
私は誰からも好かれていないかもしれない。
もう嫌だ何もかも嫌だ全てリセットして一人きりになりた

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Prologue

7月12日、土曜日。
オープニング曲に合わせて大勢の拍手の中を歩き、
一礼して見渡したその景色に眩暈がした。

小学校、中学校、高校、大学、会社と、
これまで関わってきた人たちが、今、同じ場所にいる。

数々のおめでとう、素敵だよ、お幸せに、が飛び交う中、
出会ってきた全ての人に祝福される喜びを噛み締めた。

夢見心地の一日があっという間に終わり、布団に入ったとき、
心臓が締め付けられるほどの強烈

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