見出し画像

大学入試現代文の文学史&語彙対策テキスト①

僕の授業の宿題は基本的に毎日数分取り組むタイプの課題となっています。
この課題は(本来は縦書きで冊子形式で配布)高校生の語彙力対策向けに作ったもので、辞書調べと言葉の運用を毎日コツコツやるというシステムになっています。
関西では語句補充系の問題を出題する私学も多く、その練習という意味合いも兼ねて、その日調べた語句を空欄に補充するという形式を採用しています。

また受験生を見ていると、直前期になって文学史に苦戦する人が多く見受けられます。
文学史は丸暗記しようとしても中々難しいため、確認問題は基本的に文学史で問われる作者の文章を扱い、かつ解答にそれぞれの作者にまつわるエピソードをまとめるという形の構成としました。
語彙や文学史について悩んでいるという相談を受けたので、今回は僕の教材を試験的にアップしようと思います。
もし文学史や語彙の対策に困っている方がいらっしゃいましたらご活用ください。(需要があるならマガジンでシリーズ化しようかな)

6月4日

①均衡(きんこう)
意味(                             )
②契機(けいき)
意味(                             )
③媒介(ばいかい)
意味(                             )

練習1 次の文章中の空欄に当てはまる適切な語句を、上の①~③のなかから選んで答えなさい。

彼の人生は常に(A     )を保つことに焦点を当ててきた。彼は仕事と家庭の両方に同じくらいの時間を費やし、自分自身の時間を大切にしてきた。彼の人生の中でそれは最も重要な要素であった。彼が成功するためには、何か一つに偏ることなく全ての側面がバランスよく整っていることが絶対的に必要だった。

幼少期から彼女は人々を結びつけ、問題を解決するために仲介役としての役割を果たしてきた。彼女の友人たちは彼女が持つ(B     )としての性質に頼り、しばしば彼女の助けを求めてきた。彼女にとって、そのように頼られることは喜びでもあり、いつしか彼女の自信のよりどころとさえなっていた。

洋二郎は新たに始まる一大プロジェクトに招聘された。選ばれた際の彼の喜びは大きく、自分のスキルを試し、成長するチャンスとしてこれを受け入れた。彼の人生はこの時を(C     )として、新しい方向に向かって進んでいった。このプロジェクトは彼にとっての重要なものとなり、彼のキャリアに深い影響を与えることになった。

6月5日

①要衝(ようしょう)
意味(                             )
②酷薄(こくはく)
意味(                             )
③忌避(きひ)
意味(                             )

練習2 次の文章中の空欄に当てはまる適切な語句を、上の①~③のなかから選んで答えなさい。

その地域は昔から様々なうわさが絶えなかった。人々はその場所に足を踏み入れることを避け、その理由を語るときには謎めいた表情を浮かべた。何が起こっているのか、誰もが知りたがらず、それとなく皆が(A     )していた。その地域が抱える不穏な空気は、誰もが心を引き裂くような感覚をもたらした。

彼の言動には常に冷たさが漂い、周囲の人々に対する無関心さがにじみ出ていた。彼の表情には決して温かみがなく、彼の言葉には他人への配慮が感じられなかった。彼の(B     )な態度は、彼が孤立する一因となった。

その場所は戦略的に重要な(C     )だった。その地域は国境に近く、交通の中心でもあったため、戦略的な価値が非常に高かった。両国の間で継続的な緊張があり、その地域を制圧することは軍事的な優位性を持つことを意味していた。そのため両国は警備に余念がなかった。

6月6日

①享受(きょうじゅ)
意味(                             )
②踏襲(とうしゅう)
意味(                             )
③破竹(はちく)
意味(                             )

練習3 次の文章中の空欄に当てはまる適切な語句を、上の①~③のなかから選んで答えなさい。

彼女は生来、伝統を重んじる性格であった。彼女の祖先から受け継がれた価値観や習慣は彼女にとって貴重なものであると考え、彼女はそれを大切に守り続けた。彼女は自分の人生においてもその伝統を守り、(A     )することで、家族の歴史と結びついていた。

山々や海、森林など、どんな自然の景色も朔太郎にとっては心を癒すものであり、彼の日常生活に欠かせない存在だった。彼は毎週末、自然に囲まれた場所に出かけて、その美しい景色を(B     )した。

