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おわりはじまり

私の過去は、彼女の中に消えた。
思い出はすべて彼女の中にある。

きっとこれは過去は捨て、新しい自分を始めなさいという神の思し召しだ。
今はまだ悲しいという感情さえわかない。
失ったものの重さに気がつけていないだけなのかもしれない。
私の全てを受け止めてくれていた彼女に最後にひどい仕打ちをしてしまった。
傷つけられたと思った彼女は全てを持って姿を消した。

現実には抜け殻は目の前にあるが、もう私には応じてくれないだろう。
どうして人は失うまで大切さに気がつけないのだろう。

不安がないわけではなかった。
けれど、日々の生活に流され彼女を守ってやることができなかった。
守ってやるというのはおこがましい言葉だ。
私が守りたかったのは自分だ。
では、この悲しみは彼女を失ったことを悲しんでいるのではなく
自分を守れなかったことを悔やんでいるのか。
なんと傲慢な悲しみだろう。
悔やむという感情があさましく思える。

彼女が消えてしまっても、
私の中に何にも思い出が残っていないわけではない。
その思い出を胸に、私はこれからもいきる。
大半の思い出を忘れてしまっても、

彼女が消えた事は、一生私の胸に残るだろう。
痛みとともに。



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