見出し画像

コンビニ、カード、秘密組織

とあるコンビニのレジの横に置かれたカードバインダー

そこにやたらと年季の入ったポイントカードがある。
ただのポンタカードに見えるそれ、
たった一枚のそのカードには所有者が複数人いる。

そのカードの裏に書かれた名前は「Mr.ジェントルメン」

そう俺”達”の名前だ。
正確には厨二病に犯されていた時の俺”達”の名前だ。

以前、たまたまバイトの新人研修中が行われてるとき、
そのコンビニを訪れたことがある。
その時に「このMr.ジェントルメンって誰のことなんですか?」
という会話が聞こえた。

店長は「あぁ、あいつもMr.ジェントルメンだよ」と当たり前かのように、
たまたま店に居合わせた僕のことを、目線だけでそう伝えていた。

会話から察するに、
彼女は僕以外のメンバーの何人かに遭遇しているのだろう。

20代前半に見える新人の彼女は、なんだか不思議そうな顔をしていた。

今ではベテランになった彼女。
レジに行くと、
当たり前のように何も言わずバインダーを読み込んでくれる。

そこにある、暗黙の了解。
今では彼女も勝手にMr.ジェントルメンの一員、秘書と行ったところか。

なんだか自分が本当に秘密組織の一員になったみたいで悪くない気分
男はいつだって会員制とか秘密基地、隠れ家バーなどに弱い。

いつか、このカードで寂れたローソンの地下にある
謎の空間に招待される日が楽しみだ。
果たして、そんな日が来るかは神のみぞ、
いや神すらも知らないでいてほしい。
それこそが、秘密組織なのだから。

なんて妄想を、今日コインランドリーでしていた。
童心に帰ったみたいで、なんだかいい気分だ。
こんな日は、少し高めのコーヒーでも飲もうかな。

ただ盛大に小銭が足りないみたいだ、ポイントで埋め合わせしよう。

「すみません、足りない分はポイントで。レジに預けてあるんですよ」
「はい、名前は…」

やっぱり、いつになっても恥ずかしいな、この名前を名乗るのは。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?