見出し画像

「#国会を止めるな」の拡散っぷりについて語る(拡散したとは言っていない)

二匹目のドジョウ

検察庁法改正案の話ってTwitterデモとかいわれているみたいですね.

数百万という拡散数は盛られていたとしても,数十万アカウントが参加したと考えれば,それなりにデモっぽいという気もします.検察庁法改正案が無くなったという意味でも成功っぽいですし.まあ,最終的にはTwitterデモがなくても文春砲の一発でそもそも白紙に戻ったんじゃないかという気もしますが.

なお,検察庁法改正案のTwitterデータの分析については下記のnoteに書いてあります.

さて,一度うまくいった手法があったら,次は別のデータに対して試してみるというのは研究を進めるうえでの鉄則です.
というわけで,研究というわけでもないでしょうが,ハッシュタグを使って更なる活動をしようと,こんな話が飛び出してきました.

言うだけで拡散したらマーケティングの人たち苦労しませんがな.世の中どれだけの人がソーシャルメディアでバズらせようと努力した結果大失敗してきたか.世の中そんなに甘くないよね,ということで分析をしてみました.

「#国会を止めるな」どのくらい拡散したか.

ちなみに,ハッシュタグではなく単に「国会を止めるな」が入っているツイートをごそっと持ってきました.2020-06-01 14:30ごろから,2020-06-16 10:00ごろまで収集しました.

その結果,得られた数値で行くと,
・トータル:26,159ツイート
・ツイート:2,693件
・リツイート:23,466件
・ツイートに参加したアカウント:2,220
・拡散したアカウント:15,897

もうこの時点で,分析のし甲斐がないなという感じがします.盛りに盛ったとはいえ100万RTを超えた検察庁案件に比べると1%くらいの拡散です.一応日を追ってどのくらいツイートされたかを見てみます.

画像1

なんかずいぶんガタガタしてますが,とりあえず6月9日にすこし盛り上がったことがわかります.ちなみに最大の日を合わせたうえで検察庁法改正案と比較するとこんな感じ.「国会を止めるな」見えないな,おい.

画像2

「#国会を止めるな」に参加したアカウント

今回は一回だけツイートしたアカウントが2,220アカウント中1,982だったので,全体の73.6%でした.ほとんどのアカウントが「国会を止めるな」と一回しか投稿していません.
また,拡散数でも半数のアカウントが一回しかリツイートをしておらず,全体の93.5%が5回以下しか拡散していません.大量に拡散したアカウントもまたありませんでした.検察庁の時に比べると気合が入ってないぞ!
というわけで,何らかの人為的な拡散はあんまりなさそう,というより,人為的な拡散をしていても失敗しているなという感じです.

「とはいえ,リツイートしたアカウントが15,897なら大したものでは?」という考え方もあるかもしれません.

そこで,このリツイートした人たちは一般の人なのかどうか確認してみましょう.ここでは,例のごとく所属コミュニティの偏りがどのくらいなのかを分析してみました.

画像3

一日ごとの偏りを分析するとこんな感じでした.大体0.5くらいだと偏りがないといえるくらいのレベルですので,2.0を超えているというのは流石に相当偏っているというしかありません.
実際,拡散アカウントの所属コミュニティはほとんどが政治的なコミュニティでした.つまり,一般には全くと言っていいほど浸透せずに,政治的なニュースに興味がある人たちの間で拡散が行われていたといえるでしょう.

賛同派と反対派どちらが多かったか

さらに,「政治的に偏っていても1万人もいたなら・・・」と言う考え方もあるのですが,今回の件は,「検察庁法改正案」とは大きく異なる点があります.「国会を止めるな」には,反対意見が結構あるんですね.

一番拡散したのは,

こちらなので,賛成のツイートですが,二番目に拡散したのがこちら.

「#国会を止めるな」に反対するツイートですね.ほかにも見ていくと,トップ5のうち4つが「#国会を止めるな」に反対する立場をとる意見でした.というわけで,例のごとく世界的AI研究者榊剛史さんと開発した,RTしたユーザから類似ツイートを検出しネットワークを構築する手法で分析してみました.
作られたネットワークがこんな感じです.

画像4

綺麗に二つに分かれました.もちろん,「国会を止めるな」に賛同する側(左)と反対する側(右)です.政治的思想と同じ配置です.ノードの色が濃ければ濃いほどノードに対応するツイートをリツイートした人が偏っていることを意味するのですが,こりゃまたきれいに左も右もノードの色が濃いです.こんなのめったにないぞ.どのツイートも非常に偏った人たちによって拡散されていたことがわかります.

さらに,それぞれ左右それぞれでツイートを拡散したアカウントの数を数えてみると,賛同派(左)が6536アカウント,反対派(右)が9033アカウントでした.

つまり,「国会を止めるな」が含まれるツイートはむしろ反対派の方が多く拡散していたということになりました.

もし検察庁改正案の反対の時と同じようにTwitterが民意だと仮定するなら,国会は会期延長しないほうがよさそうです.

Twitterでの意図的な拡散の難しさ

というわけで,二匹目のどじょうを狙った(のかどうかは知りませんが)「#国会を止めるな」はTwitterデモとしては全くの失敗に終わったと断言してよさそうです.

そもそもこんなnote書いたけど,皆このハッシュタグについて知ってるんですかね?私もマスメディアから問い合わせが来て「ほ~そんなのがあるのか」くらいで分析をしてみて,「はいはい,解散解散」となったレベルです.逆にマスメディアの人たちは注目(期待?)しすぎではなかろうか.

いつもどおり,国会を止めるべきかどうかについてはここでは全く議論するつもりはありませんが,Twitterやソーシャルメディアを使って何か動きをだしたいのであれば,それなりに考えてやって欲しいなあと思います.今回の件は一般に広まらなかっただけでなく,反対派を活性化させたわけですし.

Twitterの情報拡散力はそれなりにあるわけですから,使い方次第.上手に使ってもらいたいものだなと思います.こっちも拡散すれば分析のし甲斐がありますからね!

この拡散レベルじゃ論文にはならないw

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?