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夜と黒と影

撮影のときはどうなのかわからないのだけど、RAW現像〜ポストプロダクションで扱う黒は、ほとんど無限に近いバリエーションがある。

色を抜くことでつくる欧州の夜、色を盛ることでつくるアメリカの夜、様々な文化や環境に応じて闇を演出すると教わったのはケビン・ショウの講演だったと思う。

都会の夜、昼間の物陰、田舎の漆黒の闇、様々な黒はそこに写る黒以外の何かによって、ときには感情を示唆、あるいは想起させる。

グレースケールの黒については、もちろん別のアプローチが必要になる。技術的な事柄ではなく「もしも自分の眼が色を知覚出来ないとしたら」という仮定からいくつもの解釈を精査し、一定の確信を得ることが欠かせない。

少し話が逸れてしまいました。カラーの黒はほとんど無限のバリエーションを持っています。それはピクセルのRGB値だけではなく隣接する別の色に知覚認識が影響を受けることも考慮に入れてのことですが。

ところで影の場合、少々事情が異なります。
それは「光を局所的に遮ったもの」という原則によるものです。晴天の青空で、ライティングをせずに人物を撮ったとします。「自然光のみ=1灯」と考える方もいるようですが、ポストプロダクションでは2灯として扱います。太陽の黄色い光(直射光)と、天空の青い光(拡散光)。影はこのミックス光から黄色い光を弱めることで実現できます。

そして影は黒に溶けていきます。それが夜の暗闇なのか、人工的に遮光された背景なのかは演出意図によると思いますが、知覚現実と物理現実の双方から検討することで黒は多くの役割を果たすでしょう。

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