見出し画像

Unity1週間ゲームジャム「Re」で遊べる名作ゲーム

Unityを使って1週間でお題に沿ったゲームを作るイベント、Unity1週間ゲームジャムが開催されました。今回のお題は「Re」でした。

こちらから投稿された全てのゲームを遊ぶことができます。2022年12月30日時点で293作品ものゲームが投稿されています。現在評価期間中ですが、あまりにもたくさんの投稿数にどれから遊ぶか迷われる方もいると思うので、個人的にオススメと感じた作品を紹介させていただきます。

というのは建前で、素晴らしいものを作ってくれた方々に自分からの感想を伝えたいというのが本音です。

私自身すべてのゲームは遊べていないことと、記憶がアレなので紹介しきれなかった作品もあることをご了承ください。


REMEMBER REMAKE -おぼえて つくりなおして-

配置を覚えて置き直すゲームです。かわいかった〜。下から順々にポップする審査員たち、ゲームの流れをつくる女声の吹き出し、節のあるタイムゲージ、伸び縮みする画面ワイプなど、Eテレ風味の、独特のレイヤー感のあるテレビ番組的な画面構成が超良いです。「REMEMBER/おぼえて」「RETIRE/やめる」「RESULT/けっか」など、種々のテキストにも統一感が持たされていて世界観をまとめています。点数が芳しくなかった時にも「つぎ がんばろー」と優しめの声をかけてくれるのもやばい、というか解釈一致です。ピザやサッカーボールなど、配布されている3Dのアセットってそのアセット自体が持つ"作風"に引っ張られて自分の理想のテイストに合わせるのが難しいと思うのですが、当作品に関しては各アセットのデフォルメ感がゲームの風味と完全に合致しています。

ResizeMan

物をリサイズして進むパズルアクションです。プレイ前は単に拡大縮小を扱うだけのゲームかと思っていたのですが、遊んでみたところ、ゲームがコンセプトとしていたのはPhotoshopのやつみたいな文字通りの「リサイズ」だったことに気づき、舌を巻きました。どういうことかというと、上辺を上に伸ばした後に下辺を上に持ち上げれば、実質物が移動することもできるんですね。リサイズという操作のもつ意味の広がりが私の想像を凌駕していて、本当に面白いと思いました。そしてこの私の個人的な気づきの感動に呼応するように(まじでうまい塩梅に)隠し星が配置されていたため、作者様は当作品をかなり自覚的に気づきのゲームとしてレベルデザインされているんじゃないか…みたいに想像し、泣きました。

RE:ッターン!

キー入力で文字を並べ、returnキーで発射するシューティングです。凄すぎるゲームです。ガチャガチャと文字を打つことが"攻撃ダメージの増加"かつ"敵に近づくことによるエイムの安定"といったメリットにつながっている、しかし"敵への接触や被弾の危険も増える"デメリットと均衡をつくっている、というゲームデザインがかなりインテリで堪らないですが、その一連のシステムを裏づけるエディタ上での戦いという世界観/モチーフが輪をかけてこのゲームを最高にしています。「returnキーの改行で回避」「back spaceで行末を下げて位置調整」など、全てのアクションがモチーフとして理にかなっているし、筋の通った一つの面白さに収斂しています。タブ等の画面装飾、フォント、敵のデザインなども全部一貫しており美術的にも気持ちよくて、天才か…と思いました。ひじょうに勉強になる作品でした。こんなゲーム作ってみたいです。

Reアクションゲーム

「Re」が主人公のアクションゲームです。途中でどうも登れなそうな高さの山に遭遇するのですが、なんとeの出っ張り部分が突起に引っ掛けられることにより攻略できます。

Box Colliderじゃないんかい

これは本当にすごいことです。文字をプレイアブルキャラクターにするという触れ込みだとしても、当たり判定はせいぜい文字を囲むように矩形が敷かれているのだろう…と勝手に思い込んで進めていたところ、山を前にして実はReという文字の形状に忠実に、当たり判定がギチギチに詰まっていたことが判明したのです。この時の弾け飛ぶような衝撃が忘れられないです。これはゲームジャムのお題に対する一つの回答と言えます。「Re」というお題を与えられて、みなさんどのように自分のゲームにRe要素を取り込むか、Reでなくてはならない理由は何か、考えながら制作をされたと思います。「Re」を主人公にするだけでは、当作品はその課題を満たしたとは言えないでしょう。ですが、文字の形状をゲームメカニクスに直接的に影響させたことで、一気に"完璧""必然"になりました。eの出っ張ってるところで崖をつかめるなら、そりゃReじゃなきゃ駄目ですよね。

