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BCN 視点 #35 「『統合型パソコン』と『iPad』の類似性」 (2011年9月29日)

 サイバー大学は、今夏、学生にiPad 2のWi-Fi+3Gモデルを無償で配布した。無償貸与で、基本的には卒業するまで自由に使え、かつ通信料金も大学が負担してくれる。対象はすべての学生と言いたいところだが、サイバー大学は履修登録した単位数に応じて学費を払う仕組みなので、その単位数で若干の制限が設けられている。

 7月下旬、そのiPad 2が教員にも配布された。学生と同じく、無償貸与で、通信料金は大学負担である。昨年購入したiPadは、Wi-Fiモデルだったので、基本的に自宅に置いたままだが、今回は3Gも付いているので、どこでも使える。実に便利だ。授業のためのコンテンツ作成や授業管理、成績管理など大学の仕事や、原稿作成などにはパソコンを使っているが、それ以外の用途では、パソコンを使うことが少なくなった。iPadでほとんどの用が足りる。一度充電するとほぼ10時間利用できるそうだが、今の使い方だと、1週間程度は大丈夫だ。どこにでも持ち運べ、スマートカバーを開けるとすぐ立ち上がる。セットアップの手間もほとんどなく、トラブルも起きない。

 iPadの長所を列挙していたら、「統合型パソコン」というコンセプトを思い出した。「統合型パソコン」とは、オープンなモジュールでつくられているパソコンとは異なり、そのハード、OS、主要アプリケーション、通信機能を統合化したパソコンで、利用できるアプリケーションや周辺機器が限定されている。その代わり、安定性や使い勝手、セキュリティが飛躍的に高い。「統合型パソコン」の詳細は、慶応義塾大学経済学部の田中辰雄先生の著書『モジュール化の終焉』(NTT出版、2009年12月)を読んでいただきたいのだが、その基本的なコンセプトはiPadとほぼ同等である。

 田中先生は、この「統合型パソコン」の市場性を確かめるため、2007年にコンジョイント分析を実施している。このコンジョイント分析の結果は、『モジュール化の終焉』に詳述されているが、仮に従来のモジュール型パソコンと同価格であったとして、立ち上げ3秒、設定済み、トラブルなしの「統合型パソコン」の市場シェアは約4割だった。

 「統合型パソコン」のコンセプトとコンジョイント分析の結果は、2007年に日本のある有力パソコンメーカーに持ち込まれたのだが、製品化されることはなかった。実に残念なことである。

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