構造審査よもやま話 第7話 ~構造は経験がものをいう世界、なんだけど。なんだけども。~

単にその言葉を言いたいだけ、という可能性は流石に無い、たぶん。




建築物の基礎が杭基礎(支持杭)の場合、隣地低減や外部コア杭や液状化とか、まぁ色々考えなければならないわけですが
その中の一つに「ネガティブフリクション」というものがあります。「負の摩擦力」とも言います。



一般的には、支持層が動かないものとして其処に杭を造成するわけで
杭が建物自重で沈み込もうとする時にそれを抑えようとして地盤と杭周面の間には摩擦力が生じます。

建物が沈まない向きなので上向きに働く摩擦力ですね。(対比して「正の摩擦力」なんて言ったりもします)
この上向きの摩擦力と杭先端の支持力を合算して杭の支持力が決まるのです。


ここで仮に地盤の方が何らかの原因で地盤沈下を起こした場合、杭を巻き込んで共に沈み込もうとしてしまいます。下向きですね。

これが「負の摩擦力」というもので、杭の支持力を大きく減じてしまうことになります。



たしか高校の近代史の教科書だったか、銀座で地盤沈下があって道路が下がってるのに建物は元のレベルのままだから入口に階段を付けた、なんて写真を見た記憶がありますが
あの建物は地盤沈下のぶん建物を沈ませようとしている力がかかっているので
はてさて、、まぁ、杭かどうかも知らないのですが。




ご年配の方々に多いのですが、このネガティブフリクションに十分注意を払われてる方が各所にいらっしゃいまして
何度となく「考慮するように」と助言でしたり指摘でしたりを頂きました。今でも頂くことあります。











無視してます。



いや、ちゃんと理由はあるんですよ。あと全無視じゃないっすよ。

諸先輩方はどうにも過剰反応?痛い目をみた経験?が強すぎるのでは、と思っております。



先ず、もう20年前の話になりますが私が在籍していた設計事務所では、指摘をされても拒否する方針でした。

曰く「地下水のくみ上げ等による広域な地盤沈下は現代では起きておらず、ネガティブフリクションは生じないものと考える」

それでも指摘するなら地盤調査報告書は提出しているのだから地盤沈下が起きるという指摘根拠を示してください、と暗に言っているものですね。


当時2000年くらいですか、少なくとも関東一円ではそのように言えたと考えます。他所はどうかな、分かりません。



関東でも例えばネズミの国あたりで地盤沈下の予測はありましたが、そこは別問題で液状化の可能性がある地域になりますので
そうなりますと液状化対策で摩擦考慮は元々しないので、仮にネガティブを見たとて。



で現在は2020年代となりますが、やはり地盤沈下を一般案件全てに考慮する必要は無いと考えます。

今は全国区で審査をさせて頂いているので、もしかしたら、と注意はしますが
お決まりのように「ネガティブフリクションは?」と指摘を出すのはやり過ぎではないかと思うのです。


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以前審査した案件では、市のHPに考慮する条件しない条件が明記されてて

『将来とも地下水の汲み上げによる地盤の沈下を考慮する必要のない地域に該当する地域は対象から除外しても支障ない』

とか、設計者の考え一つ・口先一つで外せんじゃね?とも思いましたがなんにせよルール化されているのは有難いですね。


基礎構造設計指針、がんばれ。


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ネガティブフリクション考慮派と議論をしたこともあるのですが
「国交省に言われたことがあるから」という反論しづらい理由を言われると指摘を受ける側はツラいなぁ、と。


もちろん私も100%無いと言い切ることはしませんが、やはり高度成長期の工場地帯であったり、銀座の例で言うと築地であったり、が問題だったわけで
地盤沈下起こすほど地下水くみ挙げている事例が今は想定しづらいと個人的には考えます。
もしあったらニュースになる、よねぇ?くみ上げ規制も出来てた、よねぇ?



私の方が「昭和フルイ、今チガウ」で考えが凝り固まっている側面もありますので結論としては案件ごとに考えましょう、という毒にも薬にもならないものでお茶を濁します。


このお茶なんか濁ってるな。


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