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BCN 視点 #48 「スポーツは生放送でなければ」 (2013年11月28日)

 10月20日の夜、テレビでフィギュアスケートをやっていた。画面には「GPアメリカ大会 今夜決戦、高橋大輔&小塚崇彦表彰台へ」の見出しが表示されている。ちょっと自分の目を疑ってしまった。

 放送内容は、グランプリシリーズの初戦、アメリカ大会である。日本からは昨年のグランプリファイナルで4年ぶり3度目の金メダルを獲得し完全復活を遂げた浅田真央のほか、日本男子フィギュアのエース髙橋大輔や小塚崇彦、町田樹が出場している。開催地はデトロイトなので日本との間には13時間の時差があるので生放送ではない。

 つまり、放送の時点で多くの日本人、とくにフィギュアスケートのファンはGPアメリカ大会男子シングルの結果を知っている。町田樹が優勝し、高橋大輔は4位、小塚崇彦は6位である。この事実は、夕刻のテレビのニュースでも報道されているし、インターネットのニュースにも流れている。国際スケート連盟(ISU)のウェブサイトを見れば、ジャッジがどのような判定をしたのか、各エレメントの得点、プログラムコンポーネントの内訳まで見ることができる。にもかかわらず「高橋大輔&小塚崇彦表彰台へ」の見出しは視聴者を馬鹿にしている。高橋選手や小塚選手にも失礼ではないか。

 ましてや「今夜決戦」は論外である。男子シングルの決戦はシカゴ時間で言えば、前日の午後8時20分頃には終わっている。日本時間だと20日午前9時20分には男子シングルの結果は判明しているのである。「今夜決戦」と書くテレビ局には知性も良識もない。

 ちなみにインターネットで検索すると動画もある。ISUの許可を得ているのかどうかは不明だが、かなり早いタイミングで動画がアップロードされている。解説が英語やロシア語で、画像はかなり荒くて動きも多少ギクシャクしているが、ジャンプやスピンの様子もそれなりにわかる。

 視聴率が確実にとれるフィギュアスケジュールの試合をゴールデンタイムに放送したいという放送局の気持ちもわからなくはない。もしかすると、フィギュアスケートの試合はショウだと思っているのかもしれない。しかし、フィギュアスケートはショウではなくスポーツである。インターネット時代だからこそスポーツはナマで放送してほしい。「テレビはナマがいのちである。 ナマ放送だから、スポーツ中継は面白い。」と10月20日に他界したコラムニストの天野祐吉氏も書いている。

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