映画感想「神は見返りを求める」

　良い映画を見たら感想を書きたくなっちゃうよね。どうもトロイの金馬です。休みの日には気が向いたら見るレベルで映画が好きです。さて、今回Twitterで「これ良いっすよ卍」っておすすめされた「神は見返りを求める」の感想を書いていくっすよ。デュエプレの新弾も近いのにね。

　ネタバレは当然あるよ。

簡単すぎるあらすじ

　田母神というイベント関係の仕事をしている男。めちゃくちゃ優しいこの男はある日いった合コンで、泥酔してパンツ丸見えの底辺YouTuberゆりちゃんと出会い、なんやかんや動画撮影を手伝う事になる。仲良く動画を撮っていたのだが、些細なきっかけを理由に2人の心は離れていくことになる…。

感じた想いと書いて感想

　いやー、良かったね。人間がちょうど落ちれるだろうちょうど良いサイズの地獄がそこにあった。

　田母神さんは基本的に優しい。小さなイベント会社の勤務なんだけど、着けてる腕時計が高級そうだったり、スマホも最新式だったりでいかにも小金持ったおっさん。でも、嫌な奴が集まった合コンにもきてあげるし、みんな放置してた女の子を介抱してあげたりとめちゃくちゃ紳士。底辺YouTuberの子にも車出して、荷物も持っていってあげて、臭いコスプレをしながらダンスも精一杯する。なんなら動画にダサい編集もしてくれる。神か？「ｶﾐﾀﾞｰ!」黙ってろ！

　そんな田母神さんはゆりちゃんが広告収入が入った時に、

　「俺は見返りが欲しくてやってるんじゃない」

って断るんだよね。この台詞はタイトルにも掛かってる非常に大事なセリフなんだけど、この時の田母神さんは本当にお金を貰う気が無いんだよね。多分ウン万円くらいの大きいお金だったとしても貰わないと思う。それは一重に「余裕」があるから。

　最初にも書いたがこの時の田母神さんには余裕がある。仕事は忙しいけど順調。車や最新式のスマホを買えるくらいの資金力。そしてゆりちゃんみたいな若い女との繋がりもある。一方、相手はYouTubeで四苦八苦している若い女、ゆりちゃん。どっちが譲るかっていってらそりゃ自分ってなる。田母神さん自身は楽しくYouTube活動をしていって、いずれイチャイチャ出来ればいいなっていう淡い見通しだったんだと思う。

　だが、彼のその余裕は段々と崩れていく。仕事が激務になっていくに連れ、ゆりちゃんとすれ違いが発生。ゆりちゃんは有名YouTuberとのコラボをきっかけに人気が上昇。過激な動画を撮り始め、編集もクビにされ雑用係に。元同僚は田母神が金の無心を断った事をきっかけに自○。保証人になっていたため400万の借金を背負い安アパート暮らしに。ストレスにより激昂する事も多くなり、あの日あった余裕が無くなります。

　この辺の残酷な所は田母神さんに一切の救いが無いんだよね。仕事、プライベート、そしてYouTube活動。全てにおいてストレスが襲いかかってきており、そのモヤモヤの吐き出し場所が無いんだよね。そこにYouTube活動の好調によって図に乗ったゆりちゃんが更に地獄にしていく。

　田母神さんは借金のアテの為にゆりちゃんに援助を求めます。しかし、ゆりちゃんはこれを拒否。なんなら即決。彼女は援助を求めた田母神さんにこう答える。

「田母神さんは以前、見返りは要らないって言ってたけどそれ嘘じゃないですか。」

　正直このシーン、田母神さんに感情移入し過ぎててマジでゆりちゃんにイライラしてたためあんまり覚えきれてない。そんぐらいこのシーンは生々しい。

　このシーンの田母神さんは借金を返すための頭金が欲しいだけ。だが、ゆりちゃんから見ると、急に売れ始めた自分から過去の動画の協力を利用して金をぼったくろうとしているように見える。

　この厳しさはあながち間違いとは言えない。勿論、田母神さんは金を巻き上げてやろうとは思ってないし、必ず返すつもりだとは思っているだろう。だが、人間は金の貸し借りをすれば悪い方向に関係がいくのが目に見えてるし、いまや不要となった田母神に貸す金など無い。例え、過去数万円単位のお金を複数回出して貰っていたとしても、炎上させてしまったお店の謝罪や復帰援助をしてくれていたとしても、、、。

いや、多いよ！！！！受けてる施しの量が多すぎるよ！！よくそんだけ施しを受けてその慇懃無礼な態度取れるな！！イベントで足組むの辞めろ！！

　そう、このゆりちゃん無料で受けるにしては施しの量が多すぎる。そりゃ底辺YouTuber時代からアンチがつくわ。そのイライラさせさは天性の才能である。そんな恩を仇のマシンガンで返された田母神さんはGOD.Tとして暴露系YouTuberの活動を開始。これまでのゆりちゃんがやっていた動画の裏話や隠していた事を次々動画投稿していきます。それに対しゆりちゃんもGOD.Tを煽る発言をしてどんどんとヒートアップしていきます。

　ちなみにゆりちゃんの動画が映画内で度々見れるんですが本当に薄っぺらいです。ゲストと編集頼りのクソ動画。サイトの内容読んでるだけの動画シーンまじで好きなんだよな。あれだけで動画と言い張るYouTuber実際いるからね。握手会のシーンでゆりちゃんのファンがとても深い事言ってくれるんですけど、「でもこいつ、こんな動画見て楽しんでるんだよな」って気分になりました。過激な動画出した結果、「昔の動画の方が良かった」ってコメントしてるやつも、どうせボディペイントから入ったんでしょうし。ゆりちゃんの周りの全てがアホしかいません。

