僕の失恋の坊主頭を見たT君は…
〇 あの夏の日の出来事
あれは忘れもしない中学校3年生の7月。夏休みに入ったタイミングで、僕は意中のRちゃんをスターウォーズの映画に誘って玉砕。失意の僕は、髪の毛を坊主頭にしました。さて、ここからが話の本題です。
サッカー部だった僕たちは中学生活の集大成として夏の大会に臨もうとしていました。我々は優勝候補の一角を占めていたものの、烏丸中学、五条中学などの強豪中学たちは大きな脅威です。
Rちゃんに振られて丸刈りにした僕はとぼとぼと練習へと参加しました。それをフォワードの柱であったT君が目にして叫びました。
「おい。みんな!西田を見ろ!」
僕は、びっくりして、目を白黒させます。T君は続けます。
「西田はこんなに気合を入れて夏の大会に賭けとるんや!俺たちも、もっと本気ださなあかんで!!!」
僕は「こ、これはちゃうねん。そやないねん。」とも今さら言い出せず、「お、おう!」とあいまいな返事をしました。
僕の坊主頭が皆の気合につながったのかは不明ですが、最後は強豪校3校の総当たり戦になり、見事わが中学が京都市内優勝を果たしたのでした。蛇足ですが僕のポジションはゴールキーパーでした。
〇 人は、事実を自分の枠で解釈する
T君にとっては、「西田の坊主頭=気合」であって、事実そのものだったでしょう。しかし、実際はT君が彼なりの枠で、事実を解釈した結果です。
ちなみにT君は明るくイケメンのモテモテ男であり、「振られて坊主頭」という話は彼の辞書にはなかったでしょう。また、彼のその後の人生を見ると、サッカーに対して超本気だったことが少なくとも後付けでわかります。
失恋の坊主頭が気合の印に見えたT君の叫びは、僕にとっては気恥ずかしさを、そしてチームにとっては若干の戦意の向上をもたらしたかもしれません。つまり悪い結果を呼び込んだわけではありません。これはむしろ例外です。
思い込みによる事実の解釈が害をもたらすことが頻繁に生じます。
「この勉強会に2回欠席するなんて、Aは俺たちのことを馬鹿にしている」
「この事業の撤退を言い出したら、それを始めた会長は激怒するに決まっている」
「ネット広告代理店なんて、電博から見たらゴミみたいな商売だよね。」(2000年当時)
岡目八目というように、当事者ではない人たちには、それが思い込みかもしれないことがよく見えます。それを論理的に説得するのが経営コンサルタントの仕事。それに自ら気づいてもらうきっかけを提供するのがコーチの仕事です。ではどうすれば良いのか。
百戦錬磨のコーチの皆さんは、それぞれの答えをお持ちだと思います。ここではプロセスワークコーチングらしさが全面に出た、ロールをスイッチする方法をご紹介します。
平たく言うと、別人になってもらう方法です。クライアントが尊敬している人物だったり、直面している課題を解決する達人が良いでしょう。その人をXさんとします。オンラインでコーチングする場合は、例えば画面の左が本人の場所とします。そして画面の右がXさんの場所であり、そこに移動してもらってXさんになり切ってもらいます。その人の振る舞いや口癖を真似てもらうのも良いでしょう。そしてXさんのまま、画面の左にいるであろう本人に対して「その事実がどう見えるか」、「どう対処したら良いか」をアドバイスしてもらいます。多くの場合、劇的な気づきが起きるでしょう。
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