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「あずる」

「あずる」とは『あず・る [動ラ五] 1. 手こずる。難儀する。〈広〉 2. 自動車の車輪が積雪にはまり自力で脱出困難になる。』(Weblio辞書)を意味する北海道方言。


ようやく冬も終わりを迎え、日中の最高気温もプラスとなり、積雪は融けてザクザクからグシャグシャという状態になった。そんな中、軽四で配達があった。このとき荷物は2Lのペットボトル6本入りを2ケース。

配達先のアパート付近へ到着したところで、「アパートの入り口前に停めて荷物の運搬を少しでも楽にしようか」「アパートの駐車場がザクザクだったらマズいな。路上に停めて荷物を運ぼうか」と躊躇したときにアパートの駐車場へ侵入。

「あっ」と思った瞬間、軽四があずってしまった。

アクセルを踏み込むとタイヤがクルクルと回転しているのが分かる。Dレンジ、Rレンジに入れてもクルマは前後しない。完全に終った。

電話して応援を頼もうかと思ったところ、前方から見知らぬ男性がやってきた。「押しましょうか」と言ってくれた。「お願いします!」と返答する。

ボクが乗車してアクセルを踏み、男性が車体を押してくれた。難なくクルマは後方へバックできた。

ボクはお礼を言い、男性は戻っていった。見ると、隣りのアパートの住人のようだ。きっとエンジン音を耳にし、「クルマがあずったな」と来てくれたのだろう。この街にはこういう人がときどきいる。ホント、感謝しかない。


局に帰り、同僚にこの話をしたところ「あずった?」と言われた。このときはじめて「あずる」という方言を憶えた。


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