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ヤマハYB-1とYB-1 Fourの違い、見分け方、どっちがいいの?

ヤマハ製2ストバイクの歴史を共に歩み、1999年モデルを最後に引退した2ストロークエンジン搭載のYB-1、翌2000年にメイト系4ストロークエンジンを搭載して新たに登場したYB-1 Four
一見すると同じようなモデルに思えますが、バイクの魅力のコアと言える存在であるエンジンが変わった事により、エンジンのテイストやメンテナンス・カスタムの内容といった実質的な部分は大きく変わりました。
本項では、YB-1とYB-1 Fourの違いと簡単な見分け方、加えてYB-1オーナー予備軍の人なら特に気になるであろう「2スト4ストどっちがいいの?」についても触れていきます。

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YB-1とYB-1 Fourの違いについて

興味ない人からすれば非常にどうでもいいレベルの外観的差異しかない

まずはYB-1とYB-1 Fourの違いですが、上の画像を見てもらえばわかる通り、デザイン上はカラーリングとエンブレム位しか差別化されておらず、モデルチェンジの核といえるエンジン回りも一見すると似てはいますが…構成と構造は全くの別物です。

①エンジンの違い

両者のエンジンを拡大して並べてみました。
見た目のみならず、形式も
YB-1:ロータリーディスクバルブ式空冷2ストロークエンジン
YB-1 Four:OHC式空冷4ストロークエンジン

と全く異なっており、2ストではクランクケース右側前部に内蔵されているキャブレターが4ストではエアクリーナーBOXにのめり込み、2ストでは開閉可能だった2ストオイルタンクは4ストだと(簡単には)開閉不能となり、吸気ダクトがオイルタンク跡地まで伸びているのがわかります。

(引用元:ヤマハ発動機)

この若干無理矢理にも思える吸気レイアウトは、YB-1に繋がるYB50一族が1960年代のF-5シリーズからずっと車体デザイン上の大きなアクセントにし、側面をメッキ仕上げにしてきたエアクリーナーBOXの位置及びデザインテイストを死守するためだと思われ、デザインにこだわるヤマハらしい部分だといえます。
しかしながら、デザイン重視の皺寄せは「エアクリーナーBOXの容積大幅減少」「エアフィルターエレメントの大幅小型化」という形で現れており、吸気エア量の余裕がなくなってしまいました。少しでも吸気系の容積を稼ぐためか、オイルタンク跡地の中に側面からダクトを伸ばしています。
逆に2ストの方は、50ccとしては過大といえる程のエアフィルターエレメントと余裕たっぷりのエアクリーナーBOX容量と吸気レイアウト的に良好な吸入経路を持ち、エンジン回転数やスロットル開度を問わず、ゆとりのある吸気を可能にしています。

もし、YB-1 Fourの吸気系設計において、デザインにこだわらず合理性と効率を考えたレイアウトにすると

ベンリーはベンリーでよき

まんまベンリー号になってしまうので、それはヤマハ的に避けたかった事でしょうし。
この辺りの問題は、そもそもYB-1 Fourの7ボーンフレームが「2ストエンジンありき」でパッケージングされた…という経緯ゆえ止むを得ない限界だともいえ、最初から横型4ストエンジンを積むために構築されたCD50一族のフレームには敵わない点なのです。

ベンリー号の名前が出たついでに書きますが、YB-1Fourのエンジンにはどういう訳かCD50含む「鉄カブ」系列の横型OHCエンジン用マフラーがそのまま装着可能です。
これは要するにフランジ回りの寸法が同一という事で、ヤマハが狙ったのか偶然なのかは定かではありませんが、YB-1 Fourのマフラーをカスタムする際には選択肢が広くなるのでメリットといえなくもありません。
(勿論、マフラーステーの寸法は異なる可能性があるので工夫が要ります)

逆に2ストの方は、2022年時点で最後の市販対応マフラー「ルーニーチャンバー」が絶版となってしまいましたが再販を果たしました。
とはいえ相変わらず少数生産品のため、マフラー交換の際にはルーニーチャンバーの在庫がなければ中古品やデッドストック品を探すか、オーダーメイドするしか手がありません。

デザインはいいんだけど腰上を弄る時は外す事が多い

また、YB-1のデザイン上の大きな特色となっているダウンチューブは2ストエンジン自体を下部ステーとして用い、コンパクトな空冷2ストエンジンのヘッド寸法を前提に作られているので、複雑なバルブ・カム機構を搭載してヘッドが大型化した4ストエンジンには対応していません。

FS1DX。出会いがあれば是非欲しいしポイント磨きたい

余談ですが、このダウンチューブ自体は1970年代のFS-1系列で既に採用されており、何気にFS-1の血筋を引く由緒ある(?)パーツでもあります。

②足回りとミッションの違い

よーく見るとドラムがほんのり大径化されてるのがわかる

まず足回りについてですが、YB-1 Fourになった際に前後ドラムブレーキが20mm大径化されており、ブレーキシューの接触面積が増大した事でフィーリングや制動能力が少し改善されました。
それに加えホイールベースが25mm伸び、トレール量が1mm減少しています。
これらの変更を屁理屈で言えば「フロントホイールで直進安定性を稼ぐよりもホイールベース延長で安定性を確保、フロントブレーキを使う際の安心感が気持ち増した?ので、より”現代的な”乗り方に対応した」といった感じになるのでしょうが、そもそもタイヤサイズも前後サスも変わってませんので、フィーリングがちょっと変わったのかな?レベルだと思われます。
(筆者個人の印象では制動力以外変化を感じませんでした)
とはいえ、ぶっちゃげYB-1 Fourのドラムブレーキがメチャクチャ効くのかといえばそんな事はありませんでしたので、制動力については2ストでも4ストでも過信禁物なのは変わりません。

なお、このブレーキ強化により、2ストと4ストでは前後共にブレーキシューの互換性がありません。ご注意下さい。

リターン式ミッション…なんだけど???

