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人工知能学会全国大会から見るAI研究者のつながり

人工知能学会全国大会から見る日本の人工知能研究の最先端という記事をYahooに書きましたが,長すぎたり,内輪感が強すぎたりする分析もあったので,こっちに載せておきます.ほぼ内輪ネタに近いので人工知能学会全国大会に参加していない人には面白くもなんともない可能性がありますのでご了承ください.

ネットワークのつながり

共著ネットワークを作成して分析してみました.Yahooでは共著ネットワークについて説明するのが面倒すぎたのでこっちで.
とりあえず,共著関係にある著者同士をリンクで結ぶというシンプルな方法でネットワークを作成しました.

2024年度人工知能学会の共著ネットワーク

さすがに2000人以上のネットワーク全然ワカラン
というわけで,コミュニティごとにコンポーネントを抽出してみました.大きい方からいくつか紹介するとこんな感じ.

第1コンポーネント


第2コンポーネント


第3コンポーネント

こう見ると,研究室ごとに固まっていてそこをブリッジする方がいるとコンポーネントが大きくなるという感じが見て取れます.
他分野同士ががっつり組んでやっているというよりも,緩くつながっている感じが強いのかもしれません.
ちょっと細かいところまで見切れていないので,Xあたりで各コンポーネントについてワイワイ議論してもらえると嬉しいです.

中心性の分析

ネットワークを分析したなら,ネットワーク指標を確認したいところですが,ここではいくつかの中心性に注目してみてみましょう.
まず,重要なノードを発見する際の常套手段であるページランクから見てみましょう.

ページランク上位研究者

ページランクはお茶の水大学の小林先生と東京大学の鳥海(筆者)が上位に来ています.なんかこの二人が重要人物っぽく見えますが,実のところ,割とコンポーネントが複数に分かれているため,その中でのページランクが計算されてしまっている気がします.身内で中心的.
そこで,もうちょっと実のあるところで,次数中心性を見てみました.

次数中心性上位研究者

こちらはシンプルに共著者の多さが効いてきます.結果一位は荒牧先生でした.確かに論文を見ると非常に多くの方たちと共同研究をされているので納得の結果です.共著者の数は断トツです.荒牧先生すごい.

そして,もう一つ媒介中心性を見てみましょう.
媒介中心性は二つのコミュニティをつなぐ役割を持っている方が高い値を出します.

媒介中心性上位研究者

媒介中心性の1位2位はサイバーエージェントの邊土名さんと馬場さんでした.3位は愛知工業大学の野中先生.この3名の方は共著関係にありますが,そこが第1コンポーネントでブリッジとなってコミュニティをつないでいるようです.4位に入った岐阜大の寺田先生は,次数中心性でも2位に入っており,色々な方々との共同研究が目立ちます.2024年度人工知能学会全国大会で個人的に一番気になるタイトルである「目玉焼きの質感を決定づける潜在空間上の効用関数を用いた自閉スペクトラム症者と定型発達者の感覚処理特性の比較」の著者の一人でもあります.
媒介中心性は,コミュニティ同士をつなぐ方が高い値を出しますので,他の中心性とはちょっと違った研究者が現れていてなかなか興味深いところです.他の中心性は見たことのある名前が割と出がちですが,媒介中心性は孫文数は少ない方でも出てきたりします.ここに出てくる研究者が実は今後のAI研究には重要な人物なのかもしれません.

2024年度期待の研究者

最後に,2024年度の活躍が目覚ましい,今後に期待ができる研究者を探してみたいと思います.
ここでは,2018年~2023年度の全国大会に比べて,2024年度における論文発表数が多い研究者に注目してみたいと思います.ただし,学生さんなどは2024年度に一本発表されてご卒業ということもありがちですので,今年度の全国大会で5本以上論文発表がある研究者のうち,2018~2024年度に発表された論文のうち2024年度の論文の割合が50%を超える研究者をピックアップしてみました.

2024年度の発表件数が多い研究者

ざっと見ますと,学生さんから若手研究者まで様々な方々がこちらのランキングに入ってきています.
これらの研究者のご発表はきっと今年注目のものじゃないかと(勝手に)思っていますので,聴講に行ってみてもよいのではないでしょうか.

おわりに

というわけで,人工知能学会全国大会のページをスクレイピングしてデータ収集し,分析を行ってみました.そのうち,特に若干内輪感が強いかなと思うデータ分析結果をご紹介しました.
中心性の結果などは意外と面白いんじゃないかなと思っています.コミュニティをつなぐ役割を企業が行っていたというのは,なるほどという感じもありますが,興味深いところです.
本当は2018年からのデータがあるので,もっと時系列変化を分析できるとよかったのですが,学生と飲み会に行ったりしている間に分析している時間が無くなってしまい,学会が始まってしまったのでこの辺にしたいと思います.
本当は時系列変化を分析すると筆者がいっぱい出てきてドヤ顔ができるんですが,慎み深い性格なのでこの辺にしておきたいと思います.


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