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米国版「不動産ID」、RESO UPIの事例を紹介

先程、「『不動産ID』の仕様策定も標準化団体を設立してそこでやるべき」を書きましたが、その中で簡単にアメリカの「不動産ID」に触れました。

ついでなので、参考までにその詳細を紹介しておきたいと思います。因みに、日本語での情報は一切ありませんでした。 <酷い話しだ

(追記:関連で、「不動産IDが『ルール』でなく『仕様』であるべき理由」も書きました)

まず、米国版の「不動産ID」と言っても、RESO(Real Estate Standards Organization)標準は総合的な不動産標準なので、データフォーマットやデータ・ディクショナリーやWeb APIを含めた一連の仕様の中の一つにすぎません。

(追記:RESOについて、「不動産の標準化組織 RESO(Real Estate Standards Organization)とは」を書きました)

固有のIDは、RESO Unique Identifiersとして規定され、その内の一つがRESO UPIRESO Universal Property Identifier、RESO ユニバーサル・プロパティ・アイデンティファイアー)です。

RESO Unique Identifiers – UPI, UOI, ULI

RESO creates standards for unique identifiers for properties (UPI), organizations (UOI) and real estate licensees (ULI). Unique identifiers ensure that industry data sets can be stored, shared and displayed in the most efficient and accurate way for real estate professionals and consumers.

RESOでは、固有IDとして以下の標準を策定しています。UPI(物件)、UOI(組織)、ULI(免許)。固有のIDは、不動産業界のプロフェッショナルや消費者に対して、業界のデータセットが最も効率よく正確な方法で保存・共有・表示されることを確実にするためのものです。

https://www.reso.org/reso-unique-identifiers/

この、RESO Universal Property Identifier (UPI)が、日本でいう「不動産ID」に相当するわけです。

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RESO Universal Property Identifier (UPI)

不動産データは、様々な組織によって生成され共有されています。数百にものぼるMLSやテクノロジー企業が物件情報を提供しており、物件情報はしばしば統一されていない形で様々なシステムに記録されています。UPIは物件にまつわる事項を、ユニバーサルなIDに紐づけて記録することによって物件のデータ正確性を確保する為に作られました。

Real estate data is produced and shared between a wide range of organizations. With hundreds of multiple listing services and technology companies providing information about properties, property data is often recorded inconsistently in different systems. The UPI was created to record facts about a property against a universal identifier which can build confidence in the accuracy of that property’s data records.

RESO UPIは、自治体行政の発行する地番をもとにした国際モデルに由来しています。UPIは拡張性があるため、物件タイプの小分類(サブタイプ)や筆(訳注:parcelは土地だけじゃないのだけど丁度よい訳語が存在せず)の合筆や分筆にも対応します。

RESO’s UPI is derived from an international model that draws on the local government authorities which issue parcel numbers. It is extensible so that it can incorporate sub-property types and adapt to combining and subdividing of parcels.

RESOのUPI作業部会は、パブリックレコードやその他データ標準を活用し、IDとして確実な標準となり、不動産業界で広く使われるようにしています。

The RESO UPI Workgroup leverages public records and other data standards organizations to build the definitive standard for the Universal Property Identifier to be used by the real estate industry.

UPIの利点:複数の市場にまたがる地番の一意の識別、パブリックレコードとの紐づけ、物件の状況変化に合わせた鮮度の高い情報更新、などがあります。

The benefits of a Universal Property Identifier include: easier identification of parcels across market boundaries, the unification of public records from multiple sources in one display, and faster updates to physical property characteristics.

このRESOのページには、UPIビルダーといって、住所入れるとUPIに変換してくれるツールがあって、逆のUPI入れると住所が表示されたりもします。なにげに、それらの変換処理を提供するAPIも用意されているという、便利な感じになっています。

(英語圏だとAPIの仕様書とかこういう感じのが多いーブラウザ上で実行して試せたりするやつ)

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RESO UPIの仕様書はここ(ZIP)。正式名称は「Universal Property Identification System Specification v1.0」。

具体的なサンプルは「US-36061-N-S-010237502R1-113」みたいな感じ。内訳は、{COUNTRY}-{SUB-COUNTRY}-{SUB-COUNTY}-{PROPTYPE}-{LOCAL-ID}-{SUB-PROPERTY-ID}、みたいな。

因みに、{LOCAL-ID}はどこから来るかというと、“parcel number”って言って、行政が課税などをする対象としてID番号を振っているのでそれを元にしているとのこと。

日本の「不動産ID」は法務局の「不動産番号」を元にすると言っているから筆単位にIDがつく=複数筆にまたがる土地を取引する場合の不動産IDの取り扱いの問題がでてくる。一方で、日本の宅地の評価単位は、「1筆単位で評価するのではなく、1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地)ごと」だから、そのIDのほうが楽だったかもしれんとも思いながら、日本の場合、土地と家屋別で登記したりして権利設定するし、まぁ、実際はかならずしもその単位ごとに取引されるとも限らないし、そのIDをどこで入手するのか方法が謎だし、そもそも存在するのかどうか分からんし、と、いろいろある。それであれば登記簿謄本の入手方法はずっと簡単で不動産番号はすでに広く使われているからってのもありますけれどもね。

以上っす。

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