もちろん「リアクション」というのが当作品の一番肝の概念と思われますが、私はこの部分に感動しました!ゲームのこういうところが本当に大好きなんです。システムがあるからこそ、裏切れるところです。

もしも シナリオ

イベントを入れ替えてストーリーを変容させるゲームです。超素晴らしいゲームです。システムが、ルールが、UIとUXがあるからこそ、インタラクティブなメディアであるところのゲームだからこそできる表現です。インディーゲーマーが大好きなやつです。プレイした人にしか伝わりませんが、ステージに入ったら一枠しかなかったときのぞくぞくした感じ。「こりゃあゲームのやつだ…!始まったな…!」と閃いたあの直感は一年後にも思い出に残っていると思います。シェーダーの処理もやばいというか、すべてが美しいです。

READY GO

リズムに合わせて照準を定めるゲームです。説明の無さに心を掴まれました。ゲームをスタートする際、ポインタに合わせた状態で3カウントを待つ必要があります。このゲームは3カウント後に打つゲームなので、この時点でルール説明が完了しているのです。このミニマリズムはプレイヤーへの分厚い信頼を感じたし、作者様にグイッと引っ張られるような没入感をおぼえました。得点の的は複雑に動いているように見えて正解の方向は「真上」とか「ちょうど斜め」のように素直な位置にあることが多く、ここからもゲームの思想が伺えます。ひとえに信頼です。こんな短時間で作者様と同じところにいて、同じものを見ているような一体感に全力投球で没入できた体験は「ありがとう」の一言につきます。最終面に「READY GO」と表示されているのも無敵です。

無限打鍵

自分で決めた言葉を打ち続けるゲームです。打てば打つほど画角も色収差も常軌を逸していき無我の没入感を演出します。体験ベースの感想になってしまうので言語化がむずかしいですが、めっちゃ良いコンセプトだなあ〜と感嘆しました。まったく見たことのないフォーマットでタイピングゲームの新たな地平を垣間見た気がしたし、実際にプレイしてみたところ(情報商材と打ち続けた)異様な瞑想を達成できたので、自信を持ってたくさんの方に触れていただきたいと言える作品です。「瞑想法 体験コース」という設定の謎の白々しさや、ミスタイプしてしまってから次の鐘が鳴るのを待つ喪失感に支配された数秒間が心に残っています。

DOOR

ドアを見つける謎解き脱出ゲームです。冒頭からUIに対するメタが入って「そういう感じね…!」と心躍りました。偽物のドアを触っても遷移はしてくれるので、最初の数段は脳死で部屋を移動しまくるのですが、おのずとプレイヤーもこのゲームの言わんとすることを理解し、能動的に画面要素を見つめ直すようになります。するとたちまち、配置されたオブジェクトやUIなどのすべてから"意図"が見えてきて、完全に理解ってしまいます。プレイヤーがルールを内面化した途端、主従関係がいっきに覆る感触がめちゃめちゃ心地良かったです。

Re: WIRE

糸をひっかけるパズルゲームです。よかった〜。スマホアプリ志向のパズルとしての完成度もすごい高いと思うのですが、主人公が家族のために食料を集めているという設定に味が染みています。遊び重視のゲームにいかほどのナラティブを与えるかというのは制作者の匙加減だと思いますが、当作品はその塩梅がめちゃくちゃ良い気がする。エンディングの家族が喜んでいる場面は、カットシーンなのにしっかりと物理エンジンの(乱数が介在してそうな)挙動が目立って、映画やアニメには出せない独特のエモを実現しています。こういう種類の、数式で表現できる可愛さもあるんだなあ〜。

リブートけーこ

けーこ(?)がランゲームをプレイするところを見守るゲームです。頭に電流を流され、望まないジャンプやショットを強制されるプレイングを、クリアまで(か、死ぬまで)見守ることしかできません。ゲーム配信などの"観る文化"をゲームに落とし込むという逆説的なフォーマットで、意味ないようにも見えるけど、動きがランダム生成な点で映像作品に堕しているわけでもないし、プレイヤーは見守ることしかできないこの場にも本当にギリギリのラインで、ある種の「遊び」が存在するような気がする、熱い試みです。

もう少しリブートけーこについて書きたいのですがネタバレを含むため、記事の一番下に書かせていただきました。プレイされた方だけ(クリアしてください)読んでいただけると助かります。






まとめ

Unity1週間ゲームジャム「Re」、個人的おすすめ投稿作品の紹介は以上になります。紹介した以外にも素敵な作品がたくさんあったので、ぜひ投稿ページを開いて、ご自身で好きになれるゲームに巡り合ってください!








