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本の交換会をやってみる

読まなさそうな本を読んでみたい

ふだん本を読んでいて気になるのが偏りである。気を抜くと趣味が偏っている。特定の作家数人でローテを回していたり、書店に行っても似たようなジャンルの棚ばかり物色する。自分の好きそうな本ばかり選んで、外すことのない安全圏でぬくぬくと読書をしている気がする。

別にそれでもいいし、ある意味仕方ない。一人の人間がリーチしうる本の数なんてたかが知れている。なるべく失敗したくないという事情もある。みんな面白い本を読みたい。だから面白そうと思える本を選ぶのだ。蚊帳の中のほうが安全に決まっている。

だが、蚊帳の外のほうが広いのである。なんというか、いい本がたくさんあるらしいじゃないですか、ぼくの知らない世界には。合うか合わないかわからないけど、試してみたらとんでもない出会いがあるかもしれない。しかし、自分の領域から出ないままだと、それに出会う可能性は0だ。

自分の領域を少しでも拡げて、新しい世界に紛れ込んでみたい。

そして、新しい世界の本は人に教えてもらおう。と思って、本の交換会を開いてみた。

本の交換会を開く

やりかたは簡単で、「誰かに読んでもらいたい本」を持ってあつまるだけである。場所はどこでもいいし、人数も2人以上なら問わない。本の種類も不問。なんなら別に好きじゃない本でも、未読の本でも構わない。相手にとってどんな本になるか未知数だから、なんだって構わない。とにかくその場に本を持っていくことが大事だ。

本の交換会の一番のメリットは、「読む本がその場で自分のものになる」ところにある。書店に行って探す手間も、家に届くのを待つ時間も、図書館に借りに行く必要もない。これまでなんの縁もなかった本が、一瞬で自分の世界に入り込んでしまうのがいい。

そういう意味では、持っていく本は「手放してもいい本」を選ぼう。交換したはいいものの「やっぱり返してほしい…」となると相手は弱る。貸し借りではなく、持っていった本は一生誰かのもの、そして手に入れた本は一生自分のものになるべきだ。だから、持っていくのはもう読まない本、自分よりも誰かに持っていてほしい本、今の自分には必要のない本がいい。

そんな感じで本を持ち寄ったら、適当に輪になって本の紹介をする。あらすじとか、持ってきた理由とか、話すことがあればそれを言えばいいし、ないなら飛ばしてもいい。ただ、みんなの前で持ってきた本について話すフェイズがあると、同時に複数の新しい本と出会えてお得なので、いったん全体で共有しておきたい。

交換する

そしていよいよ交換する。できるだけランダムにしたいので、くじを作ろう(「気に入った本を選ぶ」だと結局自分の枠を出ないしあぶれた本が切ない)。紙でくじを作ってもいいし、あみだくじでもいい。それぞれの本と参加者を対応させよう。

ただ、一度に全員でくじを引くと、だれかが自分の持ってきた本に当たる可能性がかなりある。多少冗長でも、一人ずつ、もしくは一冊ずつくじを引いたほうが確実だ。ただ、この方法も終盤になると候補の数が減り、ワクワクが小さくなる。まだまだ工夫の余地はあると思う。思いついたら教えてください…。

それぞれに本が行き渡ったら交換会は終了である。あとは自由にしてください。自分の本が渡った人、もしくは手に入れた本の前の所有者と会話してもよさそうだ。気になることがあったら質問してみる。もしも自分が手に入れた本が面白くなさそうだったら、どう読めば面白いのか、どうやって面白がるのか聞いてみてもいい。聞かなくてもいい。やることは終わったので即解散しても構わない。

交換した本を読む

そうやって交換した、自分だったら買わなかったかもしれない本が、なんの因果か突然自分のものになる。本棚に並べてみても違和感がある。全然関連性がない。

もしくは、意外と関連していたりするかもしれない。読んでみると、好きな本と似たようなテーマで書いていたとか、舞台となる場所や時代が一緒だったりする可能性もある。

読み終わったら好きになっているかもしれないし、読んでる最中ずっとイライラしているかもしれない。それは読んでみないとわからない。もしも「これは自分のための本だ!」と思えたら幸運だ。逆に「こんな本、読まなければよかった…」と思えるのも幸運だ。どちらにしろ、それまでの読書では得られなかった刺激のはず。

そして、読みたくなかったら別に読まなくてもいい。興味のない本が本棚にあるだけで十分だ。知らない世界に通じる扉は閉じたまま、でもいつでも開くことができる。その状態だけで十分豊かだと思う。

おわり

そんな感じで、本の交換会を紹介してみた。手っ取り早く自分の世界が広がる手段だと思う。友人とか、職場や学校の知り合いとか、知らない人とか、適当にやってみたらいい。思いがけない出会いがあるかもしれない。なかったらそれはそれで。

ちなみに、これは研究室の人とやった交換会のときのあみだくじ(案の定、自分の持ってきた本に当たる人が続出して失敗だったわけだけど)。ぼくが持っていったのはガダラの豚。これは純文学とか歴史小説が好きな先輩に渡った。そしてぼくが引いたのがこれ↓

な〜んもわからん。前提知識がまったくない。完全にそれまで自分の中になかったジャンルである。読むのが楽しみ。


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