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「法定割合」の罠

第22回 相続対策会議です。
相続トラブルにならないようにと用心される方は非常に多いのですが、要人と言いますか、慎重になりすぎて上手くいかないというケースもあります。
今回は、「民法に従って考えれば問題はないはず。」とお考えで困ったというケースをご紹介します。

父が死亡し、妻と子供4人が相続人。
相続財産は、自宅(建物と敷地)と預貯金。自宅が大半(おおむね90%)を占めています。
相続人が5人と多いこともありますが、妻が高齢であり、今から転居するのも嫌だというお考えがあります。
しかし、この相続人の中に「法定割合」に相当する財産をもらいたい、と強硬に主張する人物がいました。
その方は、兄弟の中でも一番の出来と言われ、学校も勤め先もたいへん立派なモノでした。その方に何か言われると、他の兄弟は、ある意味で「丸め込まれる」感じになっているのです。
その方は、長男ではないけど「リーダー的」な存在感を出しており、子供のころから、自分の言うことが正しいという感じを周囲に発していました。
「相続財産を法定割合でいただきたい」というのは、今回のケースでは1/8となります。
この1/8程度の金額、全体から見れば影響は少ないと思うかもしれません。しかし、こちらの家族の相続では、自宅を残したまま現預金などで分けるとなるとたいへんな状況です。
自宅を共有とする考えもありますが、「自宅の所有権を共有として付けるというのは、実際には相続財産をもらっていないと同義だ!」と言って引き下がりません。
どうにかしてでも1/8相当の財産をもらうと言っては、他の相続人を困らせる始末。他の相続人は、「お前の方が、賢いんだから、お前が良い案を出せ!」と言って、溝を作り始めたのです。
だんだんと「強引な主張をする方」VS「他の相続人」というような、争いの構図が見え始めたのです。
遺産分割がうまくできないと、弁護士へお願いすることになりますが、弁護士に依頼しても「法定割合で分けましょう」という結論になるだけで、特に具体的な案を出していただけるケースは少ないと聞きます。
結局、相続人ひとりに約1/8の財産を渡すために、他の兄弟からお金を集めるという資金繰りをすることとなりました。
兄弟は、強硬に主張してきた方に対し、以前のような親しさはなくなり、子供のころ、頼りにしていたと思っていたのは、実は単に服従させられていたのではないか、という考え方へと変貌していくことに。
結局、強硬な主張をしていた方は孤立してしまうことに。

法定割合に拘るあまり、兄弟の仲が悪くなるというケースもあるということもあります。
法定割合を参考に「柔軟」に検討いただければと思います。


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