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NCニュースの読み方 #18 「e-Japan戦略の評価結果を考える」 (2006年1月16日)

 IT戦略本部の評価専門調査会は2005年12月、日本のIT戦略に関する取組みに対する評価をとりまとめた最終報告書「評価専門調査会報告書-先端から先導へ-」を公開した。評価専門調査会は、e-Japan戦略及びe-Japan戦略Ⅱの取り組み状況を評価するために、2003年12月に設置された民間有識者からなる委員会である。委員会は、この2年間に5次に渡る中間報告書をIT戦略本部に提出してきているが、この報告書は2年間の活動の総括である。

 報告書はまず、インフラを中心として世界最先端と言える基盤が整い、世界最先端に追いつく局面から世界を先導すべき局面に転換しつつあるとIT戦略に関する取組み全体を前向きに評価し、その上で利用者視点の成果主義を基本として、引き続き不断の改革を実施していくべきであると述べている。また、特に重点5分野の中の「行政及び公共分野」と「人材及び教育」の二分野と、先導7分野の中の「医療」分野については課題が多く残されており、引き続き積極的な取組みが必要だと指摘している。

 ここでは重点5分野の一つ「行政の情報化」について考えてみたい。
報告書は「行政の情報化」について、世界でも先端的な電子政府の基盤が構築され、電子自治体も整備中であり、一部に先進事例がみられるが、利用者が利便性を実感できるレベルには達していないものが多く、行政の効率化は実現しておらず、CIOが自ら情報リテラシーを高める必要があり、利用者ニーズに応じたサービスの提供、ITを活用した抜本的な業務改革の推進、民活活力の積極的利用が必要であると評価している。

 たとえば、「申請・届出等手続のオンライン化の進捗状況」は、目標の97%に対して実績は96.2%であり、オンライン申請の利用率は全体で81%に達しており、情報化は着実に進んでいるようにみえる。しかし、オンラインで手続が完了するものは67%に留まっているし、汎用的な電子申請システムの利用は1%にも達していない。また、個人向けの電子政府ポータルも整備されているが、個人のアクセス経験率はわずか15%と、他の先進国と比べ著しく低い。

 理由は既に何度も指摘されているように、利用者にとって便利なシステムになっていないからである。ネットショッピングやネットバンキングなど民間企業のインターネット・サービスの普及を考えれば、行政のネットサービスの利用率が低いのは、インフラが未整備なのでも、利用者のリテラシーが低いせいでもない。明らかに利便性を実感できるシステムになっていないからだ。

 そして、利用者の使い勝手を無視したようなシステムになってしまった原因は、目標を、本来は手段であるはずの「ITの導入」においたからである。もし、目標をITに導入によって達成されるべきものにしておけば、このようなことにならなかったに違いない。

 行政の情報化は、行政の効率化と行政サービスの向上を目的としている。であれば、ITの利用によってどれだけ行政をスリム化できるのか、どれだけ行政サービスに対する満足度をあげるのかを目標にすべきであった。

 評価専門調査会の報告書にも「IT導入自体を自己目的化させることなく、ITが利用者にいかなる恩恵をもたらすかをしっかり見据えた舵取りを行うことが肝要である」という記述がある。是非、次の計画では、ITの利用をどれだけ進めるかではなく、ITの利用によってどのような成果を達成するのかを目標としてほしい。

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