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【おすすめの本】 デザインのデザイン/原 研哉

どのようなことが学べる本か

原研哉が考える「デザイン」とは何か

※ 原研哉:グラフィックデザイナー。長野五輪の開閉会式プログラムや愛知万博のプロモーションを担当。無印良品のボードメンバーとして各種広告を手がける。

どのような人にオススメか

① デザインに対する認識を深めたいデザイナー

② 日本のトップデザイナーの思考回路を覗き見たい非デザイナー

どのような内容か

① デザインとは、見慣れたモノを未知化し価値を再発見することである。
平凡に見える生活の隙間からしなやかで驚くべき発想を次々に取り出す独創性こそデザインである。

② デザインとは、受け手の脳の中に情報の構築を行うことである。
視覚・触角・聴覚・嗅覚・味覚、それらの複合によってもたらされる情報を脳の中で構築し、イメージを出現させることである。

③ デザインは、市場の「文化レベル」「美意識」「欲望の質」を高めることができる(欲望のエデュケーション)。
長期的な商品優位性を獲得するため、市場の文化レベルを高めるマーケティングをデザインするべきである。

④ 日本ならではの佇まいに目を向けてデザインを行うべきである。
日本の美意識は、辺境ならでは独自性や、成熟した文化圏ならではのエレガンスさを持っている。世界的な活況に無理に歩調を合わせるべきではない。

⑤ デザインは「情報の質」を高めることである。
情報の分かりやすさ・独創性・快適さなどの質を高めることで、情報に力が生まれる。

読んで思ったこと

① 素晴らしい本だった。デザイナーにも非デザイナーにもぜひ読んでほしい一冊。

② 日々の雑踏の中で忘れかけていた、自分の中の「美意識」や「上質な感性」が呼び覚まされる一冊だった。内容もさることながら、原さんの文章表現や言葉選びの美しさが素晴らしい。また、本の装丁やページ1枚1枚の紙質・手ざわりまで、良質な読書体験が意識的に追求されている素晴らしい一冊だった。
この点だけでも、多くの人に読んでほしい価値ある本だと思う。

③ また、全編にわたって原さんの言語化能力の高さに圧倒された。そして、言語化能力は、物事や事象に対する認識の深さに比例するのだと思い知らされた。
冒頭で語られているように、例えば日常で見慣れている「コップ」ひとつとっても、それを未知なるものとして捉え「どこからがコップでどこからが皿なのか」と考えてみることで、より一層コップというものを深く認識できる。
この認識能力(抽象化と具体化の行き来の能力)の高さが言語化の能力の源であり、デザインという捉えどころのない行為の道しるべになるのだと感じた。

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