小太郎は一度目標を設定すると、そのために全力を尽くし、障害を乗り越えて進んでいった。彼の勢いは止まることを知らず、どんどん成果を上げていった。彼の(C     )の勢いは周囲にも感染し、彼の成功は誰もが認めるものとなった。

6月7日

①浅慮(せんりょ)
意味(                             )
②氷解(ひょうかい)
意味(                             )
③昔日(せきじつ)
意味(                             )

練習4 次の文章中の空欄に当てはまる適切な語句を、上の①~③のなかから選んで答えなさい。

当時の私はその時の状況にばかり意識がとらわれ、将来の影響も考慮せずに行動してばかりいた。その結果、すぐに壁にぶつかり、そのたびに後悔と失敗に直面し、自分の(A     )さを痛感していた。その時の自分を振り返ると、今でも恥ずかしさに赤面する。

彼女は珍しく思い出にひたりながら、静かな夕暮れを過ごしていた。彼女の心は過去の出来事や人々で満たされ、懐かしい記憶が心を温めた。(B     )の友情や愛情は彼女にとって宝物であり、その思い出が彼女の孤独を癒していた。

長い間続いた誤解や争いが、やがて解けていった。お互いの心を開き、素直な気持ちを伝えることで、彼らの関係は再び絆を取り戻した。数十年の時を経て、二人の間にあった壁はついに(C     )した。これからはもう一度、新たなスタートを切ることができるだろう。

6月8日

①タブー
意味(                             )
②アジール
意味(                             )
③レトリック
意味(                             )

練習5 次の文章中の空欄に当てはまる適切な語句を、上の①~③のなかから選んで答えなさい。

三十年ほど前までは毎年約二十万人もの浪人生が発生しており、その大半を予備校が世話していた。もし予備校がなければ毎年二十万人の行き場を失った若者が野に放たれていたことになる。その頃の予備校は確かに大きな利益を上げていたが、一方で社会の治安維持装置や若者たちの(A     )としての役割も果たしていたのも事実である。

彼女はそのトピックについて話すことを(B     )と考えていた。周囲の人々がそれを話題にするたび、彼女は自由に自分の意見を述べることを躊躇した。そのトピックは彼女にとって感情的な壁を作り出し、コミュニケーションの障害となっていた。

彼の言葉選びや立ち振る舞いはいちいち周囲を魅了した。何気ない会話の中でも単なる事実を述べるだけでなく、情感を揺さぶる言葉を好んで使っていた。その(C     )の巧みさはその場の人々を知らず知らずのうちに引き込み、だれもが彼のとりこになっていた。

6月9日

確認問題 次の空欄に入る語を後から選び答えなさい。

(1)万事偶然の働いた悪戯で、何等策略もなく第一お前の家のチンピラ娘に惚れるやうな(     )はしないと一々証拠を列挙して書いたのだが、然しこちらを甜なめてかかつた相手に向つて正面から、返答するのも気の利かない話だから、目下頻りに考へ中でまだ手紙は投函しないのだ。
『西東』坂口安吾

(2)「なるほど少し妙だね」と鈴木君はどこまでも調子を合せる。「しかるについ両三日前に至って、美学研究の際ふとその理由を発見したので多年の疑団(ぎだん)は一度に(     )。漆桶(しっつう)を抜くがごとく痛快なる悟りを得て歓天喜地の至境に達したのさ」
『吾輩は猫である』夏目漱石

(3)すなわちもともと人の必要から発生した地名であるとすれば、人間生活との交渉が何々八景・何々十二勝よりもいっそう痛切であるべきはずである。またかりに前住民の用いたものを(     )したとしてもその相続は吾々が野原で矢の根石を拾うなどとは事変り、幾度か耳に聞いてこれに習熟しなければならぬ。
『地名の研究』柳田國男

(4)
思ひなき、おもひを思ふわが胸は
閉ざされて、醺(かび)生ゆる手匣にこそはさも似たれ
しらけたる脣(くち)、乾きし頬
(     )の、これな寂莫(しじま)にほとぶなり……
『山羊の歌』中原中也


