構造審査よもやま話 第12話 ~適判に居ると時々は軽微変更を見たくなる~

キックバック言いそうになるから止めて。




認可済証が出た後の変更は、軽微変更か計画変更となるわけですが構造適判に関係するものは計画変更のみです。

良いか悪いかは別として、軽微変更は構造適判に提出する必要がありません。(その後に計画変更が無い場合)

というか構造適判は軽微変更を受け取る手続きを持っていません。



予定している変更が軽微変更か計画変更か、なかなか判断が難しいところではありますが
設計者様または確認機関様で判断し、軽微ならそのまま確認機関様と変更すれば良いし
計画変更なら構造適判にも提出して適合通知書を求めることになります。


判断の主体は検査済証を出す確認機関様なのです。軽微変更は法的に中間又は完了検査申請書の添付書類でして。




「これって軽微ですか?計画変更ですか?」という適判への問い合わせがそこそこあるんですよね。

分かるけど(適判に聞く気持ちも分かるし答えも分かるけど)残念ながら回答できないです、判定員なので。


誰が見ても明確なものであればアドバイスはします。

「9号だ」って確認さんに言えば軽微で通るよ、みたいな。


が、アドバイスしすぎると確認機関様の仕事と責任とリスクを増やしてしまうことに繋がります。

というのも普通に判断したら計画変更になりそうなものでも、頑張れば軽微で終わる可能性がある場合って結構多いのです。

しかしながらそれは私に関係ないところで確認機関と設計が責任を取ってね
ってことになりかねないので、私が軽微を勧めるのは二の足を踏むのです。




少し具体的な話にすると


①小梁のレベル変更
こちらは誰がどう見たって8号の位置の変更です。

②大梁のレベル変更
該当する号が無いため計画変更です。普通は。

③設備配管のレベル変更に伴う大梁レベルの変更
「一の変更」で軽微の可能性があります。

設備の位置変更が15号なので、それに伴う変更であれば軽微の枠組に入ることになります。


ただし該当する号があったとしても、建築基準関係規定への”適合が明らか”なことも必要です。

つまり言い換えると、”高度な計算や検討に拠らず確認できる”こと、
更に言い換えると、”電算を使うのはNG”なので手計算によって構造計算をしなければならない※ということです。

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※電算を「参考として」添付することは認められています。

ただし参考扱いなので、手計算の検討書は必須です。
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例えばレベル変更が50mm程度なら、全部材の検定比0.9以下よってOK、の文言くらいで逃げれますが

200mm、300mmだと流石に応力状態変わるよね、と言わざるを得ません。


私が「③使えば軽微になり得る」と思っても

・設計者に手計算を強いる
・確認機関にそれを審査することを強いる
・確認機関が監査を受けた際に妥当だったことを確認機関が証明しなければならない
・適判は一切無関係。


非常にリスキーですよね。手計算で解析なんて見落としないか怖くてしょうがない。

設計者も、このステップで軽微をあきらめる方が多いです。




私が確認機関に居た時の話ですが、

設計者さんがどうしても軽微にしたいという場合には必ず参考の電算も出してもらいました。

手計算はある程度適当でも電算でちゃんとやってれば軽微ヨシ、参考だけど。って流れで。

もちろんリスクも背負って口も出すのですが、確認の担当者の技術力?覚悟?に拠るかもしれません。

だって計画変更にさせれば、知恵を捻りだすことも不要で、怪しい手計算を一人で抱えることも無く、真っ当な電算を自分だけじゃなく適判も見てくれる。

良いことづくめ。




まぁ、どうしても軽微にしたい、は私も身に覚えがありすぎるもので、、、。出来るだけ希望に沿いたいとは思います。


設計してた時に「柱を2m水平に移動」を軽微変更したんですよ。

当時は参考として電算を廻すことが認められていなかったので本気のD値法と固定モーメント法でした。タイムスリップしたかと思った。

枠組もかなり無茶して、一の変更に一の変更を重ねたような。


今から考えるとあの時の確認機関の担当者様には頭が上がりませんね。私が審査業界に鞍替えした一因でもあります。





ここまで、出来るだけ軽微変更とすれば皆が喜ぶという前提の考えでお話ししたのですが

以前に構造設計さんから「軽微だと意匠事務所からお金がもらえない、計画変更だって言って欲しい」

と言われて目からウロコ。

そんな世界もあるのか。そりゃあるか。それ私に言って良かったのか。

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