構造審査よもやま話 第8話 ~そのうち特定急勾配屋根とか出来たりして~

その場しのぎの言い逃れとかもね。




告示594号第2第三号ホ
条文は省略、特定緩勾配屋根の話

いきなり余談ですが法律の改正は基本的に現行法を残して改正部分を後付けしていくので「特定」という言葉がむやみに使われがちです。

いったんサラに戻して整理すれば分かりやすくなるのですが他の条文で引用されてたりすると難しいのでしょうか。


その視点で旧38条を考えると、確かに大変だったね、ってか今でも旧38条を引き合いに出さないと解説できないことあるもんね。

分かりづらいと文句を言うことは簡単だけど、法文を作る立場の人は恐らく、いや、確実に私より勉強が遥かに出来る人。
そんな人が作るのだからさ、何かしら理由があるのですよ。南無。



さて、たかが勾配が緩いだけで特定と名指しされた特定緩勾配屋根ですが
屋根の勾配が緩い場合、積雪がなかなか滑り出さず、またその間に雨が降ったりすると雪の重さが増えてしまうことから平成30年?法律が改正され積雪荷重を割り増して考慮することが必要になりました。

大スパン、かつ、緩勾配、かつ、屋根重量が軽いものが対象で
簡単に言うと勾配が緩いほど、また、スパンが長いほど、割増が大きくなります。


工場などを設計されている方は内容が直結するので動き出しが早く
改正法が施行される前に改正内容を取り込んだ計算書が出てくるようになりました。

一般の案件においても、改正されたなら仕方がない、雪くらい増えても問題ない
という設計者が多かったのではないかと思います。

現に少なくない方が「勾配2度」と決め打ちして計算を楽にしている印象です。

(2度が最も割増が厳しくなるのです)

私はエクセル作りました、少しややこしかったですが以後ずっと使えて便利です。


カーポートのメーカー様は苦労されましたかね。そもそも雪を考えてなかったのであれば同情の余地なしですが。

また既存不適格の増築界隈では、不適格条項に使えるか、また改正法で持つのか影響が大なり小なりあったかと存じます。




今日の本題「屋根重量が軽い」とは。

法文においては「鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート以外」とあるので折版やデッキなど鉄骨が対象なのですが
さてここで合成デッキはどうなるのか、と設計者から質問を受けたことが有ります。


合成スラブ工業会のQ&Aを見てみましょう。

『デッキ合成スラブは、デッキプレートにコンクリートを打設した複合構造であり、鉄筋コンクリート造と同等と考えられます。よって、デッキ合成スラブは本告示の荷重割増の対象から外れるものと思われます。』



…その正誤はともかく、対象だってなったら自分たちに火の粉が飛んでくるもんね。

って印象です。



平成29年12月26日に公表されたパブコメの結果では

『屋根重量が軽く積雪荷重の変動の影響の大きい屋根構造を割り増しの対象とする趣旨であり、屋根版をデッキプレート版又は軽量気泡コンクリートパネル等、相対的に重量が軽い構造としたものは、割り増しして構造計算する必要があります。』

ってあるんですよ。

これだとALCが対象になってて、じゃあ合成デッキのコン薄いのもか、と推測されます。すなおに読んだらそうなる。
ひねくれて読めば、合成デッキは書いてない。
読み手の性格の良し悪しが問われますね。


某審査機関のアナウンスでは

『なお、屋根版が鉄筋コンクリート造の場合は適用の対象から除外されていますが、合成スラブの場合は、在来のRC造屋根版と比較して相対的に重量が軽いか重いかを、実況に応じて個別に判断する必要があります。非歩行屋根で、山上コンクリート厚が薄い場合などは、ご注意ください。』



やっぱり、この辺が落としどころだと思うんですよ。

もう少し具体的に言うと、

『長期で決まるのではなく割り増された積雪荷重による短期で決まる場合は、比較的軽い屋根に該当する』

って話がもっともらしいかもしれません。


そうなると50mmでもコンクリがあって、たいていの1.2倍程度なら長期で決まるかな、と。

(デッキ等300+コン50*24)*1.5=2250 > (デッキ等300+コン50*24)+20*30*1.2=2220




設計方針で「仮に割り増しても長期で決まる重量なので対象外とする」と説明あればこちらも了承出来るんですけどね、

「合成だから対象外である」と言われると「ホントに?」と立場上は確かめなくてはなりません。


言い方ひとつで変わるのでテクニックとして片隅に入れておいて欲しいと思う今日この頃です。






小手先のテクニックを駆使されると、それはそれで何とも言えないやるせなさを感じるのと同時に、騙されないように細かめに審査してしまうのですが。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?