(5) 芸術的効果の感得と云うものは、われわれがより個性を尊重するとき明瞭に独断的なものである。従って個性を異にするわれわれの感覚的(     )もまた、各個の感性的直感の相違によりてなお一段と独断的なものである。
『新感覚論』横光利一


選択肢

タブー  要衝   契機   酷薄
浅慮    踏襲   均衡
昔日   氷解   忌避   享受

答え

練習1 A 均衡 B 媒介 C 契機
練習2 A 忌避 B 酷薄 C 要衝  
練習3 A 踏襲 B 享受 C 破竹
練習4 A 浅慮 B 昔日 C 氷解
練習5 A アジール B タブー C レトリック

確認問題
① 浅慮     ② 氷解     ③ 踏襲  
④ 酷薄     ⑤ 享受

文学史解説

・坂口 安吾(1906-1955)
代表作には 『風博士』、『日本文化私観』、『堕落論』、『白痴』などがある。太宰治、織田作之助、石川淳らと共に、無頼派・新戯作派と呼ばれた昭和の近現代日本文学を代表する小説家の一人。

・夏目漱石(1867-1916)
代表作には『坊っちゃん』や『こころ』があり、特に『こころ』は彼の代表作として知られている。『吾輩は猫である』は、夏目漱石の長編小説であり、処女小説で、1905年に『ホトトギス』にて発表された。

・柳田國男(1875-1962)
 日本の民俗学者・官僚。「日本人とは何か」という問いの答えを求め、日本列島各地や当時の日本領の外地を調査旅行した民俗学の開拓者。『遠野物語』や『蝸牛考』などを残す。


・中原 中也(1907- 1937)
 日本の詩人であり、親からは医者になることを期待されていた。三十歳の若さで死去したが、生涯で三百五十篇以上の詩を残す。『山羊の歌』や『在りし日の歌』、また訳詩である『ランボオ詩集』が有名。

・横光利一(1898-1947)
代表作には『日輪』、『蠅』、『春は馬車に乗って』、『機械』などがある。菊池寛に師事し、川端康成と共に新感覚派として大正から昭和にかけて活躍した。『日輪』と『蠅』で鮮烈なデビューを果たす。

確認テスト

語彙確認テスト
次の空欄に入る語を後から選び答えなさい。

(1)こうしたことが二三度あって、私は幼いながらにも母のことは、決して口にしてはならないのだと会得した。父は私が大きくなっても母に関することは一言も語ろうとせず、また私もあえて聞こうともしなかった。私がこの問題を父の前に提出しなかったのは、それが父には(     )であることを熟知しているからに外ならなかった。  
「ある完全犯罪人の手記」酒井嘉七


(2)どうせ人間百年は生きられないのであるから、こういう歓びを(     )しなくてはつまらないと、すっかり度胸をきめて、この頃は悪びれずに書くことにしている。ところが、最近そういうささやかな歓びとは、比較にならぬ大歓喜にめぐり遭って、いささか呆然とした。
「身辺雑記――『日本のこころ』を囲って――」中谷宇吉郎


(3)太古のすがた、そのままの蒼空(あおぞら)。みんなも、この蒼空にだまされぬがいい。これほど人間に(     )なすがたがないのだ。おまえは、私に一箇の銅貨をさえ与えたことがなかった。おれは死ぬるともおまえを拝まぬ。  
「めくら草紙」太宰治

(4)第二次大戰起り、ドイツのフランス、イギリスにたいする緒戰の壓倒的勝利、さてはドイツの(     )の進撃にたいするソ連の頑強なる抵抗を見るにおよんで、自由主義をもつてしては到底統制主義の高き能率に匹敵し得ざることを認め、急速に方向を轉換するに到つた。
「新日本の進路 石原莞爾將軍の遺書」石原莞爾

(5)ただ写楽の人物の顔の輪郭だけは、よほど写実的に進歩した複雑さを示していると同時に、純粋な線の音楽としての美しさを傷つける恐れがあるのを、巧妙に救助しているのは彼の絵に現われる手や指の曲線である。これが顔の線と巧みに(     )を保ってそのためにかえって複雑な音楽的の美しさを高調している。
「浮世絵の曲線」寺田寅彦

選択肢

均衡   要衝   破竹   タブー
契機   酷薄   浅慮   アジール
媒介   享受   昔日   レトリック

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?