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Torus (トーラス) by ABEJA

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Torus(トーラス)は、AIの社会実装を手がける、株式会社ABEJA(https://abejainc.com/ja/)のオウンドメディアです。「テクノロジー化する時代に、あえ… もっと読む
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#アート

美学者・伊藤亜紗が考える「偶然の価値」

目が見える人は情報の大半を視覚から得ていると言われます。では、目が見えない人たちは世界をどのように認識しているのでしょうか。 本人ですら、いわく言い難いその感覚を、美学者の伊藤亜紗さんは当事者との対話から探り、自著「目の見えない人は世界をどう見ているのか」で、見るという行為そのものを揺るがしました。 伊藤さんは「雲が流れゆくのを淡々と眺めるように、身体に何が起こるかを淡々と見ていく」と言います。 身体を通じて見えてきた「世界の別の顔」とは。 見えない世界の「見え方」伊

東京の新名所「チームラボ ボーダレス」の仕掛け人・杉山央の表現の軌跡

8月下旬に公表された、米TIME誌の"The World's 100 Greatest Places of 2019"。メキシコやセネガル、アイスランドなど各地の観光地とともに、日本のある美術館が選ばれた。 東京・お台場の「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderless」。 アートコレクティブ・チームラボと、ディベロッパー・森ビルが手を組み生まれたミュージアムは、開設から1年で日本のインバウンドを象徴す

「性欲は、なぜある?」が揺るがす常識の壁

見た者はざわつきとともに考えずにはいられなくなる。そんな作品を発表し続けてきた現代美術家・長谷川愛さん。インタビュー前編では最新作“Alt-Bias Gun”や創作の原点を聞いた。後編では長谷川さんを突き動かすものを探る。 潜在的な欲望、倫理的な問題を引っ張り出したい自分が抱える悩みや問題意識が、アートプロジェクトの出発点です。実現できるかどうかはさておき、解決法や選択肢を想像し、どうしたらそれが実現するかを考えていくのです。 たとえば「子どもがほしいか?」という問いがあ

「撃たれやすい顔」への引き金を止める。AIが揺さぶる人の思い込み

死角から飛んできたボールは避けようがない。直撃されて脳と心が揺さぶられる。現代美術家・長谷川愛さんのアートプロジェクトを見た時の印象をたとえると、まさにこんな感じだ。科学技術をモチーフに、人のありようを浮き彫りにする。それらの軌跡と思いを2回に分けて紹介する。 人の偏った認知を「銃」が問い返す 2018年、長谷川さんは“Alt-Bias Gun”という作品を発表した。 このプロジェクトは人の偏った認知バイアスを機械学習等で学ばせ、逆張りもしくは別のバイアスを道具に実装し「