(要約)熊本県教育情報化推進基本方針

Ⅰ 熊本県の現状と課題

 1 熊本県の現状

(1)GIGAスクール構想発表時の状況
 教育用コンピュータ1台あたりの児童生徒数は3.2人(平均4.9人)で全国2位ではあったものの、普通教室の無線LAN整備率は30.8%と全国平均(48.9%)に達していなかった。
 また、教員のICT活用指導力は各指標とも全国平均を上回っており、中でもICT活用指導力の研修を受講した教員の割合は全国で第3位となっている。これは、H25年度から実施している「未来の学校」創造プロジェクトなどの教育情報化関連事業の成果が出ているものと考えられる。

(2)R2年度の取り組み
 R2年度のGIGAスクール構想に伴う財政支援により、義務教育課程全ての児童生徒に対して1人1台端末が整備され、特別支援学校の高等部では「特別支援教育就学奨励費」を活用して整備を進めている。
 また、県立高校では先行的に端末を整備する「先行実践校」を選定し、R2年度中に端末を整備した。その他の学校においても文部科学省の補正予算等を活用して、R3年度中に端末整備を進めていく計画である。

 2 課題

 一定のハードウェアの整備は終わるものの、一気に導入されたこともあり、利活用における次のような課題が見られる。

(1)教育情報化推進体制の整備
早急に教育情報化が進み、学校現場で教育情報化を図る推進体制が十分に組織されていない。
(2)児童生徒の情報活用能力育成
日常的な授業での情報活用能力の育成が必要だが、早急な導入により、特に高学年において段階的に身につけるべき情報活用能力が習得されていない。
(3)教員のICT活用指導力について
教員のICT活用スキルの格差やICTを活用した授業の実施状況等は、教員間や市町村感で大きな差が見られる。
(4)校務の情報化
統合型校務支援システムについて、学校間や市町村間において導入・運用の差が見られ、また、機器の老朽化等も懸念される。

Ⅱ 基本方針

 1 策定の趣旨と目標

熊本県では「ICT教育日本一」を目指すこととしており、それに向けて「日本教育工学協会」による「学校情報化認定制」を活用して熊本県の教育の情報化を推進することとし、指標として県及び44市町村が先進地域認定を取得することを目指す。

 2 基本的な考え方

①教育情報化を進める4つの取組方針
教育の情報化推進に当たり、学校情報化認定制度の「情報活用能力の育成」「教科等の指導におけるICT活用」「校務の情報化」「情報化推進体制等の整備」の4つの項目に沿って取組方針を定め、各学校での教育情報化の推進を進める。
②教育情報化を進める2つの支援策
各学校での教育情報化の取り組みを支援するため、児童生徒のICT活用度合いを指数化した「KI(くまもとICT)3つのチャレンジ」と、研修等を通して教員のICT活用指導力の向上を図る「熊本県ICT活用推進研修パッケージ」を展開し、県内全体の教育の情報化の底上げを行う。
③教育情報化を進める環境づくり
併せて、市町村教育委員会と連携し、県内全ての小・中・高・特別支援の児童生徒を対象として、端末整備や高速大容量の通信環境を確保するなどの各種基盤整備を行い、情報セキュリティに配慮しながら安全に情報化を推進するための環境づくりを整えていく。

Ⅲ 目標を実現するための取組

 1 ICTを活用した教育の推進

(1)各学校における「教育情報化を進める4つの取組方針」

①情報活用能力の育成:全ての児童生徒が、情報活用能力と情報モラルを体系的に身につける

「情報活用能力」について、教員への研修やICT活用の環境づくりなどを通して授業改善を図るとともに、児童生徒に対しては、各学校段階で育成すべき教科横断的な資質・能力と位置づけ、体系的に身に着けさせる。
具体的には、文科省が示す情報活用能力の習得モデルを参考に、各学年や学校段階に応じて習得すべき内容を県において整理し、学校現場や市町村に対して示す。
 併せて、児童生徒に対しては、スマホやSNSサービスなどの安心安全な活用のための留意点や、情報社会のルール・マナー等の理解を通して、情報を安全安心に活用していくための情報モラルを身に付けさせる。

②教科等の指導におけるICT活用:ICTを活用し、「分かる・できる・学び合う」授業を実現する

教科等の指導にICTを活用することで児童生徒の学習への興味・関心を高め、わかりやすい授業や「主体的・対話的で深い学び」を実現する。
具体的には、小・中・高・特別支援の各学習場面におけるICT活用事例の提示や研修等を通して、ICTをを活用した授業づくりを推進する。
また、全ての学校で活用が進むように先進的な取組を具体的にわかりやすく横展開するなど、県下全域における指導力の底上げを図っていく。
さらに、1人1台端末整備となることで、ICTの活用は授業だけでなく、学校・児童生徒感の連絡や、家庭への持ち帰り時の家庭学習等にも展開していく。

③校務の情報化:業務の効率化を図り、教員の授業準備や児童生徒と向き合う時間を確保する

現行の統合型は機器の老朽化が進み、故障の可能性が高まっており、業務に支障をきたす恐れがある。今後は、教員の授業準備や児童生徒と向き合う時間を確保するため、システムによる事務の効率化等を一層図り、併せて教育支援ツールの活用により、校務の情報化を図っていく。
具体的には、教育支援ツールによりスタディ・ログを可視化・共有・分析を行うことで、「児童生徒自身の振り返り」、「学級・教科担任の児童生徒に応じたきめ細やかな指導」、「家庭との連携」等を実現する。
また、当システムの機器の適切な更新を行い、R5年度までに全県立学校への導入、市町村立学校への普及、支援等を行っていく。
なお、現在、県立学校に導入を検討している学校徴収金システムについても、市町村への情報提供を行い、校務の情報化を強化していく。

④教育情報化の推進体制等の整備:教育情報化の推進体制を整備し、学校の全体計画に情報化を位置づける

各学校が教育の情報化を着実に推進していくために、学校管理職のリーダーシップのもと、情報化担当教員を中心とした推進体制を整備する。また、各学校で策定する全体計画に置いて、教育の情報化のための取組内容等を明確に位置づけ、主体的かつ計画的に情報化が進む仕組みを整える。

 2 ICTを活用した教育のための環境づくり

(1)教育情報化を支えるインフラ整備:児童生徒一人一人が個別最適な学びを実現できるICT環境を整備する

個別最適な学びを実現し、児童生徒の資質・能力を一層確実に育成するための1人1台端末の整備及び高速大容量のインターネット回線の環境を実現する。
 また、円滑なICT活用をすすめるため、ICT支援員を適切に配置し、教員の技術的サポートを行い、学校現場での活用が進むように取り組む。
 なお、将来の県立高校における端末の耐用年数経過後のあり方については、BYODを基本としながら検討する。

(2)情報セキュリティの確保:情報セキュリティに十分に配慮しながら、これまで活用が進んでいなかったクラウドに対しても対応する

文科省が策定した「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を参考に、情報セキュリティに十分に配慮しながら、教育現場での利用が進んでいなかったクラウドを積極的に活用する新たな「熊本県教育委員会教育情報セキュリティ基本方針」を定める。
 


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