まりあ

主婦と自宅研究員。高校中退後、20歳でいきなり大学進学。その後も、突然インターン(とい…

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主婦と自宅研究員。高校中退後、20歳でいきなり大学進学。その後も、突然インターン(という名のただ働き)から広告業界に飛び込み、突然会社を辞めたあと付き人になったりと忙しい。

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  • ゼロ・グラフィティ

    東京、ゼロ年代。二度と会えない人と、記憶で出会う旅へ。 ※一冊の本にするため有料ノート化。各原稿は全文タダで今読めます。

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最近の記事

父が罵倒された日のこと

私の実家は、10年近く前に焼肉店を経営していた。 駅から離れた個人経営の店なので、近くの会社の人や 家族連れのお客さんが多かった。 私も中学生くらいから店で手伝いをしていて、 「なんで私が休日に皿洗いしてるんだよ!」とキレながらも、 楽しそうなお客さんの笑顔で溢れかえる店が好きだった。 でも、いいお客さんもいれば、困ったお客さんもいる。 こちらが何度謝っても、店員を罵倒し、怒鳴り散らし、 他のお客さんの気分を害する、そんな人たちだ。 もちろん、父も母も誠意を

    • 7.天気予報の恋人

      グレられる人が羨ましかった。 コンビニでたむろしたり、暴走族に入るような、 「仲間」がいるってことだから。 高校に退学届を出したからといって、 すぐにそんなグレ仲間ができるわけもなく、 ネットして、本を読んで、CDを聴いて、テレビを見て、 基本的には一人で過ごしていた。 この時期に吸収したものが、今の私を作っていると思う。 辞めた直後の春先、一番ハマっていたのが、ドラマ。 中でもお気に入りは、朝ドラの『ちゅらさん』と、 夕方から再放送をしていた『天気予報の恋人』だった。

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      • 6.千と千尋の神隠し

        男友達に誘われて、『千と千尋の神隠し』を観に行った。 ちょうど今くらいの時期、2001年8月27日だったと思う。 映画を観る場所といえば、新宿コマ劇場。 小さい頃から、『タスマニア物語』とか『おもひでぽろぽろ』とか、 家族で映画を観に行こうとなれば必ずここだったから、 それ以外の選択肢はなかった。 バルト9もなかったし、ピカデリーはあんなに綺麗じゃなかった。 映画を劇場で観るのは久しぶりだった。 会場は混雑していて、右手にようやく二人並んで座れる席を見つけた。 100

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        • お盆休み明けました

          noteの更新、お盆休みをいただいておりました。帰省ラッシュ疲れた。通常運転に戻ったので、今日からまたちまちま書いてゆきます。

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          5.5 街×記憶

          書きたいことは山のようにあって下書きも大量に貯まってますが、 センチメンタルなことばかりなので、元気がある時はのらない。 今日は一人ブレスト。 街とともに眠る記憶を呼び起こしてみる。 まずは吉祥寺。 地元の三鷹から一番近い繁華街で、小学生の頃からの遊び場。 そうだ、2003年にサンロードとサブナードが改装することになって、 一度屋根が全部取っ払われたっけ。 当時、ずっと片思いしている人のレストランがあったことも、 こないだ10年ぶりに会った友達と話してて思い出した。 そ

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          5.はれた日は学校をやすんで

          高校1年生の冬休み明けから、全く学校に行かなくなった。 いじめられていたわけでもないし、勉強が特別苦手だったわけでもない。 理由があるとすれば、他人の視線や言葉に敏感になりすぎる、 思春期特有の自意識過剰さが、人一倍強かったからだろう。 あの子が私を無視したかもしれない、影で笑っているかもしれない、 私は誰からも好かれていないかもしれない。 もう嫌だ何もかも嫌だ全てリセットして一人きりになりたい。 それだけだった。 休んでいる間、一番通っていたのが、ブックオフだ。 漫画

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          4.中退の相談

          高校を中退して間もない初夏の頃、 地元の友達から「私も高校辞めたい」とメールがきた。 かわいくて、勉強もスポーツもできて、 いつも明るく決して嫌われるタイプではなかったから、 この相談は意外すぎて戸惑った。 学校が終わった頃、吉祥寺駅北口のロンロンで待ち合わせた。 誕生日が近かったので、彼女が好きな色のアイシャドウをプレゼントした。 「わあ!ありがとう」いつも通り、甲高い声で素直に喜ぶ姿から、 高校中退なんて言葉は全く結びつかなかった。 高校を中退する人は、家庭の事情で

          4.中退の相談

          3.『さくら』のコックさん

          2001年4月。 友達と遊ぶために、地元の三鷹からお台場へ向かっていた。 お台場へ行くのはこの日が2回目。 1回目は、2000年3月、野球部の先輩とのデートだった。 まだ肌寒い春の日で、ユニクロのオレンジ色のパーカーを羽織り、 吉祥寺ロンロン地下1階で買ったエスニック柄スカート、 髪型を桃知みなみのようにトップで一部だけ結んでいた。 頭の悪そうな格好だが、高校中退だから仕方がない。 友人は、小学校の同級生という大阪出身の男性を連れてきていた。 目と口が大きくて顔が小さい

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          2.ローソンのみさちゃん

          高校を中退したのが2001年3月。 通い始めて、ちょうど丸1年、まだ16歳だった。 何をするとも決めていなかったが、 とりあえず、示しをつけるために大検だけ取ろう。 そう、漠然と考えていた。 辞めてから、生活は完全に昼夜逆転し、 夜中までネットや漫画を読み耽り、昼すぎに起きてバイトへ行く。 時々、友達と遊ぶ。 その友達のうちの一人が、みさちゃんだった。 みさちゃんは、近所に住む同い年の女の子で、 たしか、共通の友達と一緒にカラオケに行って知り合った。 アメリカ帰りの帰

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          1.歌舞伎町のカメラマン

          2002年の6月頃だったと思う。 梅雨ならではの蒸し暑い日で、汗っかきだった私は、 黒いタンクトップにひざ上15cmのデニムのスカートという 1/3半裸の状態で、彼氏と歌舞伎町のカラオケに行くところだった。 ドンキホーテ前の交差点まで来て、 手持ちがほぼゼロ円だったことを思い出した。 「ちょっとお金下ろしてくるからドンキで待ってて」 そう言い残して、ゆうちょが下ろせるATMを一人で探し歩いた。 17歳だった当時、私は中学生の頃に親から作ってもらった ゆうちょ銀行の口座し

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          Prologue

          7月12日、土曜日。 オープニング曲に合わせて大勢の拍手の中を歩き、 一礼して見渡したその景色に眩暈がした。 小学校、中学校、高校、大学、会社と、 これまで関わってきた人たちが、今、同じ場所にいる。 数々のおめでとう、素敵だよ、お幸せに、が飛び交う中、 出会ってきた全ての人に祝福される喜びを噛み締めた。 夢見心地の一日があっという間に終わり、布団に入ったとき、 心臓が締め付けられるほどの強烈な寂しさを感じた。 何が「出会ってきた全ての人」だ。 決して忘れられない、忘れ

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