　そして、遂にゆりちゃんが田母神を呼び出し一騎打ちの状態を作ります。ちなみにこれも別のYouTuberの動画の企画。なんならクマ向けの催涙スプレーまで用意している。この状況がもうまーじでアホなんですよね。過激化している田母神と合わせるっていうのが何をするか分からない状況なのに、それに対抗するための道具がクマ向けのスプレーです。女性に持たせるにしても危険すぎます。危険な状況×危険な動画っていうもう事故が起こる事確定のアホ場面です。ちなみにこのYouTuber達はゆりちゃんが吹きかけたスプレーが風で飛んでった影響でモロに受けてのたうち回った挙句、田母神さんに足蹴にされてます。こんな奴ら呼ばわりされる始末。

　互いがぶつかり始めると激しい動画の取り合いとなります。自撮り棒をぶつけながら互いが互いに激しく罵り合う、まさに地獄。側から見れば滑稽で、本人達は至って真剣。ある意味YouTubeとしては最高のエンタメです。このシーン、ゆりちゃんが逃げる中サラリーマンに助けを求めた際、追いかける田母神を見た途端断られるの本当に好きなんですよね。このシーンがゆりちゃんの運命を感じる。余裕があるうちはまだ助けて貰えるけど、実際に問題がやってきた時には助けてもらえないんですよね。これは後の展開の暗示ですね。

　さて、これまで散々復讐の動画を出してきたGOD.Tこと田母神さんですが、疲れてしまいます。元々は優しさが主成分の人間であるため、過去のゆりちゃんの動画を見る事で段々とその怒りが治っていきます。男って昔の動画とか写真とか見ちゃう癖ありません？過去を引きずりやすいんですかね。やっぱり。

　ゆりちゃんの握手会に現れたかと思うと突然の「もうやめる」宣言。そこからは嫌味な同僚を介して伝えたい事を伝えると去っていきます。この後田母神は頭から血を流しながら動画を生放送します。覆面を取りボロボロの顔でゆりちゃんと初めて撮った動画で踊ったダンスを踊ります。ゆりちゃんはこの動画を他のYouTuberと一緒に見るんですが、本当に良いんですよね。無関係な人から見たら血だらけのおっさんが思ってるだけのクソ動画、だけどゆりちゃんにとってはあの日からずっと練習して忘れていなかったダンスだってわかるんです。不特定多数の明日への希望になる動画ですが、この時の田母神のダンス動画はゆりちゃんただ1人への応援の動画なんです。そして、このダンスの意味をゆりちゃんはハッキリわかってるんです。美しい。以心伝心ってやつです。

　それからGOD.Tのチャンネルは消して引越し屋で新しく働き始め、いざ頑張って生きて行こうとしたところで、ゆりちゃんが物理的炎上をしたとテレビのニュースで流れてきます。それは田母神さんが借金を背負わされた時のように一瞬で残酷で惨たらしいシーンでした。彼女の皮膚がガーゼから離れるシーンは本当に痛々しかった。Twitterではアンチの大合唱、火傷の原因になったYouTuberはそれもまた動画の種に、なんなら別の迷惑系YouTuberが病室に撮りに来る始末。人間の醜悪さがこれでもかと描かれており、いくらゆりちゃんだとしてもあまりに酷いことが起こり続けます。

　そこに現れたのが田母神さん。なんで部屋を知ってるんだろうって思ったけどあんだけアンチがいたらそりゃ特定されてるか。迷惑系YouTuberを逆に動画を使って脅し追い払うと、火傷だらけのゆりちゃんにカメラを回し始めます。これは先程の迷惑系の撮影とは違い、入りから入るプロの撮影であり、そして彼ら2人の本気の撮影です。わずか数分の一発どり。その中で彼女は精一杯の誠意を田母神さんに返します。複雑に絡み合ってもう戻れない、それでも田母神さんが本当に欲しかった言葉を貰ったんです。明日をもらったんです。こっからまた始まる。そう思った時、田母神さんは後ろから迷惑系YouTuberに傘で刺されます。住所を知られていた田母神さんは家で待ち伏せされていたんですね。そして数回刺された後、彼女との動画を残したスマホが奪われます。これを力無く田母神さんは追いかけるんですが、刺された影響でもうボロボロなんですよ。そんなフラフラの状況の中、彼は「また一から始めるんだ…」って溢すんです。

　この台詞はいくらでも取れると思います。個人的には火傷の彼女を支え続け、その様子を動画にしようとしてたんじゃないかなって思ってます。彼女を見続けた証拠をエゴイスト的に残しておこうとしたのかな、と。

　最後、田母神さんは背中から血を垂らしながらスマホのない自撮り棒に向かって動画を撮ります。もう狂人の域です。でも、彼はまだいけると呟くとまたあの日のダンスを踊ります。不恰好で血だらけで、とても気味の悪い彼ですが、それでもその日の天気はバカ良かったのでした。

締め

　以上書き殴り、「神は見返りを求める」の感想でした。4000字以上の不器用な文章となりました。一発書きの添削なしでいくので悪しからず。身近でポップな地獄を見たい方にはおすすめですので是非！トロイの金馬でした！！