リブートけーこ ネタバレ感想

リブートけーこは実際のところ操作することができます。プレイヤー側が能動的に普通にジャンプ・ショットさせられるのです。

おそらくこれは隠し追加要素的な位置付けと思われますが、自分はこちらの形式において、より「このゲームはすごい…!」と感動したので(見守るゲームとしてでも十分すごいんですが)以下では「ランダム操作を見守ることしかできないゲーム」としてのリブートけーこではなく、「ランダム操作も入るし、自分で操作もできるゲーム」としてのリブートけーこの感想を書かせていただきます。

外部の何者か(配信を見ている人間?)から操作させられている

普通のランゲームは、キャラクターの挙動に自分の操作しか影響を及ぼしません。他方でリブートけーこは、自分が意図しないときに勝手にジャンプしたりショットしたりします。この形式は、ゲームのプレイスタイルに思わぬ変容をもたらします。

鳥が飛んできた場合を見てみます。

普通のランゲームの場合

普通のランゲームでしたら、ジャンプすると衝突してダメージを食らう危険があるので、素通りするのが定石となります。ジャンプするメリットはほぼありません。

リブートけーこの場合

しかしリブートけーこの場合、放置していると直前で勝手にジャンプしてぶつからされる可能性が出てきます。そのため、あらかじめ自らジャンプし先に撃破処理しておくことが最善の行動となってきます。入力=ジャンプの価値が高騰し、無入力=素通りがむしろリスクを帯びるのです。

次に、回復アイテムのソフトクリームが流れてきた時を見ます。

普通のランゲームの場合

普通のランゲームなら、何もせず待てば良いです。もしジャンプしたら、取り逃がす可能性が出てしまいます。撃ったら壊れてしまいますが、ショットボタンを押さなければ良いだけの話です。

リブートけーこの場合

しかし、リブートけーこはランダムで勝手に射撃します。手をこまねいて待っていると、ソフトクリームを破壊してしまうことに繋がるのです。また、取得のギリギリ直前で勝手にジャンプされ、取り逃がしてしまう可能性もあります。そのため、この場合あえて空(から)ジャンプし、弾がソフトクリームに当たらないようY軸をずらすことが最善策となるのです。ここにおいても見事なリスク/リターンの逆転が起きています。

これらの逆転現象を通して、本来入力を受け付けなくなるリスク行為である「ジャンプ」が、外部からの予期せぬ干渉を退けるための防御策として機能しているという不思議な事実に気づかされます。入力行為自体に悪魔が潜むため、自ら入力の余地を放棄する勇気が大きな意味を持つのですね。

地上の敵であるキツネが流れてきた時もプレイは変容します。本来一発で無駄なく仕留めれば良いところ、いつ勝手にジャンプされるか分かったもんじゃないので、その前にとにかく早く撃ち倒さなければならず、プレイヤーは一匹のキツネのために必死でショットを連射せざるを得なくなるのです。

ゲームは以上の鳥・ソフトクリーム・キツネの三要素で構成されていますが、これらが不規則に組みあわさり、上に書いたような価値の逆転はより複雑を極め、プレイヤーの判断を撹乱します。ここで生まれるゲームプレイは、既存のランゲームの価値観に平手打ちを喰らわすような特異な体験といえるものでした。

このようにして、リブートけーこはランゲームの常道に強烈なメタを浴びせ、結果的にものすごく面白い新しい遊びを提案しています。その「勝手に動く」という突飛なルールに対しても縛り付けられ電流を流され無理やりプレイさせられているという世界観が合理的な説明を与えていて、納得感が担保されています。この辺り、作者様の素敵なイラストが、無駄のない情報量をもって輝いていると思います!

以上、私がリブートけーこを遊んで受けた感動を、簡単に書かせていただきました。まじでめちゃくちゃ良かったです。作者様、ありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?