国交省、「民間企業がレインズより便利なものを作ればいい」 < イヤそういう話しではないでしょ

先日の、「バズワード化する『不動産ID』〜日経新聞の記事についての感想」関連です。

(因みに、あの日経新聞の記事、基本的な事実関係に間違いがありすぎて、一々指摘してたら文章が破綻してゴチャゴチャになってしまって放置していましたが、なんとか整理して大きく書き直しました

ちょっと調べていたら、こんな反応を見つけました。

(日経記事の)タイトルでレインズは「伏魔殿」と断定している。(中略)レインズを取り巻く事態があまりにもひどかったからに違いない。

国交省の方々とディスカッションしたが、「民間企業がレインズより便利なものを作ればいい」とコメントされてて、あまりの無責任さに呆然とした

(中略)宅建業法でレインズに登録せよと定められている。法律により独占的なデータベースとなっているレインズ(中略)法律によって生まれた、強力なネットワーク効果を持っている巨大なシステムを民間が変えられるわけないだろ。(以下略)

https://preview3.newspicks.com/news/6391068?ref=user_250392

これは面白い。

もし国交省が本当に「民間企業がレインズより便利なものを作ればいい」などと思っているのであれば、認識不足というかそれこそ無知というか。それとも、痛い所を突かれ、根拠を挙げて論理的に説明することが出来なかったので、逆ギレぎみに言い捨てたセリフなのか。

どちらにしても、ヤバイ。

というかレインズの指定流通機構も「建前」は民間でしょと、建前は。半官半民のような中途半端なアレになってるけど。

「大臣が指定する所に運営させて、そこに登録すべし」という宅建業法の規定がある以上、(指定を受けていない)民間企業が同等の条件で挑戦できるわけがない。それに、もう既にレインズより便利で使い勝手の良い業者間流通サービスなら、他にたくさん存在しているわけだけども、不動産業者は嫌でもレインズを使わざるを得ないし、(指定を受けていない)他の民間企業のサービスに乗り換える事も出来ない。

レインズが酷いのは、官製の独占状態だから市場の原理が働かず、酷いサービスのまま放置されている、ということがその理由です。そして、後述するように、誰が主体となって改善すべきなのか誰も分かってないという構造が原因。

客観的に考えれば、去年「あらためてレインズの問題を考える」で書いたように、流通機構を「『指定』では無く『認可』制」にでもして、一定の基準を満たす企業などがレインズというか流通機構運営に広く参入出来るようにして民間での市場競争を促すべきような話しです。米国のMLSのように自由化」とかね。

(日本で、この点を問題意識として取り上げているメディアや個人や企業を全く見たことがありません。日本ではメディアですら「そういうものである」という思い込みの前提の枠組みから外れた広い視点からの思考が出来ないというか)

私は以前から良く言っていますが「そもそも」という言葉が好きなんです。そもそも、ということを掘り下げて考えるのが、ですね。なので、そもそも流通機構が「指定」でなければならない必要性はないでしょう、と。

不動産業界にとっては、自由化されて自由に運営主体を選べるようになれば、米国のMLSのように、自分達の不動産物件情報を自らのコントロールの下におけるし、それによって様々なデータの利活用が出来るようになる。半官半民のような中途半端な位置づけのレインズでデータを死なせておくよりか、主体的に業界がデータの所有権を行使できるようになって良くなるんじゃないです?異業種に使わせるかどうかも業界が決定権をもって決められます。今よりも不動産業界にとっても良くなるし、より柔軟性をもってデータを外部にもオープンにできるでしょうよ。(くどいようですが自由化したってデータをオープンにしなければいけないなんて義務は発生しない、むしろ裁量と自由度が増す)

現状の日本のレインズは自由な競争を阻害する典型的な悪い独占です。それも国が宅建業法で指定流通機構制度を定める事によって作った官製の独占。こんな制度、アメリカだったらありない話しです。

官僚の口から「民間企業がレインズより便利なものを作ればいい」なんて暴論が出ちゃう背景にはやはり、レインズには半官半民の官民癒着という利権構造のようなものが出来てしまっていることが背景にあるからでしょう。

国交省はいつも口では建前上「あくまで民間がやること」なんて言いながら実態は天下り団体を使ってやってたり、監督官庁としての影響力を天下り使って行使しているのですから。

参照>「国交省は、口では建前上『あくまで民間がやること』とか言いながら、法規制をたてに、実際には国交省の天下り元官僚がやっている、という誰も指揮や責任をとらない構造」<これこそ「伏魔殿」というものですよ。

ただね、ただし、なんですが、あの言葉が出てきた文脈が分からないのですが、もし不動産テック企業(日本では異業種)みたいのが、単に「自分にもレインズのデータを使わせろ」、みたいなことを言ったことの返答であったのであれば、わからなくもないかな、と。

別のところでも詳しく書きましたが、アットホームやホームズやスーモのように、自分でデータを集める努力をしろよ、という話しでもあるのですから。不動産屋の努力に「タダ乗り」か、みたいな。

つまり、データの「オープン化」みたいな話と、レインズの独占体制の問題はまったく別の次元の話しなんで、一緒くたに議論しちゃダメ、と。じゃないと、なんのことなのか分からなくてどうしようもない。

ちゃんと区別して、整理して話すべき。

レインズ(流通機構)運営の独占体制について言えば、アメリカだったら、民間企業が、「アンフェアな規制であり、自由競争を阻害している」とかなんとか、自由化を求めて訴訟を起こしそうなものです。アメリカだと企業や業界団体と国がお互いに訴訟合戦みたいな感じでバチバチずっとやりあっているのが普通の光景なんでw。

(繰り返しますが、データの「オープン化」みたいな話をしているのではありませんので誤解のなきよう)

そうやって無駄な規制などをゴリゴリ突破してドーンと良いものを出してくるのだからやはりアメリカは活力があるなぁと常々感じたり。

日本でもどこかやらないかなとか、妄想もしてみたり。自分はもう何の利害関係もない人間なので、他人事です。

因みに、これについて国交省の官僚にウダウダいってもらちが上がらないのは当然ですよ。官僚が法律を決めるわけではないのだから(本来は、本来はね)。国民の意思を代表する政治家が法律を改正しなければどうにもならない話し。

ただ、まともな知識や問題意識をもってそうな政治家なんて見当たらないし・・・(国交省の大臣ポスト、ずっと公明党が握っているんだよなぁ・・・)。

おまけにメディアがあのようなレベルだと、その国民だって何も知らずに変に誤解したまま。

だから、何も変わらない。

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