『ファントムテイル』 編集後記
撮影・編集を担当したCreative Company Colors第9回公演『ファントムテイル』のアーカイブ配信が終了いたしました。
【あらすじ】
島根県松江市。
国宝・松江城の天守にふらりとやってきた男、佐伯。
長期休暇を取ってあてもなく旅をしていた中、自身がファンである小泉八雲が敬愛していた島根へ足を運び、 松江城の天守閣からの眺めをただただぼーっと見続けていた。
一方明治時代、小泉八雲は教え子の浅野と共に天守閣へきていた。
そこへ、どこからともなく女性のすすり泣く声が聞こえてきた。
辺りを見回す小泉と佐伯。畏る畏る尋ねる。
「そこに誰かいるのか?」 ぼんやりと浮かぶ一人の美しい女性。
誰に向かうでもなくただ泣き続ける。
松江城落城の為に人柱として犠牲になった女性、お雪。
お雪の霊を見た小泉と佐伯は家族・旧友を駆使し、かつてこの松江城で人柱になった女の話を調べる。
そこには確かに、穏やかな村の中で起こった一つの悲劇があった。
松江藩藩主・堀尾吉晴は亀田山の麓に城を立てることを決意する。
築城の指揮を息子の忠氏に任せるが中々上手くいかない。
そこで村で最も美しい舞を踊るお雪に舞をさせたところ、恙なく築城は進むようになった。
そこで忠氏はさらなる強固な城となるよう、お雪を人柱にすることを決める。
地下牢に閉じ込められ、泣き叫ぶお雪。
それを再び見る小泉と佐伯。しかし彼らは触れることも救うことも出来ない。
己の無力さを嘆く二人。
だが、彼らは物書きの矜持を持って自らを奮い立たせた。
「物語では、紙の上では救ってみせる!」 かくして、人柱としてまさに埋められようとするお雪のところに、 二人がそれぞれに紡ぐお話の不思議な出来事が起こる。
彼らの物語は、お雪を救うことが出来るのか――。
(公式サイトより)
この記事を読んでくれるのは本編をご覧になった方という前提で、配信映像に関するあれやこれやをお話していこうと思います。
今回多くの方に「編集がいい」と言ってもらえましたが、それは何でかって言うと、きっとでしゃばったからです。でしゃばりには大きく分けて2つ理由があります。順を追ってお話ししていきましょう。
まず通し稽古やゲネプロを見学して思いました。「舞台だな」と。
これまでのC.C.Cは小劇場、引いては演劇の枠に囚われないダイナミックな演出や多彩な仕掛けが盛り込まれている印象がありました。もちろんこれは画面越しでも映えます。一方で今作は「会場で体感することによって感動を得ることができる」ファクターが多いと感じました。ファントムや振り落としがその例です。
立ち回りも派手なパフォーマンスも少ないので、自然にお芝居・物語により注目します。結果、僕としては今までと趣の異なるC.C.Cを見た思いでした。
しかし「会場で体感するのがエモい」ということは裏を返すと、映像化したときに魅力が削がれるということを意味します。従って今までよりも強めに味付けしないと配信を見た時に薄味に感じてしまうのではないか?というのが理由の一つ目です。最もこの懸念は今作に限らず、舞台の映像化には付いて回る問題なんですけどね。
もう一個の理由はコロナ禍の配信というものの在り方にあります。シンプルに飽きられてきているのは否定のしようのない事実でしょう。あるいはブームからインフラのような形に落ち着いたという見方もできるかもしれませんが、その議論はここでは置いておきましょう。どちらにせよ漫然と配信するフェーズは終わったということです。配信コンテンツとして良いものを提供する必要があります。配信コンテンツはDVDのようにコレクションもできない。映画館のように専用施設でもなければレジャー的な楽しみもない。でも配信という形にフィットするコンテンツを模索する努力は必要だと思うんですよね。
で、ここで問題なんですけど、スマホで長時間コンテンツ見る集中力って持続しますか?
僕はNOです。
ファンテイはお話が面白いですから、なるべく一連の流れで見てほしい。つまり定期的に今までの演劇のDVDと違うことをしておけば、疲れたり飽きたりで一時停止する率を下げられるのではないかという企みです。
以上2点が今回編集がでしゃばった理由です。
個人的に「編集が工夫されている」というようなメタ的な感想を抱かせてしまう方向性はあまり採りませんでした、今までは。
ですが、今回このテイストでやってみていろんな方が喜んでくれたんですよねぇ。そしたら僕も嬉しいじゃないですか。
いやぁ表現の探究は尽きないですね。
さてと。
『ファントムテイル』の映像化における大きな方針をお話しました。
もっと突っ込んだ撮影や編集の技術のことをお話してもいいんですけど、専門的になってしまうので…ここら辺でお開きにしたいと思います。
もし聞きたくて仕方がないという方は連絡ください笑
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