一方、ミッションはどちらも4速ながら大きな変更点があります。
それは「ロータリー式からリターン式になった」という点です。

YB-1に搭載されている昔ながらの「ロータリー式ミッション」は、前に踏み込んでシフトアップ・後ろに踏み込んでシフトダウンという動作を無限に繰り返せるのが特徴で、トップギア(4速)から前に踏み込むとニュートラルに戻ります。
この形式の特徴としては動作が非常にシンプルでわかりやすく、4速で走っていて信号等のため停車する際、一度踏み込むだけで「トップギアから一発で確実にニュートラルを出せる」という、街乗りでは馬鹿にできない大きなメリットを持ちます。
しかしながら一般的なバイクのミッションは「リターン式」であり、ロータリー式とはシフトアップ・ダウン操作が真逆なためシフト操作ミスを起こしがちで、慣れが必要なのが大きな欠点とされます。

一方、YB-1 Fourは「リターン式ミッション」なのですが…実は、教習所のMT免許講習で習う「一般的なリターン式ミッション」とはかなり操作方法が変わっています。
一般的なリターンミッションだと
1速→N→2速→3速→4速…
といった具合に、1速と2速の間にニュートラルがありますが、YB-1 Fourの場合だと
N→1速→2速→3速→4速
と、ギアの一番下がニュートラルになっています。
これは「ボトムニュートラル」というもので、大昔のバイクでは結構あったのですが今はマイナーな存在です。
しかもリターン式でありながらシフトアップ時は(ロータリー式同様)前に踏み込むという、いわゆる「逆シフト」形式となっており、こんな所でレーシーな逆シフトにされても正直戸惑うのですが…恐らくはロータリー式に操作を似せる事で違和感を払拭しようとしたものと思われます。
そういう訳で、こちらはこちらで慣れが要るのに加え、4速走行からの停車時に(普通のリターン式ミッション搭載バイクがそうであるように)ちょっと忙しくなってしまった事がデメリットと言えるかもしれません。

見分け方について

「YB-1を見かけたらエンジンを見る」クセが付けば区別はカンタン

続いて「YB-1とYB-1 Fourの見分け方」ですが、カスタム率の高いYB-1&Fourでカラーリングやマフラーの違いを挙げるのはあまり意味がありませんし、ブレーキのサイズアップも誤差レベルでしかありませんので、
やはりエンジンとエアクリーナーBOXの違いで確認するのが確実ですし、純正ダウンチューブが(純正まんまの形式・レイアウトで)付いていればその個体は2ストという事になります。

あと余談ながら…YB-1 Fourではヘッドライトが若干明るくなりましたが、時代が時代なのでLEDではなくハロゲン球です。

それで結局、YB-1とYB-1 Four、どっちがいいの?

まさに運命の選択

結論を先に書きますと、2ストエンジンとF5シリーズ〜YB50の一族にロマンを感じないマトモな人はYB-1 Fourを選んだ方が無難です。
速さで言っても、TT-R50用チューニングパーツやボアアップキットを用いる事ができ、最大108ccまでボアアップ可能なYB-1 Fourの方が伸び代があるといえます。鉄フレームOHCカブ系マフラーを軽い加工で装着可能というメリットも大きいです。
(別項でも触れましたが、YB-1のボアアップ可能排気量は60cc台まで)

2ストオイルの補充は不要ですし、臭くて地球にやさしくない白煙は出ませんし、燃費もいいですし、排気音も2ストと違って比較的骨太で重低音に富むものです。

皆さん、YB-1 Fourで楽しくエコなバイクライフを送りましょう!


などいう締めになるわけもなく

でも2スト最高( ˘ω˘ )

理屈ではありません。
そもそも、バイクの魅力は理屈じゃ語り尽くせません。

敢えて理屈っぽく書けば、1960年代に生まれて1990年代のYB-1に継承された美しい7ボーンフレームは、コンパクトで元気なロータリーディスクバ
ルブ式2ストエンジンを積む前提で絶妙のバランスにてパッケージングされていますので、筆者の個人的な意見にはなりますが…
やっぱりYB-1には2ストエンジンがジャストフィットだと思うのです。
それ以前に、この2ストエンジンがかわいい
ですし、車体との絶妙なマッチングによる小気味良い走りも楽しくて仕方ありません。

当「落人村」は引き続き、2ストYB-1を含む2ストバイクの情報配信を行い、地球に厳しく自身とバイクに甘い優しい、選ばれし変態ライダーの皆さんをひっそりと応援していきます。

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