まりあ
東京、ゼロ年代。二度と会えない人と、記憶で出会う旅へ。 ※一冊の本にするため有料ノート化。各原稿は全文タダで今読めます。
私の実家は、10年近く前に焼肉店を経営していた。 駅から離れた個人経営の店なので、近くの会社の人や 家族連れのお客さんが多かった。 私も中学生くらいから店で手伝いをしていて、 「なんで私が休日に皿洗いしてるんだよ!」とキレながらも、 楽しそうなお客さんの笑顔で溢れかえる店が好きだった。 でも、いいお客さんもいれば、困ったお客さんもいる。 こちらが何度謝っても、店員を罵倒し、怒鳴り散らし、 他のお客さんの気分を害する、そんな人たちだ。 もちろん、父も母も誠意を
グレられる人が羨ましかった。 コンビニでたむろしたり、暴走族に入るような、 「仲間」がいるってことだから。 高校に退学届を出したからといって、 すぐにそんなグレ仲間ができるわけもなく、 ネットして、本を読んで、CDを聴いて、テレビを見て、 基本的には一人で過ごしていた。 この時期に吸収したものが、今の私を作っていると思う。 辞めた直後の春先、一番ハマっていたのが、ドラマ。 中でもお気に入りは、朝ドラの『ちゅらさん』と、 夕方から再放送をしていた『天気予報の恋人』だった。
男友達に誘われて、『千と千尋の神隠し』を観に行った。 ちょうど今くらいの時期、2001年8月27日だったと思う。 映画を観る場所といえば、新宿コマ劇場。 小さい頃から、『タスマニア物語』とか『おもひでぽろぽろ』とか、 家族で映画を観に行こうとなれば必ずここだったから、 それ以外の選択肢はなかった。 バルト9もなかったし、ピカデリーはあんなに綺麗じゃなかった。 映画を劇場で観るのは久しぶりだった。 会場は混雑していて、右手にようやく二人並んで座れる席を見つけた。 100
noteの更新、お盆休みをいただいておりました。帰省ラッシュ疲れた。通常運転に戻ったので、今日からまたちまちま書いてゆきます。
書きたいことは山のようにあって下書きも大量に貯まってますが、 センチメンタルなことばかりなので、元気がある時はのらない。 今日は一人ブレスト。 街とともに眠る記憶を呼び起こしてみる。 まずは吉祥寺。 地元の三鷹から一番近い繁華街で、小学生の頃からの遊び場。 そうだ、2003年にサンロードとサブナードが改装することになって、 一度屋根が全部取っ払われたっけ。 当時、ずっと片思いしている人のレストランがあったことも、 こないだ10年ぶりに会った友達と話してて思い出した。 そ
高校1年生の冬休み明けから、全く学校に行かなくなった。 いじめられていたわけでもないし、勉強が特別苦手だったわけでもない。 理由があるとすれば、他人の視線や言葉に敏感になりすぎる、 思春期特有の自意識過剰さが、人一倍強かったからだろう。 あの子が私を無視したかもしれない、影で笑っているかもしれない、 私は誰からも好かれていないかもしれない。 もう嫌だ何もかも嫌だ全てリセットして一人きりになりたい。 それだけだった。 休んでいる間、一番通っていたのが、ブックオフだ。 漫画
高校を中退して間もない初夏の頃、 地元の友達から「私も高校辞めたい」とメールがきた。 かわいくて、勉強もスポーツもできて、 いつも明るく決して嫌われるタイプではなかったから、 この相談は意外すぎて戸惑った。 学校が終わった頃、吉祥寺駅北口のロンロンで待ち合わせた。 誕生日が近かったので、彼女が好きな色のアイシャドウをプレゼントした。 「わあ!ありがとう」いつも通り、甲高い声で素直に喜ぶ姿から、 高校中退なんて言葉は全く結びつかなかった。 高校を中退する人は、家庭の事情で
2001年4月。 友達と遊ぶために、地元の三鷹からお台場へ向かっていた。 お台場へ行くのはこの日が2回目。 1回目は、2000年3月、野球部の先輩とのデートだった。 まだ肌寒い春の日で、ユニクロのオレンジ色のパーカーを羽織り、 吉祥寺ロンロン地下1階で買ったエスニック柄スカート、 髪型を桃知みなみのようにトップで一部だけ結んでいた。 頭の悪そうな格好だが、高校中退だから仕方がない。 友人は、小学校の同級生という大阪出身の男性を連れてきていた。 目と口が大きくて顔が小さい
高校を中退したのが2001年3月。 通い始めて、ちょうど丸1年、まだ16歳だった。 何をするとも決めていなかったが、 とりあえず、示しをつけるために大検だけ取ろう。 そう、漠然と考えていた。 辞めてから、生活は完全に昼夜逆転し、 夜中までネットや漫画を読み耽り、昼すぎに起きてバイトへ行く。 時々、友達と遊ぶ。 その友達のうちの一人が、みさちゃんだった。 みさちゃんは、近所に住む同い年の女の子で、 たしか、共通の友達と一緒にカラオケに行って知り合った。 アメリカ帰りの帰
2002年の6月頃だったと思う。 梅雨ならではの蒸し暑い日で、汗っかきだった私は、 黒いタンクトップにひざ上15cmのデニムのスカートという 1/3半裸の状態で、彼氏と歌舞伎町のカラオケに行くところだった。 ドンキホーテ前の交差点まで来て、 手持ちがほぼゼロ円だったことを思い出した。 「ちょっとお金下ろしてくるからドンキで待ってて」 そう言い残して、ゆうちょが下ろせるATMを一人で探し歩いた。 17歳だった当時、私は中学生の頃に親から作ってもらった ゆうちょ銀行の口座し
7月12日、土曜日。 オープニング曲に合わせて大勢の拍手の中を歩き、 一礼して見渡したその景色に眩暈がした。 小学校、中学校、高校、大学、会社と、 これまで関わってきた人たちが、今、同じ場所にいる。 数々のおめでとう、素敵だよ、お幸せに、が飛び交う中、 出会ってきた全ての人に祝福される喜びを噛み締めた。 夢見心地の一日があっという間に終わり、布団に入ったとき、 心臓が締め付けられるほどの強烈な寂しさを感じた。 何が「出会ってきた全ての人」だ。 決して忘れられない、忘れ