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【読んだ本】 デザインが日本を変える/前田育男

この本を一言で言うと...

世界一のデザインの車をつくりあげたマツダ・前田育男のデザイン論(言葉論・ブランド論・組織論・ものづくり論)が学べる本

読むべき人は...

① プロダクト・サービスのデザインや企画に関わる人

② 企業のブランディングに関わる人

読んで学んだことは...

① デザインは「カタチ」と「言葉」で理解される

「カタチ」と共にそれを体現する正確な「言葉」があることで、デザインはより明確になり、人に伝わりやすくなる。
「カタチ」で感性やイメージを伝え「言葉」でロジックを補強する。これによりストンと腑に落ち「理解」に結びつく。

※マツダのデザインテーマ(デザインの哲学のようなもの)は、カタチと共に「魂動(こどう)」という言葉で表現されている。

② 抽象的な言葉を使うことで、デザインの可能性を広げる

マツダのデザインテーマ「魂動」は、具体的なデザインを規定しているわけではない。「魂を揺さぶる」「車に命を吹き込む」という抽象的な意味を持つ言葉であるからこそ、メンバーの創造力を掻き立て、枠に問われない期待以上のデザインを生み出すことができている。

③「ブランド」は商品や社員が変わろうとも永遠に生き続けるものであり、最上位概念である

ブランドは企業にとって経営と同じくらい重要なものであり、実際に売っている商品よりも上位に位置する。なぜなら商品や社員が入れ替わってもブランドは続いていくから。だから、企業の商品やインフラ、社員のスキルやマンパワーは、すべてブランドに向けて機能しなければいけない。

④ 最高のブランドを作るには、まず最高の作品を作らなければいけない

作品そのものが素晴らしいから多くの人が敬意(リスペクト)を表し、感動が生まれ、そこに信頼(=ブランド)が生まれる。まず、本質である作品(プロダクトやサービス)において抜きんでることが重要である。

⑤「感動」ほど人を動かす促進剤はない。社内であっても感動を生み出す機会に手を抜かない。

人を動かし人を結びつける力は理屈ではなく、感動である。頭で理解させるより心を動かすメッセージを意識する。また、それが社内であってもきちんとしたプレゼンテーションや演出によって、メンバーと感動を共有する。それによって、メンバーは共に何かをつくる仲間・同志に変わる。

読んで思ったことは...

デザインが持つ力の深遠さを肌で感じることができる一冊

この本を読むまでマツダについての知識はほとんどなかった(ワールド・カー・オブ・ザ・イヤーなどをたくさん受賞してるとか全く知らなかった)。

そんな自分でも「最近のマツダの車のデザインはかっこいい」という認識はあった。うんざりするようなデザインの車ばかりが車道を走る中で「お、かっこいいな」と思う車はマツダの車であることが多かった。また、この本で紹介されているコンセプトカーのVision Coupeのデザインを見て「めちゃかっこいい!」と素直に心が揺さぶられた。

車に大した興味がない自分であっても、マツダの車を見て、心が踊り、マツダというブランドが意識に刷り込まれた。これが「デザイン」が持つ力。理屈だけでは成し得ない、敬意・感動・賞賛を人の心に巻き起こすことができる「デザイン」の力を肌で感じた。

また、この「デザイン」は一朝一夕でつくることができるものでもなければ、他者をマネしてできるものでもない。じっくりと練り上げられた思考や、組織全体に染み渡った血によって、時間をかけてできあがる深遠なものである、ということもこの本で再認識。

さらに興味深かったのは「顧客の声」に基づいたプロダクトづくりでは、本当によりものはつくれないという考え方。マーケティング主導のものづくりでは、そこそこ売れるものはつくれても、圧倒的に良いものはつくれない。この考え方は他の本(デザインの次に来るものなど)でも度々言及されていて、「デザイン」に要求される主体的な態度について考えさせられた。

いつか事業会社でじっくりこういうの挑戦してみたいなぁと素直に思う。


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