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カナダ大使館でだけ名刺交換やしりとりが失敗する話

先日、こういうツィートが流れてきまして

この手の話、自分も大好物なんで早速リンク先に飛んで読ませていただいたのですが、自分の経験でもちょうどこんな話に当てはまる出来事があったことを思い出したので、noteにまとめました。それが、タイトルにもある「カナダ大使館でだけ名刺交換やしりとりが失敗する話」です。

まず、前提としてこの話は「どこでもいっしょ」(以降、どこいつ)というゲーム開発中の話でになりまして、25年ほど昔の話になります。タイトル中の「名刺交換」「しりとり」というのはどこいつの中の遊びの一つになります。(詳しくは、公式ページを参照してください)

というわけで、25年ほど昔、時はプレイステーション1の時代の話になるのですが、どこいつの発売元であるソニー・コンピューターエンターテインメント(以降、SCE。現在はソニー・インタラクティブエンターテイメント)は、青山にオフィスがありました。

PlayStationの大ヒットで色々と手狭になっていたためだと思うのですが、メインの王子ビル、安田ビルという大きめのビルだけではなく、青山近辺のいろんなビルにオフィスが分散していたんですね。その分散していたオフィスの1つに「カナダ大使館」があったんです。自分も実際に行くまで信じらなかったんですが、王子ビルの隣にあるカナダ大使館は大使館の一部をテナントとして貸し出しているんですよ。中に入ればごく普通のオフィスでした。

で、どこいつに話を戻します。どこいつではポケットステーション(以降、ポケステ)というプレステのメモリカードスロットに差し込んで、プログラムをダウンロードすることで単体動作する周辺機器が必須のタイトルでした。

PS one に刺さっているのがポケットステーション

プレステは据え置き機なので外に持ち出したりできませんが、ポケステは小型軽量で電池で動作したので簡単に持ち運んで遊べるという特徴がありました。その分、性能はすごく限られたものだったのですが、限られた性能でありつつも赤外線通信機能が使えたんですね。

どこいつでは、この赤外線機能を積極的に活用してまして、プレイヤーの情報をポケステ経由で交換できる「名刺交換」、ゲームのキャラクター「ポケピ」達に教えた言葉を使って友達と対戦できる「しりとり」などが実装されていました。

開発がある程度進んだ頃になると、SCE内の一部の人には遊んでもらったりして、それなりに好評だったのですけれど、そんな中で「カナダ大使館だと名刺交換やしりとりが失敗する」という話が出てきたんです!

当然「そんなバカな⁉︎」となりましたが、行って確かめてみると確かに失敗するんですよ。マジです。名刺交換、しりとりは赤外線通信を使っているので赤外線通信に問題が起こっているだろうということは容易に想像がつきましたが、それ以外の場所ではちゃんと動くので訳がわかりません。

その後、色々と検討していく過程で、SCEの開発の人に相談していたところ、「ひょっとして、リモコンモードで通信してませんか?」という話が浮上してきました。というのは、ポケステの赤外線通信にはテレビのリモコンなどと同じように動作する「リモコンモード」とデータ通信に利用するように設計された 「IrDAモード」の2種類が存在したのです。

もちろん、この2つのモードがあることは理解していて、本来ならばIrDAモードを使うべきなのは分かってはいたのですが、IrDAモードを利用するには比較的大きめのライブラリをリンクする必要があったりして、できるだけリソースの消費を抑えたいポケステにおいてはその利用を避けていたということがあったんです。また、通信距離がリモコンモードと比べて、とても短くなるという欠点もありました。実際、リモコンモードだとかなり離れていても(10m以上)成功してたりしましたが、その分、通信の信頼性は落ちてしまっていた訳ですね。IrDAモードだと、通信距離はかなり制限されますが、通信の信頼性はかなり高くなります。

と、いうわけで、そのアドバイスをもとに IrDAモードを使うように変更したら、カナダ大使館でも名刺交換やしりとりがバッチリ成功するようになったんです!

ではなぜ、リモコンモードでも大抵の場所では成功していたのに、カナダ大使館ではダメだったのか?

理由は、天井の高さでした。当時、カナダ大使館のオフィスは他のオフィスと比較すると天井が低かったんです。そのため、赤外線通信の受光部に光が強目にあたりやすく、赤外線通信が軒並み失敗していたという理由でした。

理由がわかってみると、同じような状況をカナダ大使館以外でも簡単に再現することもできました。実際のところ、リモコンモードだと晴れた屋外などでも通信が失敗しやすかったと思うので、あのまま開発が進んでいたらカナダ大使館以外でも失敗する事例が報告されることになったと思います。

たまたま、開発の早い段階で、高い確率で失敗する環境が見つかったことはラッキーだったのではないでしょうか。カナダ大使館に感謝です!

見出し画像: https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=16989310 による

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