自立と依存先の数とSPOF
依存先を増やす
自立とは依存先の数を増やすことだ、という言説を見かけるようになった。最初に見たのは、熊谷晋一郎氏が震災時にエレベーターで屋外に避難できなかったときのエピソードだったと思う。研究室から屋外への、唯一の避難経路であるエレベーターが停止したため、すぐに屋外退避ができなかったという話だ。
エレベーターだけでなく、階段にも依存していれば避難できたのに、というような話だった。いま、ざっとググったら「依存先を分散させる」という言い方をしているようだ。
その影響なのか、たまたまなのか、それとも以前からあったのか、「自立とは依存先を増やすことだ」という意見や、そのシェアをよく見かける。
でも、増やすという表現では、状況を適切に説明できていないように見える。避難をするにあたって、屋上までの階段とヘリコプターの両方に依存している場合、いずれかがひとつでもアウトだと、全体がアウトになるからだ。それはまったく自立ではない。たぶん分かってるんだろうけど、「増やす」ではうまく説明できてないんじゃないかと思う。
より正確に表す言い方
ウェブサービスだとかの文脈には、適切な表現がある。単一障害点をなくす、あるいは、冗長化をする、だ。単一障害点をなくすことと冗長化することは、必ずしも同義ではないかも知れないけれど、 依存先を増やす・分散させるよりは、より正確だと思う。
依存先の数自体が問題なのではない。あるひとつの依存先へのアクセスが絶たれても、全体がストップしない、ということが大事なのだ。
エレベーターと階段しかない建物において、車椅子の人にとってエレベーターは避難における単一障害点だ。屋上への階段とヘリコプターしか避難経路がないときには、階段もヘリコプターのいずれもが単一障害点だ。
依存先の数自体が問題なのではない。単一障害点の数が問題なのだ。
仕事場での単一障害点
で、組織で仕事をするときに、自分にしかできないことがあると、自分が単一障害点になる。これは、グッドニュースでもありバッドニュースでもある。自分にしかできない仕事があって、かつ、それがクリティカルな業務の要素であれば、自分はなかなかクビになりにくい。組織での発言力を確保しやすい。
一方で、死ぬほど忙しくなったとき、自分にしかできない仕事があると、それを委譲できない。そのため、その仕事が糞つまらない場合でも、いつまでたっても、他のことができない。
単一障害点の解消には、冗長化をすることになるであろう。自分以外でも、その作業が進められるようにする。それは、同僚でもできるようにすることかも知れないし、アウトソーシングかも知れないし、自動化かも知れない。
そうやって自分にしかできないことを無くしていくと、組織は私から自立していく、と言える。逆は必ずしも真ではないけれど。
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