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8月に突入と同時に梅雨開け&真夏日。けれどもコロナはまだそこら中に蔓延しているので開放感はなくただ真夏のマスクが息苦しいだけ。10代の頃住んでいた街にお盆の墓参りに出かけた。東京と川崎の境を走るJR南武線の車窓からの眺めが割と気に入っている。窓の外には地平線のあたりまで特に高いビル群もなく住宅地がびっしりと続いていて、その上半分は空というパノラマ感がボーっと眺めているのに心地よい。この住宅一軒一軒に自分と無関係の人々の生活が無数に存在すると思うと呆然としてしまう。こういう普通の風景はガイドブックにも載らないし旅行客の目には触れない。でも生活のリアリティは浅草寺の仲見世や渋谷のスクランブル交差点や歌舞伎町のネオン街よりも濃密だ。僕は旅行に出かけても名所旧跡にはさほど興味が沸かず、それよりも現地の日常生活の真っ只中に紛れ込むある種の透明人間感が好きだ。自分と全く関係のない路地を歩き、二度と出会わないであろう人々とすれ違い、短い会話を交わす。そうやってよそ者として他人の街に紛れ込み発見する壁の落書きや道端に落ちている様々なその街の欠片にたまらない魅力を感じる。Instagramにあげたなんでもない街の風景。10代の頃の毎日通ったなんでもない路地の風景が外国人に評判がいい。きっと彼らも僕と同じリアリティを求めているのだと思う。

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コンビニのトイレで用を足しながら自分が日々いかにコンビニに依存しているかを考えていた。弁当や日用品の買い物はもちろんのこと、宅配便を出荷したり、公共料金の支払いをしたり、ATMで現金を引落したり、企画書なんかをネット経由でプリントアウトしたり、とにかく日々これでもかというほどお世話になっている。コンビニがあれば、キッチンや冷蔵庫、電子レンジは要らないしトイレも要らない。ネットプリントサービスも、個人所有のプリンターは必要な時に必ずトナー切れという致命的な欠陥がつきまとうので、メンテナンスフリーのレーザープリンターはいつも大助かり。コンビニを路面に確保して、2階から上は居住スペース(といったってベッドルームがあれば充分事足りる)で、最上階をスポーツジムにあるような共同浴場にして、屋上を夕涼みの共有スペースとして開放してくれくれれば完璧だと思う。あれ、これってなにかに似てるな……あ、カプセルホテルか。

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暑い暑い暑い、蒸し暑い。煙草休憩に外に出ると太陽ギラギラでほぼ無風。こうも暑いと煙草の味もそっけも感じないので、少しでも風がぬける場所を探して近所をふらふら歩き回る。近くのマンションの自転車置き場の角の日陰が若干風が通っていてそこに落ち着く。まるで猫みたいだ。猫は暑い日中はほぼぐったり寝ているだけに見えるけれど、太陽の移動と共に場所をこまめに移しながら常に一番快適な場所を選んで寝ている。だから猫についていけばそこがベストポジションなのだ。自粛生活で猫をかまう時間が増えたが、同時にいろいろ勉強させてもらっている。

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世間ではTikTok騒動が続いている様だけど、個人的にはやったこともなければ観たこともないのでドーでもいい。大衆迎合的に配信サービスを開始していた自治体の日和見便乗組が早々に閉鎖しているのを見聞きすると、くだらないことやってないでちゃんと働けと言いたくなる。そもそもアカの他人がへらへらタコ踊りしているのを観てなんの得があるのかわからない。「他人の不幸は蜜の味」と言うが「他人の充実」なんか犬も食わないだろうと思うんだけど。まぁ、流行りモノに我先にと乗っかる輩は相変わらず多いし、2匹目3匹目のどじょうを狙う気持ちもわからないではないけど、正直単純に言って卑しいよね。流行りモノって所有してる時点で自分はカラッポですって宣言してるみたいなもんでしょ?だからどんなに気に入っていてもそれが流行った時点でもう恥ずかしい。でも世の中そうやってハヤって、バズって、イイネがついて、玉石混交のフォロワーが増えてビジネスになっていくからタチが悪い。そうそう、転売ビジネスも含めてね。わかる人にだけわかってもらえればいいとかタダのミーハーはいらないとかヌルいこと言ってるといつまでたっても生活は楽にならんのだよ!カァーカッカッカッーーーと銭ゲバオヤジの高笑いが聞こえてきそうだけど、そういうことです。そうやって世の中がどんどん卑しくなっていく。

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知り合いの展示を観に久しぶりに神田方面に出掛ける。コロナのこんな時期に大変だと思うけど、みんなアッチコッチでがんばってお披露目していてそれなりに客も来ているから大したもんだ。途中、ひとりで切り盛りしている美容師の知り合いの店を覗くとこれまた知り合いが髪を切ってもらっていて、ひと通り近況報告をやり取りする。珍しく全員喫煙者だったので店先で煙草休憩。いかに肩身が狭いかグチをこぼし合う。コロナ以前から喫煙者は日陰者で、いつの間にか押しも押されぬマイノリティになってしまった。だからマスクポリス以前にタバコポリスに陰険さに常日頃から晒されているので小市民の偽善には慣れっこなのだ。些細なきっかけで人間の邪悪さは露見する。久しぶりに色んな人にあって発散できたので嬉しくなった。

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今日は土曜日。一週間のうちで土曜日がいちばんのお気に入りかもしれない。一番の理由は明日も日曜日で休日ということ。なんといっても心に余裕がある。小学生の頃は夜のテレビの『8時だョ!全員集合』が楽しみの大部分を占めていたけど、エンディングの加藤茶の「宿題やれよ!」という掛け声に心の中で舌打ちをしていた。大人になった今では宿題もなく、あったとしても明日に回せばいいことなので土曜日はとにかく気楽だ。近所の喫茶店で昼飯を食べて、コーヒーを飲みながら一週間の世間話を流し読みして煙草をふかす。外は夏空の下アブラゼミがギャンギャン鳴いているけど店の中は薄暗くてエアコンでガンガンに冷えている。癒やしでも和みでもほっこりでもないが、大抵の場合幸せはごくごく近くにある。

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久々に神宮前方面に出かけた帰りに歩いてJR原宿駅に向かった。連休中日で人出は割と多い。竹下通りを避けて裏手のヘアサロンが並ぶ暗渠道を通る。その面白悲しい『ブラームスの小径』と言う名前の路地が終わるT字路の左手に突如要塞のような建物の入口が新しくできていて「なんだ?なんだ?」と入ってみたら最近オープンしたユニクロとかIKEAが入った複合施設だった。ヴィンテージマンションの『原宿アパートメンツ』がごっそり建て替えの結果またぞろユニクロじゃぁ拍子抜けの気もするが、今一等地の賃料を払えるのが薄利多売のユニクロぐらいという皮肉な現実。地方からのお上りさんもせっかく原宿まで出てきていつものユニクロで買い物して帰るのかなあ。このままいくと日本中複合施設だらけになってしまいそうだ。

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