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NCニュースの読み方 #13 「コンポーネントの再利用とオープンソース」 (2005年11月7日)

 10月25日、「EJBコンポーネントに関するコンソーシアム」の活動が終了した。このコンソーシアムは、イーシー・ワンやNTTコムウェアなどITベンダー6社が発起人となって2000年10月に設立されたもの。5年の間に七つの規約と13のテクニカル・レポートを発表してきた。すべての規約とレポートはWeb(http://www.ejbcons.gr.jp/)上に公開され、ダウンロード数は10万件を超えている。

 コンソーシアムの設立目的は「EJB仕様に基づいたコンポーネントの流通性を高め、これを利用したアプリケーション開発およびシステム構築の普及に貢献する」ことであった。コンポーネントの再利用が進めば、システム開発の生産性を飛躍的に向上できる。これに異を唱える人は少ないにもかかわらず、コンポーネント単位の再利用はあまり進んでいないのが現実だ。コンソーシアムは、この課題に取り組み、可搬性のあるコンポーネントを開発するための「ポータブル・コンポーネント規約」、再利用をするために公開されるべきコンポーネントの仕様と品質に関する情報を規定する「公開情報規約」などを策定してきた。

 前号の本コラムでは、「似て非なるソフトウエアを別々に開発するより、共有した方がよい」という結論を書いた。EJBコンポーネントに関するコンソーシアムが目指したものも、ここにある。

 実は、プログラムやコンポーネントの再利用は、ベンダー側の課題であると同時に利用企業側の課題でもある。多くの場合、受託開発されたソフトウエアの著作権は委託側の利用企業に移管され、その仕様やソース・コードが公開されるケースはほとんどない。これでは、ベンダー側が再利用可能なように設計、開発したとしても、再利用が進むはずがない。

 そこで提案なのだが、地方公共団体だけでなく、民間企業でも開発したプログラムは原則としてオープンソース・ソフトウエア(OSS)として公開してはどうだろう。プログラムは秘密にしていても何の価値も生まない。すべてのプログラムに再利用のニーズがあるとは思わないが、再利用可能なコンポーネントは少なくないだろう。それぞれの企業がプログラムをOSSにすれば、似て非なるソフトを開発するという無駄が排除され、より効率のよいIT投資が可能になる。また、公開することによってソフトの不具合が発見されて品質が向上する、GPL(GNU General Public License)に従って公開すれば、機能強化されたソフトウエアが無償で入手できるなどのメリットを享受できる可能性が出てくる。

 開発費を負担したソフトウエアは自社の財産であり、他社に公開すべきではないと考える人は多いだろう。場合によっては企業競争に不利に働くし、OSS化にも多少の費用はかかる。しかし筆者は、OSS化することによって得られるメリットは、デメリットを補うほどあると考えている。

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